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万年2位だからと勘当された少年、無自覚に無双する【WEB版】  作者: あざね
一周年記念短編。

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113/211

一方その頃のファーシード家――ダンくんの憂鬱。

一周年記念短編です!!!!

いつもお読みいただき感謝です!!









『ファーシード家は、取り潰しです!!』

『そ、そんなぁ……!?』



 暗闇の中で、王女リリアナはダンにそう言った。

 彼は必死になって手を伸ばすが、彼女の背には遠く届かない。そして次に浮かんだのは没落後、自分たち家族がみな雨風に晒されている姿だった。

 使用人たちはみなファーシードを去り、残されたのは――。








「うわあああああああああああああああああああああああああああ!?」




 ――そこで、目が覚めた。

 ベッドの上で半身を起こして、ダンは大粒の汗を額に浮かべている。

 朝の光が差し込んで、柔らかく身体を温めていた。しかしダンの背筋は凍ったままであり、何だったらさっきから寒気が収まらない。


 ひとまず、先ほど見た光景が夢だと理解するまで呼吸は荒かった。



「ふ、ふぅ……」



 深呼吸を一つ。

 ダンは、ホッと胸を撫でおろした。

 そしてベッドから降りて、ひとまず使用人を呼びつける。



「旦那様。いかがなさいましたか?」

「み、水をくれ……」

「かしこまりました」



 淡々とした口調で応じてくれる使用人。

 あえてなのだろうが、それが今のダンには冷淡に感じられてしまった。



「む……?」



 そして、その使用人から受け取った水を飲んでいると。



「おぉ、エスカリーテ。どうしたんだい、こんな朝早くに」

「お父様また、うなされてた?」



 娘――すなわちクレオの妹である――のエスカリーテが、扉を少しだけ開けて部屋を覗き込んでいた。ダンにとっては目に入れても痛くない存在である。

 当然ながら、彼は相好を崩して彼女を招き入れた。


 エスカリーテは母親似だ。

 やや癖のある金の髪に、くりくりとした金の瞳。

 フリルの多くあしらわれた黒色のドレスを身に纏い、ぬいぐるみを抱きかかえていた。顔の半分をそれで隠しながら小首を傾げる姿に、ダンは完全に骨抜きである。



「大丈夫だよ、エスカリーテ。パパは強いんだ」

「でも、リリアナお姉ちゃんに怒られて泣いてたよね……?」

「……それは、その――演技、だからね?」



 てこてことやってきた娘。

 彼女に痛いところを突かれて、声を詰まらせたダン。

 聡い少女は、そんな父親の機微を感じ取ったようだった。



「お兄ちゃんを追い出したのは、お父様だよね?」

「そうだね」

「それで、怒られてるんだよね?」

「そう、だね……」

「そう考えたら、自業自得だよね?」

「そう……うん……」

「だったら、泣くのっておかしくない?」

「………………」



 そして、追いうち。

 無慈悲で無遠慮な言葉が、ダンの心を抉っていった。

 先ほどの悪夢がリフレインするような感覚に陥って、彼はもう一杯の水を飲む。改めて呼吸を整えて、エスカリーテに向き合った。



「あー、うん。とりあえず、その話は置いておこうか」

「現実から目をそらしたらダメ、だよ?」

「エスカリーテ、厳しくない!?」



 さすがに声を上げてしまうダン。

 そんな彼に気付いたのか、隣の部屋からある人物がやってきた。



「朝からなに、大声を出しているの? あなた」

「お、おぉ……。おはよう、テレシア」

「えぇ、おはよう」



 妻のテレシア・ファーシードである。

 若々しい顔立ちをした彼女は、ダンにこう言った。



「とりあえず、図星を突かれて声を上げるのは滑稽よ?」

「四面楚歌ですか!?」



 ――もうやだ、この家族。


 ダンはベッドにうつ伏せになって、軽く泣いた。

 すると、そんな彼に向ってテレシアが言う。



「そう言えば先日、リリアナ王女から通達がありまして」

「へ……?」



 その瞬間、彼の思考は凍り付いた。

 まず『通達』という言葉から連想する。その内容というのは、やはり『取り潰し』以外のものは出てこなくて、すでに半泣き状態になってしまった。

 だがすぐに、二人が冷静なことを察して持ち直す。

 感情のジェットコースターだった。



「そ、それで……内容は……?」



 ひとまず水を飲もう。

 必死に冷静を装いながら、ダンは三杯目の水を口にした。その直後、






「クレオの捜索は打ち切り、とのことです」

「ぶふっ……!?」






 妻のその一言に、思い切り吹き出す。



「へ、え……? ど、どういうこと?」

「詳しくは聞きませんでした」

「聞こうよ!?」



 ダンは思い切りツッコミを入れてから、頭の中を整理した。

 クレオの捜索を打ち切る、ということは何を指すのか。それは――。




「………………」




 アレ以外に、考えつかなかった。




「あら。気絶しましたね」

「本当だね、お母様」




 妻と娘の声も届かない。

 こうしてその日、ダンの憂鬱な一日は始まるのだった。



 




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