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万年2位だからと勘当された少年、無自覚に無双する【WEB版】  作者: あざね
第23章

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117/211

4.エルフの誓い。

毎日更新、三日目。

発売は11月2日です。

加筆修正――いや、あれはもう再構築ですね。少なくとも、WEB版を楽しんでいただいている皆様にも、買っていただく価値があるものになっているかと。とにかく頑張りました(´;ω;`)








 ――この国の救世主となってほしい。



 ボクはその言葉に、耳を疑った。

 なんの取柄もない自分が、そのような存在になるなど考えられない。

 だから、リリアナには曖昧な答えしかできなかった。彼女もそうなると理解していたらしく、数日の猶予をもらったけれど、このままではきっと足りない。

 宿の部屋でボンヤリと窓の外を見て、ボクはずっとそう考えていた。



「どうして、ボクなんだろう」



 アルナも言っていた。

 彼の場合は、もっと柔軟な考え方のようだけど。それでも、ボクのことを取り立てようとしているのは明らかだ。

 その流れに取り残されているのは、他でもないボク自身。

 周囲からの評価に、驚きが隠せなかった。



「ん……? 誰、かな」



 そうしていると、誰かがドアをノックする。

 もう夜も遅い。そうなると、この部屋を訪れる人は限定されて――。



「クレオさん、少しお話いいですか?」

「やっぱりキーンか。いいよ」



 予想通り、エルフの青年がそこにいた。

 彼は中に入ってくると、その綺麗な顔に柔らかな笑みを浮かべる。彼が手頃なところにあった備え付けの椅子に腰かけたのを見て、ボクはベッドに座った。

 互いに一息ついたところで、こちらから訊ねる。



「それで、どうしたの? こんな夜遅くに」

「………………」



 すると、ふっとキーンの顔が真剣なものに変わった。

 そして彼は静かに、こう口にする。



「クレオさんは、間違いなく救世主に相応しい器です」――と。



 それを聞いて、ボクは察した。



「そっか。聞いてたんだね」

「申し訳ありません。本当は盗み聞きするつもりはなかったのですが」

「いいよ、大丈夫」



 一連の会話を彼も聴いていたのだろう。

 ボクは少し考えて、頬を掻いた。



「キーンは、ボクのことを評価してくれるんだね」

「もちろんです」



 それは、どうしてなのか。

 その答えを求めるような言葉を口にしていた。

 そしてキーンもまた、把握しているらしい。ボクの弱気な視線を受けて、優しく微笑みながらこう語り始めた。



「クレオさん。私たちが出会った時のこと、憶えていますか?」

「うん、もちろんだよ」



 頷くと、キーンは少し恥ずかしそうにする。



「本当を言えば忘れていただきたいのですが、あの時の私は井の中の蛙でした。辺境暮らしで持て囃され、その気になっていたのです。そんな私の目を覚まさせてくれたのが、クレオさんでした」

「そんな、たいそうなことはしてないよ」



 やんわり否定するが、彼は首を左右に振って続けた。



「いいえ。アレが私にとっては、命を救われる以上に重要なことでした。英雄の仲間――その末裔であるという、生まれだけを気にしていた私にとっては……」

「キーン……?」



 そこまで言うと、不意に青年は立ち上がる。

 そして――。



「ちょ、ちょっと!? キーン、なにしてるの!?」



 あまりのことに、つい時間帯を忘れて声を上げてしまった。

 だって、目の前で片膝をつかれたら誰でもこうなる。恭しい所作で身をかがめて頭を垂れたキーンは、慌てるこちらとは正反対に、落ち着いてこう言うのだった。



「クレオさん。貴方は間違いなく、私が理想とする方。そして人々が尊敬し、また愛されるに足る人物であると確信しています」

「えっ……?」

「貴方自身にはまだ、自覚はないかもしれません。しかし、その無自覚がまた好いのです。謙虚な姿勢に私やエリオ、そしてマキは救われました」

「…………」



 ――だから、と。

 キーンはおもむろに面を上げて、微笑んだ。

 そして、こう告げる。




「どうか自身を忘れず、自信を持ち。この国を救ってください」




 とても、安心できる声で。




「そして、今度こそは中途半端な誓いではなく。私は貴方の行く末に寄り添いこの身を捧げたい、そう思っています。だからどうか、私――いいえ、私たちも連れて行って下さい」




 それが、願いであると。

 キーンは迷うことなく口にするのだった。



「キーン……」



 その言葉に、ボクは胸のすく思いがした。

 一歩踏み出せなかった背中を、押してもらうのではない。

 むしろ、手を取り合って共に歩んでもらうような安心感があった。



「……そっか」



 だから、その時にようやく受け入れられたのだ。

 ボクは自然と微笑んで、静かに頷く。




 決意は固まった。

 これで迷いなく前に進める、そう思った。


 


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