3.王女襲来。
どどん、と。
ついにリリアナが動きます。ダンは知らん。
「二人――エリオさんとリナが帰ってくるまで、しばらくあるよね。その返事って、いつまでにってのはあるのかな?」
「いや、期限はない。ただ――」
「ただ?」
「発起人さんが、そろそろ辛抱の限界らしくてな」
「………………発起人?」
引き続き、宿の談話室で。
ボクとアルナはそんな話をしていた。
彼の言葉はいったい、どういう意味なのだろう。そういえば、以前に改革が始まった、とか言っていたけれど。彼が発起人というわけではないのだろうか……?
「その発起人さんって、誰なの? ボクも知ってる人?」
「あー、まぁな。たぶん、よく知ってるどころじゃ、ないと思うぜ?」
「え、誰なんだろう」
父さん――では、ないだろうし。
ボクには一人だけ妹がいるけれど、まだ幼いし。そんな発言ができるとは思えなかった。だとすれば、学園時代の誰か、ということになるのだけど。
いや、一人思い当たった。
けれども、その可能性は限りなく薄いようにも思える。
「まさか、さ。アルナ?」
「いや、クレオ。そのまさかで――」
「そうですね。そのまさか、でしょう」
「…………へ?」
そう考えながら、ボクはアルナに笑いかけていたのだが。
その笑みは一瞬にして、引きつったものになった。何故なら宿の入口方向から、幼いころから知っている女の子の声が聞こえたのだから。
ボクは硬直した笑みのまま、その声の方へと目を向けた。
すると、そこに立っていたのは……。
「お久しぶりですね、クレオ」
「リ、リリアナ!?」
この国の王女であり王宮魔法使い。
間違いなく、いまガリアを動かす最前線の人物で幼馴染。
――リリアナ・ガリア・アリテンシア。
民衆に紛れるような装いをした彼女は、ボクを見てにっこりと笑った。
「ど、どうしてここに……」
「どうしても、なにもありませんよ。私は貴方を連れ戻しにきたのです」
「連れ戻すって、どういう……?」
こちらが首を傾げると、リリアナは深いため息。
そして、こう告げるのだった。
「貴方にはこれから、大きな仕事をしてもらいます。そして――」
まるで、それが運命であるかのように。
「いつか、この国の新たな象徴となってください」――と。
あまりに大それた発言に、ボクは思わず呆けてこう繰り返した。
「しょう、ちょう……?」
全然、ピンとこない。
しかし、リリアナの顔は真剣そのものだった。




