一方その頃のファーシード家――ダンくんの憂鬱。
一周年記念短編です!!!!
いつもお読みいただき感謝です!!
『ファーシード家は、取り潰しです!!』
『そ、そんなぁ……!?』
暗闇の中で、王女リリアナはダンにそう言った。
彼は必死になって手を伸ばすが、彼女の背には遠く届かない。そして次に浮かんだのは没落後、自分たち家族がみな雨風に晒されている姿だった。
使用人たちはみなファーシードを去り、残されたのは――。
◆
「うわあああああああああああああああああああああああああああ!?」
――そこで、目が覚めた。
ベッドの上で半身を起こして、ダンは大粒の汗を額に浮かべている。
朝の光が差し込んで、柔らかく身体を温めていた。しかしダンの背筋は凍ったままであり、何だったらさっきから寒気が収まらない。
ひとまず、先ほど見た光景が夢だと理解するまで呼吸は荒かった。
「ふ、ふぅ……」
深呼吸を一つ。
ダンは、ホッと胸を撫でおろした。
そしてベッドから降りて、ひとまず使用人を呼びつける。
「旦那様。いかがなさいましたか?」
「み、水をくれ……」
「かしこまりました」
淡々とした口調で応じてくれる使用人。
あえてなのだろうが、それが今のダンには冷淡に感じられてしまった。
「む……?」
そして、その使用人から受け取った水を飲んでいると。
「おぉ、エスカリーテ。どうしたんだい、こんな朝早くに」
「お父様また、うなされてた?」
娘――すなわちクレオの妹である――のエスカリーテが、扉を少しだけ開けて部屋を覗き込んでいた。ダンにとっては目に入れても痛くない存在である。
当然ながら、彼は相好を崩して彼女を招き入れた。
エスカリーテは母親似だ。
やや癖のある金の髪に、くりくりとした金の瞳。
フリルの多くあしらわれた黒色のドレスを身に纏い、ぬいぐるみを抱きかかえていた。顔の半分をそれで隠しながら小首を傾げる姿に、ダンは完全に骨抜きである。
「大丈夫だよ、エスカリーテ。パパは強いんだ」
「でも、リリアナお姉ちゃんに怒られて泣いてたよね……?」
「……それは、その――演技、だからね?」
てこてことやってきた娘。
彼女に痛いところを突かれて、声を詰まらせたダン。
聡い少女は、そんな父親の機微を感じ取ったようだった。
「お兄ちゃんを追い出したのは、お父様だよね?」
「そうだね」
「それで、怒られてるんだよね?」
「そう、だね……」
「そう考えたら、自業自得だよね?」
「そう……うん……」
「だったら、泣くのっておかしくない?」
「………………」
そして、追いうち。
無慈悲で無遠慮な言葉が、ダンの心を抉っていった。
先ほどの悪夢がリフレインするような感覚に陥って、彼はもう一杯の水を飲む。改めて呼吸を整えて、エスカリーテに向き合った。
「あー、うん。とりあえず、その話は置いておこうか」
「現実から目をそらしたらダメ、だよ?」
「エスカリーテ、厳しくない!?」
さすがに声を上げてしまうダン。
そんな彼に気付いたのか、隣の部屋からある人物がやってきた。
「朝からなに、大声を出しているの? あなた」
「お、おぉ……。おはよう、テレシア」
「えぇ、おはよう」
妻のテレシア・ファーシードである。
若々しい顔立ちをした彼女は、ダンにこう言った。
「とりあえず、図星を突かれて声を上げるのは滑稽よ?」
「四面楚歌ですか!?」
――もうやだ、この家族。
ダンはベッドにうつ伏せになって、軽く泣いた。
すると、そんな彼に向ってテレシアが言う。
「そう言えば先日、リリアナ王女から通達がありまして」
「へ……?」
その瞬間、彼の思考は凍り付いた。
まず『通達』という言葉から連想する。その内容というのは、やはり『取り潰し』以外のものは出てこなくて、すでに半泣き状態になってしまった。
だがすぐに、二人が冷静なことを察して持ち直す。
感情のジェットコースターだった。
「そ、それで……内容は……?」
ひとまず水を飲もう。
必死に冷静を装いながら、ダンは三杯目の水を口にした。その直後、
「クレオの捜索は打ち切り、とのことです」
「ぶふっ……!?」
妻のその一言に、思い切り吹き出す。
「へ、え……? ど、どういうこと?」
「詳しくは聞きませんでした」
「聞こうよ!?」
ダンは思い切りツッコミを入れてから、頭の中を整理した。
クレオの捜索を打ち切る、ということは何を指すのか。それは――。
「………………」
アレ以外に、考えつかなかった。
「あら。気絶しましたね」
「本当だね、お母様」
妻と娘の声も届かない。
こうしてその日、ダンの憂鬱な一日は始まるのだった。
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