3.お茶会での想定外。
「ハズレの世代の1位……?」
「えぇ、そうです。ダン・ファーシード公爵は学園生時代に、そう呼ばれていたのです」
紅茶を啜りながら、リリアナはそうキーンに語った。
青年は蔑称としか思えないその称号に、思わず眉をひそめる。
王女が語ったのはダンがまだ、学生であった時のこと。そこでの彼は、多くの分野において1位を獲得してきた。しかし、そんなダンに付けられたのは――。
「当時の学園には、今ほどの人材がそろっていませんでした。もちろん、レベルが低かったと断言はできませんが、その時代の大人には見下されていたそうです」
「そんな、ことが……」
「あの公爵がエキスパートたれ、という家訓に執着したのはそれが原因かもしれません。クレオに必要以上に厳しく当たったのも、ですね」
――もっとも、無能であることに変わりはありませんが。
リリアナはそう言って、また紅茶を口にする。
そんな王女に対して意見をしたのは、すぐ隣に座ったエスカリーテ。
「リリアナお姉ちゃん……」
「あぁ、すみません。貴女の前でしたね」
失言だったと、それを認めようとした。
しかし、公爵家の少女は首を左右に振る。そして、
「ううん。お父様がおバカさんだったのは、違いないから」
容赦のない肯定の言葉を口にした。
キーンはそれに、思わず苦笑いをしてしまう。
だがそんな青年の反応など関係ない、と言わんばかりに。エスカリーテは、小さな声でこう続けるのだった。
「ただね、お父様もお父様で苦しんでたと思うの」
「エスカリーテ……」
ほんの少し目を伏せて。
少女はふっと息をついてから、キーンにこう問いかけた。
「ねぇ、エルフのお兄ちゃん?」
「……はい。なんでしょうか」
小さく微笑んで。
これは冗談ではなく、本気だという口調で。
「将来、わたしと結婚してくれませんか?」――と。
その言葉にはリリアナも唖然としたようで。
キーンと王女は顔を見合わせた後に、声をそろえて叫ぶのだった。
「えええええええええええええええええええええええ!?」
「えええええええええええええええええええええええ!?」
王城に響き渡るそれに、多くの家臣たちが首を傾げる。
だが、それもまた仕方のないことだった。




