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万年2位だからと勘当された少年、無自覚に無双する【WEB版】  作者: あざね
第21章

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5.錯乱するエリオと、一筋の光。

ちょっと駆け足かな。

あとで修正を入れると思います。







 あの時の感触は、今でも覚えている。

 少女の柔らかい身体に、自身の手にした刃が食い込み貫いた。

 肉を断つ生々しい感触と流れる血。アタシはそれを見ないふりをした。



「ア、アァァァ……」



 それなのに、どうして。

 今この場においても、同じ光景を見ているのだろう。



「嬢ちゃん、大丈夫か!?」



 仇敵である男が、獣人の少女に声をかけていた。

 溢れる血を必死に止めている。それを見て、アタシは――。



「セ、ナ……」



 頬に涙が伝うのを感じながら、ある日のことを思い出した。







「えっと、その。セナの妹なら、アタシにとっても妹みたいなものだな、って」

「…………え?」



 ある日のことだった。

 アタシの髪を結ったセナに、そう冗談を言ったことがある。彼女の妹の話を聞いて、アタシもまたその中に入ってみたいと本気で思った。

 だから、思わずそんな言葉が口から出たのだ。



「あはは! 私に髪を結われてる間は、エリオさまが妹ですよ!」

「そ、そんなことはないだろう!?」



 しかし、返ってきたのは無邪気な否定の言葉。

 アタシは少しだけショックを受けながら、セナにそう言い返した。だけど彼女はずっと笑い続けて、こちらの抗議を聞く様子はない。

 こうなっては仕方ない。


 そう思って、不貞腐れようと考えた時だった。




「でも。もし、本当に家族になれたのなら――」

「え……?」




 セナが、どこか寂しげな声でそう言葉をこぼしたのは。

 どういう意味なのか、それを問おうとした。

 するとそれより先に――。



「ねぇ、エリオさま?」



 少女が、こう口にした。



「私に何かあったら、妹のことをお願いして良いですか?」

「え、それってどういう?」

「あの子はまだまだ幼くて、意地っ張りで、ワガママですけど。エリオさまと一緒なら、きっと幸せになれると思うんです。だから――」

「セナ……?」



 涙を堪えるような、そんな声で。




「妹を、リナを――よろしくお願いいたします」




 アタシのことを後ろから抱きしめながら。

 セナは、そう想いを託したのだった。








 それを、今になって思い出した。

 大切な女の子との、かけがえのない約束を。



「セ、な……」



 アタシは剣を取り落とした。

 カランという乾いた音がして、足元に転がる。

 ふと、その方向へと目をやると、そこにあったのは――。



「――――――!!」



 リナの手から零れ落ちた、二つの簪。

 間違いない。アレは、セナとの思い出の品だった。



「ア、あぁ、あぁぁぁ……!」



 膝から力が抜ける。

 涙が止まらない。簪に手を伸ばし、拾い上げる。

 街の露店で買った、小さな飾りのついた安物だけど、かけがえのない宝物。



 他でもない、アタシとセナの絆。




「アタ、しは……!」




 それなのに――!




「アァァァァァァァァァァァァァァ!?」




 アタシは、また繰り返した!

 大切な約束だったのに、また……!




「もう、イヤだぁ……! こんなの、イヤだよぅ……!!」




 涙が止まらない。

 どうしたら良いのか、まるで分からない。

 アタシはもう、どうしたら――。






「大丈夫ですよ、エリオさん……」






 その時だった。

 目の前の少女の口から、そう声が聞こえたのは……。




 


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