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万年2位だからと勘当された少年、無自覚に無双する【WEB版】  作者: あざね
第21章

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4.壊れ行くモノ。

なんと本日2回目の更新。

新作もよろしくです。あとがきの下から飛べます。







「くはははははははは! 無様! なんとも無様!! さすがのクレファスも、儂の作り出した最高傑作――魔族と融合した剣士には歯が立たぬか!!」

「く、そ……!」

「アルナさん!!」



 クラディオの哄笑が響く。

 アルナは、剣を支えにしてどうにか立っていた。

 眼前には黒化――クラディオ曰く、魔族と融合したエリオがいる。だらりと腕を垂らし、剣を構えることはない。いまの彼女の振るう剣に、型などない。


 あるのは一つ、凶暴性。

 人間の限界を超えた動き、力によって繰り出される斬撃は、連戦を重ねるアルナの体力を明らかに削っていた。加えて少年騎士は手負いだ。

 クラディオもそれを知っている。

 知った上で、アルナが苦しむことに愉悦感を抱いているのだ。



「嬢ちゃんは、さがってろ。近づくと危険だ」

「でも、このままだとアルナさんが……!」



 リナの叫びに、肩で呼吸しながら答えるアルナ。

 酸欠に陥っているためか、彼の視界はいま霞んでいた。それでも逃げることはできない。――否、逃げるわけにはいかなかった。

 この勝負は彼にとっても、特別なものだったから。



「なぁ、エリオ……? お前、本当に苦しかったんだな」

「………………」



 その気持ちが、口を突いて出る。



「訳も分からずに辺境に飛ばされて、そこで何があったかは知らないが。こんな滅茶苦茶になるまで精神をすり減らして、さ」



 剣の柄を握りしめる。



「ずっと、我慢してたんだろ? ずっと、後悔してたんだろ? ――本当に、苦しかったよな。悲しかったよな。不安、だったよな……」



 アルナは剣を構えた。

 そして小さく、少年らしい笑みを浮かべる。



「だから、もう終わりにしようぜ。ここで……!」



 その瞬間だ。

 アルナは一足飛びにエリオへ斬りかかった。

 まさに瞬く間に。誰も目では追い切れない速度で、彼女に肉薄した。


 しかし――。



「ア、アァァァァァ!?」

「がっ!?」



 その動きすら読んでいたかのように。

 エリオは乱暴にアルナの身体を薙ぎ払った。幸いその一撃を剣で受け止めたため、少年は強か床に身体を打ち付けるだけに済んだ。それでも、相当なダメージにはなったが。アルナはふらつきながらも立ち上がり、ゆっくりと剣を構え直した。



「本当に、本当に……」



 そして、うわ言のように何かを口にする。

 あまりに小さな声は、音になる前に空気の中に溶けていった。




「エリオよ、いつまで遊んでいる?」

「………………」




 そんな二人の戦いに口を挟む者があった。

 言うまでもなく、その人物とはクラディオ・リーディン。

 彼は自ら攻め込まない娘を見て、あからさまな怒りを込めて言った。



「積年の恨み、ついに果たす時だぞ。手早く済ませろ!」



 無慈悲に、殺せ――と。


 その言葉に肩を弾ませるエリオ。

 彼女は頭を抱え込んで唸った後に、剣を構えた。そして――。



「ア、アァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!」




 絶叫しながら、棒立ちのアルナに迫った。









「エリオさん!!」








 だが、その時だ。

 ついに堪え切れなくなったリナが――。




「嬢ちゃん!?」




 二人の間に、身を投げ出した。

 そしてエリオの剣は――。









「破滅する……?」

「えぇ、そうです」



 ボクの問いかけに、クリムはくすりと笑いながら頷いた。

 そして愉快極まりないといった風に、こう続ける。



「あの人間は破綻していますから。魔族である私から見ても、醜悪でおぞましい。されど同時に、己の感情をコントロールできない幼稚さがある」

「…………」

「ですから、御し切れない力を手にしたら――崩壊しますわ」



 そう言って、視線を屋敷の方へと投げた。




「そろそろ、動きがありそうですね」

「貴方は――」

「なんでしょうか?」




 そして、話を進めようとする。

 だがボクはそんな彼女に、こう問いかけた。




「貴方は、誰の味方なんですか?」――と。




 すると、一瞬だけ真顔になってから。

 クリムは意地の悪い笑みを浮かべ、こう答えるのだった。




「私は人間の味方などしませんわ。私の真の主は――」




 静かに、ただ静かに。




「愚かな人間によって闇に呑まれた、あの方のみ」――と。




 


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