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万年2位だからと勘当された少年、無自覚に無双する【WEB版】  作者: あざね
第21章

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2.対峙。

新作もよろしくです。








 魔力をたどった先にあったのは、古ぼけた一軒の屋敷。

 庭先の手入れなど微塵もされていない様子で、外壁や窓は魔物に破壊されたのだろうか。どこも綺麗な場所など見受けられなかった。

 それでいて、日陰に建てられていることもあって暗い。

 おおよそ人が住むために作ったのではない。

 そう、思わされた。



「正面から、入るしかないか。二人とも気を付けて?」

「はい……!」

「分かってるさ」



 ボクが声をかけると、リナとアルナは頷く。

 それを確認してからゆっくりと、正面玄関の扉を開いた。



「これは……」



 するとまず、目に入ったのは大きなシャンデリア。

 床に落ちたそれは、無残に壊れていた。ガラス片や、それ以外にも瓦礫などが散乱しており、さながら迷宮のようになっている。奥もまともに見通せない。

 最大限の警戒をした上で、ボクたちは中に入った。すると――。



「な、扉が……!?」



 その瞬間、玄関扉が勢いよく閉じた。

 リナが慌てて開けようとする。しかし、なにか不思議な力が働いているらしい。それはビクともしなかった。

 そしてそれは、その扉だけではない。

 魔力をたどってみると分かった。



「これは、完全に閉じ込められた……か?」

「うん。結界魔法が張られてる」



 アルナもそれに気付いたらしい。

 ボクは彼の言葉に首肯し、周囲を確認した。

 割れた窓からも、分厚い魔力とでもいうのだろうか、とかく一筋縄ではいかないと思われる壁があるように感じられる。


 警戒していたはずだった。

 先ほどまで、微塵も魔法の発動を感じ取れなかった。それにもかかわらず、このような強力な魔法を一瞬にして成立させたのだ。

 おおよそ、その犯人は分かっているが――。



「ようこそだな、客人たちよ」



 いまは、それどころではなさそうだ。

 声に反応して前を見ると、エントランスの奥に一人の男性がいた。

 名前を聞かなくても分かる。きっと、彼が――。



「クラディオ……!」



 アルナが、怒りを孕んだ声でその名前を口にした。

 するとその男性――クラディオ・リーディンは、口角を歪めて答える。



「おやおや。誰かと思えば、クレファス家のご子息ではないか。何年振りだろうかな、元気にしておったか?」

「白々しい対応はやめやがれ。エリオはどこだ……!」

「アルナ、落ち着いてっ!」



 煽るような口調に、思わず前に出そうになるアルナ。

 そんな彼を落ち着けるように制してから、ボクはクラディオに言った。



「まずは、聞かせてください。どうして――」

「どうして、このようなことをしておるのか――か?」

「………………」



 すると相手は言葉を遮って、そう目を細めて口にする。

 ボクが黙ると、クラディオはニヤリと笑った。



「簡単な問いよな。そのようなもの、とっくに結論は出ているだろう?」



 そして、そう前置きをして一言でまとめる。

 悪事に手を染めて、魔族との契約にまで手を出した理由。それは――。





「嫉妬だ」――と。





 なんの迷いもなく。

 恥ずかしむこともなく、クラディオは自身の感情に名前を付けた。



「嫉妬、だと……?」

「……アルナ」

「てめぇの詰まらない感情に、エリオを巻き込んだってのか! しかも、それを悪びれることもなしに、堂々と!!」



 少年騎士は感情を爆発させる。

 彼にとっては、許されることではなかった。

 醜いと思える感情によって、何人もの人生が狂ったのだから。



「悪びれる……? 面白いことをほざきおる」

「なっ……!?」



 しかし、対してクラディオは怯むことなく言った。



「なぜ、悪びれる必要がある? なぜ、嫉妬を否定する? ――お前たちも感じたことはあるだろう。どうしても勝てない相手、届かない星に手を伸ばして努力を重ね、それでもなお至ることのできない屈辱の感情を。クレファスの子息よ、お主もよく分かっておるはずだ」

「そ、それは……!」



 するとアルナが、口ごもる。

 そんな少年を見て、相手はまた笑った。



「受け入れるのだよ。嫉妬とはすなわち、力に他ならない。シンデリウス家の若造は憎悪を力としておったかな。それと同じく、感情とは力になるのだ」



 愉悦に浸るように。

 その笑い声に、ボクは――。



「だからこそ、こちらは――」

「ふざけるな」

「……ほう?」

「クレオ……?」




 我慢できず、そう口にしていた。



 


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