7.クレオのために。
そんな中での、仲間たちの様子。
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「クレオさんのお父さん、お身体悪いのですか?」
「あぁ、聞いた話だけどね」
「それで今日は、クレオがいないわけか……」
キーンとマキ、そしてエリオの三人は王城の客間で情報を共有していた。
その内容というのもクレオの父、ダンについて。パーティーメンバーたちはみな、一様に重い表情を浮かべていた。クレオの父については、ほんの少しだが聞き及んでいる。彼を勘当し、家から追い出した張本人だ、と。
だがクレオ自身は、そんな相手のことを悪くは言っていなかった。
彼の自己評価が低いのもあるだろう。それでも、クレオにとってはかけがえのない肉親であるというのが、一番大きなところだと思われた。
「…………僕だったら、きっと泣いちゃいます」
沈黙の中、口を開いたのはマキ。
それを聞いて、静かに頷いたのはエリオだった。
「あぁ、そうだな。誰かを失うのは、悲しいことだから」
二人は共に、大切な誰かがいなくなることを知っている。
マキは物心つく前だが、エリオはセナという少女を目の前で失っていた。そのため、ことさらに親しい存在の生き死にには敏感になっているのだ。
キーンはそんな二人を見て、言葉を選べないでいる。
長命たるエルフにとって近親の死は、身近ではないからだ。永遠に思われるような時間の中で、他の種族とは積極的には交わらずに生きる。
幸か不幸か、青年は感覚を共有できずにいた。
「でも――」
――それで、良いのだろうか。
キーンは思う。
自分のために心を尽くしてくれる、大恩ある相手が悲しんでいる。それなのに、自分がなにもしないでいるなんて、許されるのだろうかと。
分かっている。
国は、人一人の命を見ている場合ではなかった。
死とは縁遠いキーンだからこそ、そのことが理解できる。クレオが王城に招かれたのは国の危機を救うためであり、自分たちもそれに協力する必要があった。
だからこそ、彼は苦心する。
自分はいまどのように、振舞うべきなのかを。
「キーン、さん……?」
「あ、いや。なんでもないよ、マキ」
そんな葛藤が顔に出ていたのだろうか。
青年の顔を覗き込みながら、マキが首を傾げていた。
「なんでもない、なんてことないですよ。だって――」
キーンの言葉に、マキは首を左右に振る。
そして、こう言うのだった。
「なんでもないなら、そんな苦しそうな顔はしないです」――と。
少女の言葉に、彼はハッとする。
自身の手を取るマキに、驚いた表情を浮かべてしまった。
「なにか悩んでいるなら、僕たちに相談してほしいです」
「マキ……」
優しい言葉。
キーンはその時、彼女のそれに一つの答えを得た。
その通りだ。どうして、こんな単純なことを忘れていたのか、と。
「二人とも。クレオさんを探そう」
自分が魔法で苦心した時。
その悩みを聞き、手を差し伸べてくれたのは誰だったか。
それは他でもない――クレオだった。
「クレオさんは、私たちの何倍も苦しんでいるはずだ。こんなところで、こちらが落ち込んでいる場合ではない」
キーンは二人にそう語る。
すると、マキとエリオは顔を見合わせて――。
「そう、だな……!」
「はいです!」
力強く頷いた。
それを見て、青年は改めて思うのだ。
「今度こそ、私たちがクレオさんを支えるんだ」――と。
三人は急ぎ足に客間を出た。
そして王城の廊下を駆け、クレオを探す。
◆
「……良い仲間を、持ったのですね」
そんな彼らの姿を遠くから見て、リリアナは微笑んだ。
これで、クレオとダンの問題は前に進むだろう。
「でしたら……私は、私にできることを進めましょう」
王女はそう力強く口にすると、国王である父のいる部屋へと向かうのだった。
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