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万年2位だからと勘当された少年、無自覚に無双する【WEB版】  作者: あざね
第26章

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4.ダンの戦い。

物語の冒頭で、この展開を予想した人はいなかったはず。

(੭ु´・ω・`)੭ु⁾⁾ダン、がんばえ……。








「何者だ! ここが、神聖な場所であると知ってのことか!」

「あらあら。英雄の子孫は、やはり勇ましいのですね」

「……クリム!?」



 父が声を上げると、その者は姿を現した。

 間違いない。声の主は、魔族――クリムだった。

 彼女は赤い目を細めて笑うと、何度か感心するように頷く。そしてボクと父を見比べて、満足そうにこう言うのだった。



「私としても嬉しい限りです。このように優秀な血族が、現代にも残っていることが。――もっとも、愚かな人間たちはそれを忘却したようですが」



 得物を抜き放ち、クリムはまた笑う。

 いったい、何をするつもりなのか。ボクが訝しんでいると――。



「……クレオ。ここは、私に任せろ」

「お父様……?」



 真っ先に父がそう口にした。

 驚き見ると、彼は手元に魔力を集めている。

 ゆっくりと呼吸をし、集ったそれは次第に形を作っていった。



「これでも私は、王都立学園を首席で卒業しているからな。お前はひとまず王城の者たちに、避難するように伝えるのだ」

「そんな、お父様一人で……!?」



 ボクが声を上げると、父はややこけた頬に笑みを浮かべる。

 そして――。



「心配するな、クレオ。お前ほど優秀ではないが、私も公爵家当主――」




 冷気が、一つの剣となった。




「病魔に蝕まれていようとも、簡単に死ぬことなどない……!」









「ずいぶん、素直にクレオを見逃すのだな。そこの魔族よ」

「今回の標的は、貴方でしたもの――ダン公爵」

「…………ほう?」



 クレオが王城へと走った後に、静寂の中で二人は言葉を交わす。

 ダンは、クリムの言葉を聞いて眉をひそめた。自分が標的、というのは意外な話だ。そのことに興味を抱いた彼は、魔族の女にこう訊ねる。



「それは、いったいどういうことかな」

「ダン・ファーシード――おおよそ歴代公爵の中で、最も才能に恵まれながら、周囲にその実力を認められなかった者。魔族の間で貴方は、そう評価されています」

「ほう……。それは、光栄だな」



 そして、返ってきた言葉に口角を上げた。

 だが気は緩めない。そんな彼に、クリムはこう提案した。




「私と一緒にきませんか、ダン公爵」――と。




 貴方はもっと正当に評価されるべきだ。

 言外には、そのような意味が含まれているように思われた。



「…………」



 クリムの誘いに、公爵は押し黙る。

 しかし、数秒の間を置いてから腹を抱えて笑い始めるのだった。





「あっははははははははは! 昨今の魔族は、人間の手助けが必要なほど落ちぶれたか!? それとも、このダン・ファーシードが恐ろしいか!!」





 すると魔族は、やや不快そうに目を細める。

 それでも勧誘は止めない。彼女はさらに、こう提案した。




「えぇ、そう思われても問題ありません。ただ、よろしいのですか……?」




 また、憎たらしい笑みを浮かべて。




「魔族となれば、その病も完治いたしますよ?」――と。




 自分の命が惜しいだろう、と。

 こちらにつけば、その身を蝕む病を消してやろう、と。


 それには、さすがのダンも眉を動かした。

 だが、すぐに目を閉じると――。




「……見くびるなよ? 魔族ふぜいが」




 真っすぐに、氷剣を構えて笑うのだった。




「私は公爵家現当主、ダン・ファーシード! 王都の貴族の中において唯一、英雄の血を引く一族の長である!! もし、私を連れて行きたいならば――」




 その、直後だ。




「――我が命を絶ち、骸を持ち帰るしかないと知れ……!!」

「な、速い……!?」





 彼の姿が掻き消えて。

 次の瞬間には、クリムの背後にあったのは。




 とっさに、氷剣の一撃を防ぐ魔族の女。

 鍔迫り合いの最中に、ダンはこう言うのだった。




「もっとも、お前ごときに私が殺せたら、な?」

「舐めた口を……!?」





 クリムの表情から余裕が消え、闘争心が溢れ出す。

 そうして、戦闘が始まった。




 ダン・ファーシード。

 彼にとって、生涯最後の戦いが……。



 


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― 新着の感想 ―
[良い点] ダンはクレオと逆で周りが弱すぎて比べられる相手がいなかっただけで本当は強かったんだな ハズレな世代のせいで馬鹿にされてたけど実力はクレオ並みなのかな
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