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6.アルナとリリアナ。






「――それで? クレオの親父さんは、いまどうなってんだ」

「毎日ヒーヒー言いながら、世界各地の街という街に捜索願を出しています。日に日に頬がこけて、疲弊していく様がなんとも……」

「見ていてスカッとするんだろ?」

「そうですね」


 リリアナは客間で一人の男性騎士と茶を嗜んでいた。

 もっとも、まともに髪の手入れをしていないであろう騎士の方は姿勢悪く、味わうことなくがぶ飲みしているが。王女はそんな相手の性格を知っているからか、咎めることはなかった。淡々と会話を進め、騎士にこんな問いかけを投げる。


「それで、アルナ――騎士団にはもう、慣れましたか?」


 スッと、目を細めて。

 リリアナの言葉を受けた彼――アルナは、ガキ大将のような笑みを浮かべて言った。


「当たり前だ。いまに見てろよ? 俺が、この騎士団を変えてみせる」

「あら、それはまた。大きく出た、という感じですね」


 しかしながら、王女は気にした風もなく。

 自身の分の茶の香りを楽しんでいる様子だった。そんな態度をみせられて、少しばかり不満げな表情になったのはアルナ。

 彼はリリアナに、拗ねたような口調でこう告げた。



「いい加減、俺のプロポーズに返事をくれても良くないか?」――と。



 頬杖をつきながら。

 それを見て、ようやくリリアナはふっと笑みを浮かべた。


「それは、クレオに勝てたら、という約束でしょう?」

「公式戦では俺の勝ちだっての」

「何でもありの真剣勝負では、全敗でしょう?」

「………………」


 そして、同級生のことを軽くいなす。

 アルナはそれに何も言い返せずに、大きくため息をついた。そして、風向きが悪いと踏んだのか、話題を少しばかり変えることにする。


「しかしクレオの親父さんは、本気でアイツの力を見抜けてなかったんだな」

「えぇ、本当に節穴としか言えません。一点特化で目立つことばかりを好んで、それ以外に目を向けない。公爵にしておく価値がありません」

「おいおい、そりゃ……ずいぶんな言い様だな」

「私は事実を口にしているだけ。王女として、気を遣う気はありません」

「こりゃ、俺の家もうかうかしていられないな」


 言いながらも、アルナは余裕のある笑みを浮かべた。

 するとリリアナは彼に、こう訊ねる。


「それで。先ほどの話は受けて下さるのですか、アルナ?」


 それ、というのはクレオの捜索の手伝いであった。

 無能のダンに任せていては、いつになるか分からない。ということで、王女は友人に手助けを求めたのだった。

 友人――アルナは、それを聞いてニヤリと笑う。

 そして、こう言った。


「おうよ、当然」


 何とも端的であり、かつ即断。

 そんな彼の態度を見て、リリアナは一つ訊ねた。


「それは、私との婚姻を目指すため、ですか?」


 クレオを探し出せば、自身の目的に近づくからか、と。

 しかし、アルナはゆっくり首を左右に振ってからこう答えるのだった。


「それだけじゃ、ねぇさ。クレオは剣術において、この俺を本気にさせた――」




 ニッと、少年のような笑みを浮かべ。

 かつて戦った、とある『少女』のことを思い浮かべながら。




「『二人目』だから、な」――と。




 


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短編→連載版です(下の方にリンクがあります)

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― 新着の感想 ―
[一言] なるほど、ここでも一人目(1番)じゃなくて二人目(2番)なのか。面白いですねぇ。
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