3.キーンの決意。
あらすじに、書籍の情報を書きましたのでよろしくです。
あと、公式HPより試し読みができます!!
――クレオに、この国の救世主となってほしい。
キーンは自分の部屋に戻り、談話室で聞いた内容を思い返していた。ベッドに横になって、時々に寝返りを打ち、仰向けになってため息をつく。
いったい、アレはどういった意味合いだったのだろう。
比喩か、あるいは――。
「でも、クレオさんなら当たり前だよな……」
いずれにせよ、あの少年なら大きな依頼が舞い込んで然るべきだった。
国のために動いてほしいというのも、すんなりと納得できる。もっともクレオ自身は、その申し出を分不相応なものだと感じているだろうが。
「だとしたら、ホントにクレオさんらしいな」
青年はそう呟いて、くすりと笑った。
だが、すぐに目を細める。そして、額に手の甲を当てて考えるのだ。
「このままで――」
――このままで、本当に自分は納得できるのか。
エルフの集落という狭い世界で得意になって。
この王都にやってきて、クレオという大きな存在に出会った。
少しでも彼の背中に追いつきたいと、そう思って必死に魔法の研究、さらには古代エルフ語の解読に勤しんできた。だが結局、自分はあの少年の足元にも及んでいない。そのままで、本当に自分は彼を見送ることができるのか。
いや、それ以前に……。
「私は、どうしたらいい……?」
誰よりも、彼のことを尊敬している自信があった。
そんな自分には何ができるのか。
キーンは、そう考えて――。
「…………そう、だよな」
小さくそう口にした。
身を起こして、窓の外――王都の街並みを見る。
空には月が浮かび、星々が煌めいていた。
「私はこれからも、彼の傍にいたい」
エルフの青年は、そう口にする。
そのために、自分が何をすべきなのか。
その答えは考えるよりも先に、身体が理解しているようだった。




