8.エリオに生まれた新しい理由。
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皆様、よろしくお願いいたします!
※だいぶ近辺が落ち着きました。今日から更新します。
「リーディン家再興、か……」
エリオは一人、夕暮れ時の王都立公園の椅子に腰かけてそう呟いた。
セナの墓参りから帰ってきて早々に、クレオから伝えられた思わぬ吉報。あまりの不意打ちに、彼女はどこか心非ずになっていた。
決闘は明日に迫っているのに、どこか鍛錬にも身が入らない。
手を抜こうとしているわけではないのだが、それでもどこか力が出ない。
もしかしたら、燃え尽き症候群、というやつだろうか。
自分のせいと思い続けていた足枷。それが、真の意味で取り除かれた。そのことによって、エリオは今、次に自分がなにをすれば良いのか分からなくなっているのだ。
「アタシはこれから、なんのために……?」
父であるクラディオの死から、間もない。
そこに降って湧いたことだから仕方ないといえば、仕方ないのかもしれない。だが、このままでは自分が駄目になる。彼女はそうも思っていた。
だから一度、頭の中を整理したくてエリオはここにやってきたのである。
夕暮れに沈んでゆく公園。
貴族の子供たちは、もう全員が家路についていた。
だから、喧騒とはかけ離れた静寂が、いまのエリオを包んでいる。
「あ、こんなところにいたんですね!」
「え? あぁ、リナ。どうしてここに?」
そんな彼女に背後から声をかけたのはリナだった。
振り返るとそこには、以前より少し綺麗な衣服に袖を通した獣人の少女。セナの妹である彼女は、どこで買ったのか花束を手にしていた。
そして、嬉しそうにエリオの隣にやってきて椅子に座る。
「どうして、じゃないですよ! せっかくお祝いしようと思ったのに!」
「お、お祝い……?」
「はい!」
そう言うと、リナは花束を彼女に差し出した。
次いで口から出たのは――。
「リーディン家再興、おめでとうございます!!」
「あ……」
心からの祝辞だった。
半ば強引に花束を受け取らされたエリオは、言葉を失う。
しかし、そんな彼女の様子など知ったことではないといった風に、リナは元気いっぱいにこう口にするのだった。
「私、すっごく嬉しいんです! これでやっと、エリオさんは何にも縛られることのない、本当の意味での『自由』になれたんだ、って思えるから!」――と。
その言葉に、エリオは思わず納得した。
「あぁ、アタシがいま迷っているのは――」
――突然に自由を得たからなんだ、と。
自由とは、つまりなににも縛られないということ。
それと同時に、自分で考えて行動する必要に迫られるということ。
エリオは今まで何かしらの目的や、使命があって行動していた。良いものもあれば、悪しきものもあったが、とかくそれらは彼女の道を示していたのだ。
だから、迷う。
足元の明かりが突然に消えたから。
あるいは、道標がなくなった、とでもいえばいいのだろうか。
「エリオさん……?」
「あ、あぁ。ごめん、なんでもないんだ」
そう考えていると、リナに顔を覗き込まれていた。
不思議そうな少女の表情に、思わず苦笑いをしてしまうエリオ。せめてリナには心配をかけないようにしよう。そう思って、一つ息をついた。
そして、こう訊ねる。
「ところで、リナはこれからどうしたい?」
漠然としていた、これからのことについて。
エリオが王都に戻ろうとすると、当たり前のようにリナもついてきた。その理由はいまだに分からないまま。とりあえず、それを明らかにしたかった。
すると獣人の少女は、小さな拳を胸の前で握りしめてこう言う。
「もちろん、リーディン家の給仕さんです!」
「え……!?」
思わず、エリオの口からは素っ頓狂な声が出た。
だがそれに構わずに、リナは続ける。
「お姉ちゃんがやっていたこと、もっと知りたいんです!」――と。
それを聞いて、エリオはハッとした。
同時に納得する。
「そう、か……」
まだ、終わっていなかった、と。
自分にはまだ、やることがあったじゃないか、と。
「駄目、ですか……?」
「いいや。そんなことない」
いつか夢見た日々を、続けること。
そして、セナに誓った。リナをしっかりと守る、ということ。
おもむろにエリオは簪を取り出して、それを夕日にかざしてみた。決して高価なものではないが、彼女にとってかけがえのない宝物。
そして、それはリナも同じだった。
「……えいっ!」
少女もまた簪を取り出し、エリオに身を寄せながらかかげる。
柔らかに日差しを反射するその輝きに、二人は自然と目を細めていた。
「アタシには、まだやることがある。そのために――」
エリオは、ちらりとリナを見て頷く。
――この愛しさを守るために。
自分はまだ、戦う。
それが、彼女に生まれた新しい理由。
――大切な親友が繋いでくれた新しい絆を守り続けよう。
エリオはその時、たしかに自身の胸に火が灯るのを感じたのだった。




