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万年2位だからと勘当された少年、無自覚に無双する【WEB版】  作者: あざね
第24章

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9.傷だらけの勝者。









「…………どうして、生きているのですか?」

「ははは。王女様も手厳しいな」



 眉をひそめて訊ねるリリアナに、思わずキーンは苦笑した。

 とっさに言葉が出てこなかったのであろうが、なんとも面白い問いかけだ。青年は腕を下ろすことなく、真っすぐに彼女を見つめる。



「たしかに、私の潜在魔力では貴方に敵わない。それでも一芸に特化することができれば、僅かな隙を貫く鋭い槍になるかもしれない、ということです」

「回りくどいですよ。簡潔に、分かりやすく教えてください」

「そうですね。煙に巻いて申し訳ないです」



 キーンはそう言って、ふっと息をついた。



「リリアナ王女の攻撃魔法には、誰も並び立つことができない。それなら――」



 そして、人懐っこい笑みを浮かべて言う。



「攻撃で勝れないのであれば、私は防御魔法を極めようと考えたのです」――と。



 それを聞いて、リリアナは息を呑んだ。

 防御魔法――それを用いて、王女の最高峰の魔法を防ぎ切ったという。そんなことがあり得るのか。リリアナは未だかつて経験したことのないそれに、驚きを隠せなかった。

 そんな王女の表情がおかしかったのか、キーンはまた笑う。



「まぁ、これは私にとっても賭けでした。防ぎきれなければ――死ぬ。それでも私は、クレオさんの隣にいるために、貴方に認めてもらうためにはこれしかないと、そう考えたのですよ」

「………………」

「いかがでしょう、リリアナ王女。私の有用性は、証明できましたか……?」

「はぁ……ホントに、馬鹿なことを」



 彼の問いかけに、リリアナは呆れたようにため息をついた。

 しかし、すぐに目を細めて笑う。そして――。



「認めないわけには、いかないでしょう。私の負けです、間違いなく」



 両手を上げて、降伏の意を示した。

 瞬間、周囲の者たちは一斉に歓声を上げる。

 想像以上の拍手喝采に包まれ、キーンは思わず……。



「おっと……?」

「大丈夫ですか、キーンさん」

「あははは、すみません。どうやら身体が限界のようです」



 緊張の糸が切れたのか、青年はその場に尻餅をついた。

 王女を見上げる形になりつつ、頬を掻きながらまた苦笑い。

 そんな傷だらけの勝者に、無傷の敗者は満足げに微笑みながら――。



「ほら、掴まって下さい」



 そう、手を差し伸べた。

 キーンはほんの少しだけ呆気にとられた後に、明るく笑ってそれを取る。




 こうして、キーンにとって一世一代の決闘が終わった。

 凡才の域を抜けない青年による、大番狂わせ。



 ただそれ以上に、青年にとっては少年の傍にいられることが嬉しかった。



 


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