3.クレオの怒り。
あとがきもよろしくです。
新作情報がありますので、そちらも応援いただけますと幸いです。
「嫉妬心を持つのは、人間なら誰にでもある。でも、それを誰か他の人に向けるのは筋違いだ。ましてやエリオさんみたいに、無関係な人を巻き込むことも……!」
「ほほう、ずいぶんと弁が立つな」
クラディオは余裕綽々といった雰囲気で言う。
ボクはその悪びれない態度に対して、さらに怒りを抱いた。それでも最大限に冷静を装って、こう続ける。
「貴方がやっているのは、八つ当たりだ。一族の禍根だとか、因縁だとか、そんなのは言い訳に過ぎない。要するにそれは――」
遠慮などない。
「これはすべて、貴方の子供じみたワガママが引き起こした事態。リーディンが取り潰しになった原因もなにもかも――すべてが、貴方にある」
「………………」
ボクは、クラディオにそう告げた。
すると彼は押し黙り、口角を軽く震わせる。そして――。
「ほざくなよ、若造が……!」
ついには語気を強めて、そう毒を吐いた。
どうやら化けの皮が剥がれたらしい。大物然としていた態度の奥には、隠しきれない醜態があった。外道も外道。自らの行い、思想を正当化してきた男の姿。
そして、それを全否定された故の憤怒。
クラディオ・リーディン。
かつて貴族であったという誇り、栄光に固執し、執着し続けた男の末路。それはあまりにも無残だと、そう思った。
「クリム……! クリムはいるか!!」
そんな彼は、ついに怒りを隠すことなく魔族の女を呼ぶ。
すると音もなく、彼の背後にクリムが現れた。
「いかがなさいましたか? 我が主」
「そこの生意気な小僧を摘まみ出せ! 不愉快だ!!」
「分かりました。それでは――」
そして、そう命じる。
直後にクリムは、ボクたちの目の前に移動していた。
おそらくは転移魔法、その上位互換。魔力の反応も微々たるもので、とっさに回避することはできなかった。
「貴方は、こちらに来てもらいますよ?」
「なっ……!?」
クリムに腕を掴まれて、ボクは――。
「クレオ!」
「アルナ、リナ! すぐに戻るから!!」
屋敷の外へと連れ出された。
◆
「悪くは思わないで下さいね? 一応、命令なもので」
「………………」
屋敷の外で、クリムはボクにそう言った。
黙っていると彼女は静かに、ひとつため息をつく。
「本当に、主様は困った方です」
肩をすくめてそう言ったクリムは、しかしすぐに笑うのだ。
「でも、その憂いも今日で終わりますから」
「……ん? それって、どういう意味だ」
「言葉のままですよ。私の見立てでは、主様は――」
心の底から、愉快そうに。
まるで主を主と、微塵も思わない口ぶりで。
「今日、この戦いで破滅いたします」――と。
◆
「さぁ、邪魔者がいなくなったところで。本日のメインイベントを始めるとするか。――出てこい、儂の作り上げた最高の剣士よ」
クレオが去った直後。
クラディオはそう言って指を鳴らした。すると現れたのは――。
「…………くっ!」
「エリオ、さん……!」
アルナとリナは、息を呑む。
どこから飛び出したのか分からないエリオが、シャンデリアの上に着地した。激しい音を立てて、完全に崩壊するそれを気にもせず、彼女は獣のような呼吸をする。
そして、こう口にした。
「ニ、ゲテ……!」
黒化した全身。
血の涙を零しながら。
「コンナ、ノ、イヤダ……ニ、ゲテ……!」
「エリオ……」
必死に訴えかける彼女を見て。
しかし、アルナは静かに剣を構えた。そして――。
「大丈夫だ、エリオ。お前は俺が――」
まるで、親友と再会したかのような笑みを浮かべて。
「助けてやるから」
そう、優しい声で告げるのだった。
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