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万年2位だからと勘当された少年、無自覚に無双する【WEB版】  作者: あざね
第25章

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2.公爵家の娘。

ちょっとサブの人間関係をちらり。









「………………ふぅ」




 ファーシード親子が対面し、和解したのを聞き届けて。

 リリアナは少し安堵したように息をついた。散々ダンのことを無能と罵ってきた王女であるが、彼はクレオにとって唯一の父親である。

 彼女から見ても、あの少年が父親からの愛に飢えていることは分かっていた。

 もっとも、クレオ自身は無自覚だろうが。



「リリアナお姉ちゃん、盗み聞きはよくない」

「あら、珍しいのですね。貴女が王城にやってくるなんて」



 それを考えていた時だった。

 リリアナの背後から、幼い少女の声が聞こえたのは。

 振り返るとそこにはぬいぐるみを抱えた、小さな女の子がいた。



「そう? 珍しい?」

「えぇ、珍しいですよ。エスカリーテ」

「そっか、いつ以来だっけ……?」



 その少女――クレオの妹であるエスカリーテは、小首を傾げて言う。

 間もなく魔法学園に通うことになる彼女だが、基本的には引きこもり体質であった。そのため、あまり表舞台や王城に足を運んでくることはない。

 それが、どういう風の吹き回しだろう。

 ダンの後をわざわざ追いかけてくる、というのも変な話だ。



「……まぁ、いいでしょう。せっかく来たのですし、お茶でもいかがです?」

「お菓子、いっぱいある?」

「えぇ、もちろんです」

「いく!」



 しかし、こういうこともあるだろう。

 リリアナはそう思って、エスカリーテを茶会に誘った。

 その時である。



「あぁ、王女様。ここにおられたのですね」

「キーンさん?」



 廊下の先から、キーンが姿を現したのは。

 彼は王女を認めて歩み寄ると、途中でもう一人の少女に気付いた。そして、



「…………」

「…………」



 彼らは目を合わせ、黙ってしまう。

 エスカリーテもキーンも、どこか呆けているような様子だった。

 それこそ、なにかで突然に頭を殴り付けられたかのように。そんな二人の表情を見比べたリリアナは、一つの結論に至る。しばしの思案の後、こう提案するのだった。



「せっかくです。キーンさんも、ご一緒しますか?」

「え、え? なににです?」



 青年も、茶会にこないか――と。


 しかしキーンは会話の前後を知らないため、少々だが挙動不審になった。

 そんな彼の服を引っ張ったのは、エスカリーテだ。



「お兄ちゃんと、お話したいな」

「…………!」



 彼女は上目遣いに、キーンを誘う。

 そうなると、どうやら彼も拒否はできなくなったようだ。



「分かりました。それでは、少しだけ……」



 小さく、困ったように笑いながら頬を掻く。

 エスカリーテは、微かに頬を赤らめた。



「…………ふふっ」




 そんな二人を見て、リリアナは確信して笑う。

 こういった縁もまた悪くない。



 王女はそう思って、歩き出すのだった。



 


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