1.道中での決意。
「アルナ、身体は大丈夫なの?」
「心配いらねぇさ。薬が出来上がるのを待ってる暇はないだろ」
「でも――」
「でも、じゃねぇよ。ここまできて、今さら引き返せって言うのか?」
「………………」
ボクとアルナ、そしてリナの三人は王都の外れを歩いていた。
エリオさんが残していった膨大な魔力の痕跡。それを手掛かりにして、ひたすらに進んできたのだ。キーンやマキ、そしてマリンには王都で待機してもらっている。
ボクたちの帰りが遅かった場合に、動ける人がいてほしい。そう思ってのことだったのだけど、今さらになって不安が顔を覗かせてきた。
それというのも、アルナの存在だ。
彼には残るよう伝えたのだけど、頑として聞き入れなかった。
ケガと呪いを背負ったままの身体では、無理はできない。そう考えたけれど、アルナは納得しなかった。
「まぁ、ワガママだってのは分かってる。でも――」
そう、今回の問題。
彼にとっては、
「クレファスとリーディン、両家の問題で俺が出張らないわけにはいかない。それにこれは家のケジメでもあり、俺のケジメでもあるんだ」
「アルナ……」
家のこと以上に、大きな意味を持っているのだ。
かつての対決で競い合った、実力を認めた相手――エリオさん。そんな彼女が苦しんでいるのを、放っておける性格でないことは知っていた。
そして、その苦痛の発端に関係しているとすれば尚更。
アルナはぶっきら棒な印象を受けるけど、本当は心優しい人物なのだから。
「無茶は、しないでね?」
「分かってるさ。精々、足を引っ張らないようにするさ」
だから、これ以上は何も言えなかった。
こちらの気持ちを理解しているのか、彼は小さく笑みを浮かべる。そして、少し後ろへ視線を投げるのだった。
そこにいたのは、リナだ。
彼女もまた、エリオさんの身を案じる一人。
手には髪飾りを握りしめて、緊張した面持ちで歩いていた。
「なぁ、嬢ちゃん?」
「え、あ……はい」
そんなリナに、アルナは声をかける。
唐突に声をかけられたことに驚きつつ、リナは小さく答えた。すると少年騎士はニッと笑って、こう口にする。
「心配すんな。俺とクレオが、必ずあのバカと話をさせてやるからさ」――と。
リナのことを、気遣うように。
茶化すような笑みを浮かべながら、彼は冗談交じりに言うのだ。
「……はいっ!」
「嬢ちゃんは信じて待っていればいい。笑って、アイツを――エリオのことを迎えてやってくれ」
「分かりました……!」
アルナの言葉に、リナは緊張しながらも笑みを浮かべる。
そんな二人の姿を見て、ボクは思った。
エリオさんは決して、孤独ではない。
彼女のことを待っている人は、間違いなくここにいる、と。
「…………」
だから、ボクは改めて決意を固めた。
必ず救い出す、と。
そして、みんなが笑顔で手を取り合えるように――と。
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