表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
万年2位だからと勘当された少年、無自覚に無双する【WEB版】  作者: あざね
第2章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

15/211

4.少女との約束。







「よう、クレオ――逃げ出さずによく来たな。そこだけは、褒めてやる」

「ゴウン・オルザール……」



 ボクたちのパーティーは、ギルド前の広場で相手と対峙した。

 戦斧を手に持ったゴウンは不敵に笑い、こちらを見下ろしている。その姿に怯むのは、傍らにいるマキだった。彼女はボクの服の裾を掴み、震えている。


「一つだけ、訊いてもいいですか?」

「おう、なんだ? 面白れぇ、聞いてやる」


 そんな少女の姿をちらりと見てから、ボクは真っすぐにゴウンを見据えて言った。


「どうして、マキにそこまで執着してるんですか?」

「なに……?」


 それに、彼は眉をひそめる。

 そして明らかに不快な表情を浮かべながら、こちらを睨んだ。マキを見て、彼女の視線を見て、すべてを悟ったようにこう口にする。


「ほう。マキが話したのか」

「はい、そうです」

「なるほど、な」


 短いやり取り。

 その中で、ゴウンはどこか自嘲気味な笑みを浮かべた。

 ボクはそんな彼の表情を見て、ある種の確信を持つ。ゴウン・オルザールは、なにか重要なことを隠している、と。

 そして、それはもしかしたら――。


「………………」


 ボクは深呼吸をしながら、昨日の夜、マキから聞いた話を思い出した。





「ゴウンのことを、悪く思わないで――って?」


 こちらが困惑の声を上げると、少女は一つ小さく頷いた。

 目を伏せて、どこか迷うような口調でこう言う。


「もしかしたら、あの人――ゴウンさんは、僕のことを守ろうとしていたのかもしれない、のです。他の人を犠牲にしても、僕だけは生かそうと……」

「え、それって……?」

「おかしいのです! 僕には、無茶な指示は出さない! それに、身寄りのない僕のことを引き取ってくれたのは、他でもないゴウンさん、なのです……!」

「えっ……!」


 次第に勢いを増していくマキの言葉。

 それに押されていたボクだが、しかし少し考えた。あのゴウンが身寄りのない子供を引き取って守る、ということは、そこには大きな理由があるはず。

 つまり、あの気性の荒さの奥には、なにかが隠れている……?


「だから、だから……お願いなのです……!」

「マキ、分かったよ。安心して?」

「クレオ、さん……?」


 ボクはそこで、一つ決心した。

 そして、ついに泣き始めてしまった少女の頭を撫でる。優しく声をかけると、彼女は潤んだ瞳をこちらに向けた。

 それに笑顔で返して、こう伝える。


「明日、ボクが何とかするから!」――と。





 そして今、ボクはゴウンと相対している。

 体格差は歴然とし、彼からはいかにも強者の雰囲気が漂っていた。


「なるほど、な……」

「ゴウンさん。もしかして、貴方は――」

「そこまでだ、クレオ。そこから先は、オレ様に勝ったら教えてやる」

「………………」


 彼はそう言って、戦斧を構える。

 ボクは呼応するように、剣を引き抜いてそれを見据えた。その時だった。


「だが、この人数相手に勝てれば、だけどなぁ!!」

「え、これって!」


 ゴウンの号令と同時に、衆目を割って武装した冒険者が乱入してきたのは。

 みな、すぐに彼を守るように陣を張った。

 その数――五十は下らない。


「パーティー対パーティー――その条件を出したのは、お前だぞ? それなら、総力戦で臨んでも文句はないよなぁ!?」


 ゴウンは大声で笑った。

 勝利を確信したようにして、ボクらを見下ろす。

 だけど、こっちは傍らの少女と約束したのだ。


「構いません。必ず――」



 だから、改めて剣を構えてこう宣言した。



「ボクは、貴方を倒してみせる!!」



 


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ