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万年2位だからと勘当された少年、無自覚に無双する【WEB版】  作者: あざね
第29章

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4.助けを求める少年。







「あ、あの! 助けていただき、本当にありがとうございますっ!!」

「いや、いいよ。困っている人を見捨てるわけにはいかないし」

「ありがとうございます!!」



 暴漢、あるいは山賊に襲われていた少年を助けると、彼は瞳を輝かせてこちらを見てきた。ミトスと名乗った少年は、こちらが止めているにもかかわらず何度も頭を下げる。

 手入れをする機会がなかったかのような、ボサボサの黒色の髪。その前髪が金の瞳の片方を隠していた。背丈はエスカリーテと差がなく、食育の関係か本当に小柄な印象を受ける。

 そんなミトスの背には、身の丈不相応な弓と矢筒があった。



「……えっと、それで。どうして、ミトスは追われていたの?」



 ひとしきり感謝の波が落ち着いたのを確認し、ボクは少年に訊ねる。

 すると彼は、ハッとした顔をしてからこう言うのだった。



「そうだった! あのオレ、助けを探しにきたんです!!」

「助け、だって?」



 こちらが首を傾げると、ミトスは一つ頷く。

 そして、こう語った。



「この先にオレの住んでいる村があるんですが、そこに近くの山から賊がやってきて。たくさんの人が攫われてしまったんです!!」



 自分は命からがらそこから逃げ出してきたのだ、と。

 彼の話をまとめると、こういうことだった。


 ミトスの村は、山の麓にある小さな農耕地。

 しかし、近年はその山の中に賊が住むようになり問題となった。そして昨晩、ついにその山賊たちが村に強襲をかけてきたのだ、と。



「オレ、逃げることしか出来なくて。でも他の人より足は速いから、助けを呼んでこようと思ったんですけど……」

「…………なるほど」



 一通りの話を聞いて、ボクはしばし考え込む。

 その後に、ちらりとリリアナたちに視線を投げると……。



「助けに行きたい、と言いたいのでしょう?」

「あ、バレた?」

「クレオの性格は重々承知していますから」



 幼馴染みは、大きなため息をつきながらそう答えた。

 彼女の言う通り、ボクはミトスの村を救えないかと考えている。ここにいるメンバーなら山賊を制圧することは容易いだろうし、場所を聞く限り時間のロスもゼロではないが、そこまで多くならないように思われた。

 それでも、今回の旅の目的を忘れてはいけない。

 その上でボクは、エスカリーテとキーンにも意見を求めた。



「わたしは、反対」



 すると、先に意見をしたのは妹。

 エスカリーテは淡々とした口調で、こう訴えるのだった。



「パパの命の方が大切だもん。お兄ちゃんも、そうでしょ?」

「それは、たしかにそうだけど……」



 そこを指摘されると難しい。

 妹の言う通り、今回の旅の目的は父の病を治すためだ。

 しかし、だからといって危機に瀕している人を見捨てるわけにもいかない。どうすればいいのかと考えていると、キーンがこう言った。



「話を聞いていて思ったのですが、その村の場所だったら野営するのにちょうど良いかと。いずれにせよ今日はもう日も落ちそうですし、これ以上は進めません」

「なるほど……」



 彼の話には一理あるように思える。

 それに、この面子の中で最も旅慣れしているのはキーンだ。

 ここはひとまず、彼の意見を聞いておいた方がいいかもしれない。だから、



「それじゃあ、ひとまずミトスの村を目指そうか」

「本当ですか!?」



 そう宣言すると、少年の表情はパッと明るくなった。



「うん。でも、まだどこまで力になれるか分からないけど……」

「いいえ! それでも心強いです!!」



 ミトスはボクの手を取って、幼い笑顔を浮かべる。

 それを見ると、なおのこと力になりたいと思わされた。その時だ。




「…………」

「どうしたの? エスカリーテ」

「え……ううん。なんでもないよ、お兄ちゃん」

「そ、そう……?」



 エスカリーテがミトスに対して、いつになく鋭い視線を投げていたことに気付いた。思わず訊ねると、妹は少し慌ててそう答える。

 そしてその場を後にするのだが、ボクはそんな彼女の背中に違和感を覚えた。

 理由はない。でも、どこか様子がおかしい。




「気のせい、か……?」




 ボクはしばし考え、だがすぐに気持ちを切り替えるのだった。



 


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