7.クラディオの変貌。
「許さん、許さんぞ……!」
クラディオは肩を震わせ、そう何度も口にした。
ボクたちは彼をジッと睨んで動きを見る。その時だった。
「貴様らなぞに、このクラディオは屈したりせぬ! 嫉妬の炎を燃やし続け、ついに至った境地を見せてやる……!」
「クラディオ、なにを――」
「これさえあれば、この老いた身も蘇る! そして、貴様らに負けぬ力を!!」
彼が一つの瓶を取り出し、中に入った液体を飲み干したのは。
こちらの言葉など聞く気もなかったらしい。ニタリと笑みを浮かべた後に、クラディオの身体には異変が起きた。
「お、おぉ、おぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!?」
彼の身体が、黒い靄に包まれる。
そして、それが払われた時に現れたのは――。
「これ、は……!?」
「エリオと同じ、だっていうのか!」
全身が黒化した、魔族になり切れないバケモノ。
エリオさんと同じかとアルナは言ったが、それ以上に禍々しい。身体中の皮膚が爛れ、ところどころから黒い煙が噴き出していた。
口と思しき位置からは、赤い液体を吐き出し続けている。
『きざ、まらには、まげなぃ……!!』
不明瞭な発音で、クラディオだった者はそう言った。
そして次の瞬間に――。
「なっ――!!」
「アルナ、危ない!!」
その言葉よりも先に、クラディオはアルナに肉薄した。
身体と一体化した剣を振り上げて、乱暴に叩きつける――!
「あ、ぶねぇ……!」
寸前で回避したアルナは、後方に飛び退り体勢を整える。
ボクとエリオさんは、動きの止まったクラディオを後方から斬り付けた。
しかし――。
「消えた……!?」
「――っ! エリオさん、左!!」
「な!?」
轟音響き渡り、エリオさんに黒い塊が衝突した。
吹き飛んだ彼女は壁に衝突し、苦悶の声を吐き出す。
「……これは――」
少しばかり、不味いことになった。
ボクはクラディオと向かい合って剣を構えて、そう思う。
未知の存在との対峙。
それは、決して気分の良いものではなかった。




