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万年2位だからと勘当された少年、無自覚に無双する【WEB版】  作者: あざね
第25章

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134/211

1.親子の雪解け。

ざまぁの回収、こんなのでも良いよね(穏健

あとがきもよろしくです(定期








「えっと、お久しぶりです。……お父様」

「そ、そうだな」

「…………」

「…………」




 客間に通されたボクと、父のダン・ファーシード。

 しばらく二人きりで話をしたい。そうリリアナに申し出ると、案外あっさりと許可が出た。そんなわけで、みんなとは後々に合流するとして、ボクは一つ深呼吸。

 まさか、こんな形で父親と再会するとは思ってもみなかった。

 いや、彼も公爵なので王城にくるのは想定内だけど。



「というか、少し痩せました……?」

「……あぁ、軽くニ十キロくらいな」



 勘当を言い渡された日以来に見た父は、ひどく痩せていた。

 もっと正確に言えば、やつれている、というのだろうか。とかく、以前のような覇気はまるで感じられなかった。何があったのだろうか。

 そう考えていると、なにやら思い詰めたように父は言った。



「見つかって、良かった……」――と。



 大粒の涙を流しながら。

 いったい、どうしたというのだろうか。

 ボクが首を傾げていると、彼はソファーから降りて膝を折った。


 そしてゆっくりと手をつき、頭を下げる。




「本当に、申し訳なかった」

「お、お父様……!?」




 口にしたのは、謝罪の言葉だ。

 あまりに唐突な出来事に、ボクは父に駆け寄ってその身を起こす。すると、彼は鼻水を垂らしたどうしようもない顔で、ボクのことをジッと見つめた。

 啜り泣きながら、こう続ける。



「お前を勘当したこと、本当に後悔していた。周囲から責められ、お前の学園生時代の成績について、延々と説かれた。私はとんでもない見落としをしていたのだ」

「見落とし……?」



 ボクが首を傾げると、父は頷く。

 そして静かに、こう口にするのだった。



「今さらになって、申し訳ない。だが、伝えさせてほしい」



 ボクの顔に触れながら。





「お前は、凄い子だ。家訓に縛られ、辛く当たってすまなかった」――と。





 それは、まるで雪解けのような言葉で。

 ボクは思わず――。




「え、そんな。って、あれ……?」









 自分の頬に触れて、気付いた。

 涙が流れている。感情とは全く別のところで、なにかが切れた。

 どうしてだろうか。どうして、今さらこんなに涙が出てくるのか。




「クレオ、すまなかった……!」

「お父、様……」




 優しく抱きしめられる。

 それは、生まれて初めての経験だった。

 ずいぶんと痩せ細ってしまった父だけど、とても温かくて。




「うぐ、えっ……ぐ……!」





 ――あぁ、もしかしたら。


 ボクはずっと、この人に認めてもらいたかったのかもしれない。

 だから今、こんなにも。




 ボクはその時、まるで子供のように泣きじゃくった。

 お父様も同じで、それぞれの抱えた責任を放り捨てたのである。




 嬉しかった。

 ただただ、ボクは嬉しかった。




 


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