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万年2位だからと勘当された少年、無自覚に無双する【WEB版】  作者: あざね
第25章

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6.父の背中。

ちょっとしんみり。

あとがきには、新作お知らせ。応援よろしくです。








「…………朝、か」



 目を覚ますと、そこには見慣れない天井があった。

 ボクは不鮮明な意識を起こすために、身を起こして大きく伸びをする。そして周囲を確認し、そこが王城の客室であることを思い出した。



「そっか。昨日はみんな、王城に泊まったんだっけ」



 キーンの療養も兼ねて、という措置だ。

 三人は慣れない環境に目を丸くしていたけれど、ボクにとってはどこか懐かしい。まだ公爵家にいた頃は、頻繁に足を運ぶことも多かった場所だ。

 リリアナと遊んでいたのが、昨日のことのように思い出される。


 ――そう。あの頃は、みんなが笑顔だった。



「………………」



 そこまで考えて、昨日の話を思い出した。

 夢に、父とのことを見たのもまた、そのせいだろう。



「嘘じゃ、ないんだよね……」



 キーンとエスカリーテの話を聞いていたボクは、耳を疑った。

 すぐにリリアナにも確認し、それが事実であると知る。

 そして、目の前が真っ暗になった。





「お父様が、不治の病に侵されている」





 ダン・ファーシード。

 ボクの父は、最新の治癒魔法でも及ばない病を患っていた。



 




「おや、起きたのか。クレオ」

「え、お父様……?」



 ボクが服を着替え、外に出ると父が立っていた。

 まるで偶然を装っているが、その違和感は全然拭えていない。この時間に王城にいるのも変だし、狙ったようにボクの部屋の前に立っているのもおかしい。

 しかし、今ばかりはツッコむのも野暮だと思えた。



「どうしましたか?」

「他人行儀はやめろ。昨日の和解が嘘のようだ」

「あはは。……うん、そうだね」

「少し、話がある。ついてこい」



 ほんの少しの冗談。

 しかし父はすぐに真面目な顔になると、ボクを手招いた。

 頷いて彼の後についていく。すると不意に、こんな話題を振られる。



「……時に、クレオ。お前には好きな女性はいないのか?」

「へ……!?」



 あまりに唐突だった。

 だから、ボクは素っ頓狂な声を発してしまう。

 でも父は至って冷静に、立ち止まって窓の外を見ながら言った。



「…………いや、な。私も良い歳だからな。少し先を考えたのだ」

「お父様……?」



 ボクが声をかけると、あることに気付く。

 こちらに背を向けた父の肩は、微かに震えていた。その理由を覚らせまいとしているのだろうか。しかしボクには、彼が震える理由を知っていた。

 だから、その次に出た父の言葉が重く。


 胸に響くのだ。




「私は、なにも残せなかったのだな……」――と。




 ある朝のこと。

 ボクは、父になにも声をかけることができなかった。



 


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