6.目的のその先。
昨日の続き。
あとがき下部から、新作に飛べるようになってます!
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「……ふふふ。王女様、なにを言っているんですか?」
「とぼけないでください。クレオは騙せても、私の目は騙せません」
「…………へぇ?」
リリアナの言葉に、一度エスカリーテは笑う。
しかしすぐに、王女が力強く宣言したことで状況は一変した。
エスカリーテはどこか面白いものを見るような目で、相手を認める。そして、おかしそうに笑いながらこう続けるのだった。
「いつから、気付いた……?」
それは、王女の指摘の肯定。
リリアナは驚くことなく、エスカリーテに扮する何者かに告げた。
「クレオが勘当されて、しばらく経った頃です。貴女――エスカリーテは、見違えるほど自分というものを持つようになった。それまではクレオの後ろについて回って、なにかあれば彼の袖を引きながら泣きじゃくるような子だったのに……」
「おやおや? それは、可愛い幼馴染みの成長だと思わなかったのかい?」
「それと、もう一つあります」
「ほほう……?」
切り返され少女は、面白そうだ、と。
そう言わんばかりにリリアナの話を待つのだった。
王女はしばしの思考の後に、時間を大きく遡りながら推論を述べる。
「貴女はもしかして最初、ダン・ファーシードに扮していたのではないですか?」――と。
それを聞いて、エスカリーテの眉が動いた。
どうやら当たり、のようだ。
「どうして、そう思う?」
「ファーシード公爵は、いつからか盲目的に家訓を気にするようになりました。そして、クレオに対して強く当たるようになったのもその時期です。それこそ、まるで『何かに取り憑かれたように』して」
リリアナは、そこで一呼吸挟んでさらに続けた。
「しかし、クレオがいなくなってから。彼は昔のように、子煩悩な父親に戻っていきました。エスカリーテに対しても、勘当したクレオに対しても、それまでの時間を取り戻そうとするかのように動き始めたのです」
「なるほど。それは、異常なほどだった、と?」
「そうですね。それこそ『人が入れ変わったよう』でした」
「……あはは! なるほど!!」
それを聞いて、エスカリーテは堪え切れずに笑いだす。
リリアナの言っていることは、正直なところ耳を疑うような内容だった。彼女はダンが何者かに取り憑かれ、その次にエスカリーテがその魔の手にかかったと、そう主張しているのだから。にわかには信じがたいが、その推論は果たして――。
「――ご明察だ、王女様」
エスカリーテは、優雅に拍手をしながらそう答えたのだった。
「いやぁ、アタシも迂闊に動きすぎたね。痕跡を発見され、さらには演技を見破られるとは。さすがは、神の世代の魔法分野主席、といったところかな?」
「………………」
エスカリーテ――否、少女に扮した何者かは素直な賛辞を贈る。
しかし、リリアナの表情は険しいままだ。
「目的は、なんですか……?」
「ほう、そうだったね」
矢継ぎ早に、王女が問いを投げる。
すると相手はしばし考え、こう答えるのだった。
「もちろん、霊薬さ。アレがあれば、ダンは死に至るからね?」
肩を竦めて、やれやれといった感じに。
だが、リリアナは首を左右に振った。
「いいえ、違いますね。もしダンを殺したいのなら、いくらでもその機会はあったはずです。それこそ、その身を乗っ取っている際にでも……」
「あらら。ずいぶんと鋭いね……?」
エスカリーテに扮した者は、おどけて笑う。
その上で、一つ息をついてから答えた。
「ひとまず、休戦としないかい?」――と。
それは、驚きの提案だった。
「なん、ですって……?」
「おそらくだが、王女様の懸念とアタシの役割は直接的に結びつかない。アンタは魔族に対抗すると掲げているが、なにか他に探っていることがあるんじゃないかい?」
「………………」
眉をひそめるリリアナ。
そんな彼女に、相手はそう語り掛けるのだった。
王女は図星を突かれたのか、押し黙ったまま少女を睨みつける。
「なに、いずれ分かるさ。アタシの目的のその先に、何があるのか……ね?」
そう言って、エスカリーテの身体はクレオたちの方へと向かった。
リリアナはそれを呼び止めることもできず、ただ見送る。
そして、深くため息をつくのだった……。




