5.いつか、父との記憶。
短いです、ご容赦ください。
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王都立魔法学園に入学する前のこと。
お父様は、ボクの服を仕立てた際にこう語っていた。
「いいか、クレオ。公爵家とは、貴族の中心であるべき一族だ」
「お父様……?」
窓の外を見て、遠い昔を思い出すように。
そしてボクの着た制服に視線をやって、小さく微笑むのだった。
「お前なら大丈夫だ。きっと、私のようにはならない。エキスパートとして、誰にも馬鹿にされることのない立派な貴族に――」
片膝をついて、こちらの肩に大きな手を乗せる。
とても温かかったことを覚えている。それと同時に、父からの期待の大きさを感じた。きっと彼は自分にできなかった何かを、ボクに託そうとしている。
だとすれば、こちらにできるのはなんだろう。
息子としてボクが、父にできることって――?
「分かったよ、お父様。ボク――頑張るから!」
当時の自分に、どこまで理解できていたか分からない。
それでもたしかだったのは、父の期待に応えたい、という気持ち。学生服をこんなにも悲しげに見る彼の心を少しでも、晴らしてあげたいという思いだった。
そこから先は、苦悩の日々。
1位になれないこと、期待に応えられないこと。
でも、この時の誓いがあったから。
ボクはボクとして、常に前を向いて挑戦を続けられたのだ。
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