5.圧倒的な力。
遅くなり申し訳ございません。
あとがきに、新作情報。そちらも応援よろしくお願いいたします。
「くっ……!? やっぱり、桁違いだな!」
キーンは戦闘開始直後にそう思わされた。
互いに剣技、魔法、そして治癒術に長けた者がいるチーム。自然とエリオはアルナとぶつかり、マキとマリンは各々後方に陣取り様子をうかがっていた。エリオの剣術は、クレオとの特訓の成果もあってか、以前よりも飛躍的に向上している。
そのため、前衛二人の実力は伯仲。
多少はアルナに押されているが、しばしの時間稼ぎが可能だった。
だからこそ、雌雄を決するに必要な決定打は――。
「私とリリアナ王女の、魔法……だが……!」
そう、魔法使いの二人の力量によるものだった。
そして考えが自然とそこに至ることで、キーンの口から出たのが冒頭の言葉。戦闘開始直後、リリアナはエリオ目がけて無詠唱魔法を放った。
エリオはそれを上手く回避してみせたが、その衝撃は想像以上。
「無詠唱魔法の範疇を、超えている……!」
キーンは息を呑んだ。
あのような馬鹿げた火力、たまったものではない。
間違いなく喰らえば戦闘不能。事実、その一撃があった場所には大穴が開いている。威力としては、キーンやクレオが詠唱を行った上で使用する、上級魔法――あるいは、それ以上。王都立学園の魔法学主席卒業、天才の名を欲しいがままとした実力は本物だった。
それをまざまざと見せつけられて、キーンは無意識に頬を引きつらせる。
このようなバケモノとも思える相手に、勝てるはずがない。
そのことは自明の理だった。
「立ち尽くしているだけでは、なにも前に進みませんよ?」
「………………」
そんな彼に、リリアナは厳しい言葉を投げる。
まさしくその通りだった。だから、キーンは何も言い返せない。いいや、ここはあえて言い返さなかった、というのが正しいか。
今のはリリアナの挑発にも近い。
この程度の差を見せつけられたとして、それに意識を持っていかれてはいけない。彼はそう思い直し、必死に策を練った。
「私にできること、私にしかできないことを……!」
リリアナの魔法を回避しつつ、キーンは唇を噛む。
そして、こちらも無詠唱魔法による牽制を入れ続けた。戦況は拮抗状態。あるいは、前衛二人の体力次第、というところだと思われた。
この状況を覆すために必要なのは、明らかにキーンの一手である。
「くっ……!」
「大丈夫か、エリオ……?」
「あぁ、まだまだ大丈夫だ。だけど、どうするキーン」
「…………」
ふっと緊張状態が解け、エリオとアルナが距離を取ったタイミング。
キーンは彼女に歩み寄って意見を交換した。相手との睨み合い。その束の間に、三人はここからの戦略を共有することにした。
そして、その最中にキーンがこう言うのだ。
「これは、一か八かだ。それでも――」
エリオとマキ。
二人に、小さく笑いかけながら。
「二人とも、覚悟はできているか?」――と。
◆
「リリアナ。どうする?」
「…………そうですね」
リリアナは少々、落胆したような声色でアルナに答える。
キーンの魔法は自分の足元にも及ばないのは、戦前から理解していた。しかしながら、なにかしら手を打ってくるだろう、そう思っていたのだ。
しかし、蓋を開けてみれば彼は防戦一方。
前衛のエリオにすべてを任せ、やるとしたらリリアナの魔法を妨害する程度。
これでは、どう考えても遅延行為にしかならない。
「だったら――」
リリアナは、一つ息をついてから。
マリンとアルナを見て、こう告げるのだった。
「もう、終わらせましょう。私の魔法で」――と。
直後、今までにない魔力の奔流が王女を包み込む。
それを確かめたアルナは、呆れたように小さく首を振って言った。
「あぁ、そういうことか。分かったよ」
剣を構え、真っすぐにエリオを見る。
「でも、頼むから訓練場は壊すなよ……?」
「さぁ? それは約束できませんね」
「おいおい……」
少年騎士は苦笑いを浮かべた。
その直後だ。
「ん……!?」
「あちらも、動き始めたようですね」
キーンたちの動きに変化があった。
そして、その一手は戦況を大きく動かし始める。
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