6.三剣士、結集。
「そうです。リナの意識はまだあります!」
「え、その声は――クレ、オ?」
「はい。リナの傷は深いですけど、急所は外れています! これならボクの治癒魔法でも、助かります!!」
ボクはリナの傷口を確認しながら、エリオさんにそう告げた。
髪飾りを見たから、だろうか。彼女にかけられた融合の呪いは解け始めていた。先ほど外でクリムが言っていた通りだ。
彼女はこう語った。
『そもそも、純粋な魔族というのはあの御方から生まれる者のみ。下賤な人間風情が魔族になれるはずがないのですよ。これはあくまで――』
ニヤリと、口角を歪めて。
『本番前の戯れに過ぎませんわ』――と。
その言葉と共に、彼女は姿を消した。
ボクは結界魔法が解けたのを認めて中に駆け込んできたのだ。
「う、うぅ……!」
「リナ、リナ……!!」
獣人の少女の治療をしていると、元の姿に戻りつつあるエリオさんが彼女の手を取る。そして必死に名前を呼ぶのだ。
リナはうっすらと目を開けて、微笑んだ。
「よかった。貴方は――お姉ちゃんの仇じゃなかったのですね?」
「え……」
そっと手を伸ばして、エリオさんの頬を伝う涙に触れて。
「じゃないと、こんな綺麗な涙は流せないですから」――と。
二つの髪飾りをそっと握らせて。
本当に嬉しそうに、笑う。
「貴方はきっと、お姉ちゃんの大切な――お友達だったんですね」
「リナ……」
「だから、もう泣くのはやめましょう? お姉ちゃんも、それを望んでます」
「うん、うん……!」
「えへへ。ありがとう、エリオさん」
そして、その瞬間だった。
エリオさんの身体を、光が包んだのは。
眩い輝き。それが収まった時、そこにいたのは――。
「なんと、いうことだ……!」
クラディオが声を震わせる。
何故なら、エリオさんはいつもの姿に戻ったのだから。
それはつまり、彼が今まで企んできたことが瓦解した証左だった。
「許さん、許さんぞ……エリオ!」
クラディオは額に手を当てて、怨嗟を口にする。
「二度、いいや三度に渡って親の期待を裏切りおって……!!」
それは、あまりに醜い言葉。
ボクは立ち上がり、剣を掲げて宣言した。
「貴方の期待は、間違っている」――と。
するとそれに頷いたのは、アルナだった。
「その通りだな。親ってのは決して、子供の飼い主じゃねぇ。子供には子供の権利や意思があって、それを尊重して育む役割だ。主人じゃねぇんだよ!」
「なにを……!」
歯ぎしりをするクラディオ。
そんな彼を尻目にボクとアルナは、リナを支えるエリオさんに手を差し伸ばした。そして笑いながらこう言うのだ。
「一緒に戦おう、エリオさん!」
「ずいぶんと時間がかかっちまったな、エリオ!」
その光景を目の当たりにした彼女は一瞬呆ける。
だが――。
「エリオさん、行ってきてください」
「リナ……」
少女の笑顔に後押しを受けて、頷いた。
立ち上がり、再び剣を取る――!
「すまない、二人とも。――ずいぶんと遅くなった!」
そして、いつもの凛とした表情になりそう叫んだ。
ボクたちは剣を合わせて、団結を誓う。
「行くぞ、クラディオ……!」
きっとこれが、両家の禍根と因縁を巡る最後の戦いだった。




