1.親子の雪解け。
ざまぁの回収、こんなのでも良いよね(穏健
あとがきもよろしくです(定期
「えっと、お久しぶりです。……お父様」
「そ、そうだな」
「…………」
「…………」
客間に通されたボクと、父のダン・ファーシード。
しばらく二人きりで話をしたい。そうリリアナに申し出ると、案外あっさりと許可が出た。そんなわけで、みんなとは後々に合流するとして、ボクは一つ深呼吸。
まさか、こんな形で父親と再会するとは思ってもみなかった。
いや、彼も公爵なので王城にくるのは想定内だけど。
「というか、少し痩せました……?」
「……あぁ、軽くニ十キロくらいな」
勘当を言い渡された日以来に見た父は、ひどく痩せていた。
もっと正確に言えば、やつれている、というのだろうか。とかく、以前のような覇気はまるで感じられなかった。何があったのだろうか。
そう考えていると、なにやら思い詰めたように父は言った。
「見つかって、良かった……」――と。
大粒の涙を流しながら。
いったい、どうしたというのだろうか。
ボクが首を傾げていると、彼はソファーから降りて膝を折った。
そしてゆっくりと手をつき、頭を下げる。
「本当に、申し訳なかった」
「お、お父様……!?」
口にしたのは、謝罪の言葉だ。
あまりに唐突な出来事に、ボクは父に駆け寄ってその身を起こす。すると、彼は鼻水を垂らしたどうしようもない顔で、ボクのことをジッと見つめた。
啜り泣きながら、こう続ける。
「お前を勘当したこと、本当に後悔していた。周囲から責められ、お前の学園生時代の成績について、延々と説かれた。私はとんでもない見落としをしていたのだ」
「見落とし……?」
ボクが首を傾げると、父は頷く。
そして静かに、こう口にするのだった。
「今さらになって、申し訳ない。だが、伝えさせてほしい」
ボクの顔に触れながら。
「お前は、凄い子だ。家訓に縛られ、辛く当たってすまなかった」――と。
それは、まるで雪解けのような言葉で。
ボクは思わず――。
「え、そんな。って、あれ……?」
自分の頬に触れて、気付いた。
涙が流れている。感情とは全く別のところで、なにかが切れた。
どうしてだろうか。どうして、今さらこんなに涙が出てくるのか。
「クレオ、すまなかった……!」
「お父、様……」
優しく抱きしめられる。
それは、生まれて初めての経験だった。
ずいぶんと痩せ細ってしまった父だけど、とても温かくて。
「うぐ、えっ……ぐ……!」
――あぁ、もしかしたら。
ボクはずっと、この人に認めてもらいたかったのかもしれない。
だから今、こんなにも。
ボクはその時、まるで子供のように泣きじゃくった。
お父様も同じで、それぞれの抱えた責任を放り捨てたのである。
嬉しかった。
ただただ、ボクは嬉しかった。




