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抑、唯の一般ピーポーだった筈の僕が何故こんな誘拐がましい事を体験しなくてはならないのか。ハッキリとは自分でも解っていないが、何となく解る。
僕は、お父さんとお母さんが殺される所を目撃した。別に唯其れだけならこんな所に連れてこられる理由も無いし、寧ろ自分は殺されなくて済んだのだから褒めてもらっても良いくらいだ。多分悪いのは其の後の事だ。殺人犯が誰かは解らなかったけど、そいつは両親を殺すと直ぐに家から出て行ってしまった。僕は犯人が家から出ると同時にお父さんとお母さんの所へ走り拠った。まだ生きているかもしれない、まだ助かるかもしれない──。そこで僕は見てはいけないモノを見てしまった。お父さんのお腹には刃渡り20センチ位の包丁が刺さっていて、そこから真っ赤な血が溢れ出ていた。お母さんも同じ様に背中からドクドクと血が流れていた。僕は之を見た時に何か違和感を感じた。30秒程考えた後、僕は違和感の正体を見つけた。血が赤いんだ。最近学校でやった理科の授業の時間では、「ヒトの血は黒いと」先生が言っていた。空気中の炭素を二酸化炭素と共に吸うことで血が少しずつ黒くなるんだとか…。ちゃんと授業を聞いていれば良かった。そこで僕は或る事に思い当たった。この前見たNEWSの事だ。確か、「この世界には、自我を持った人造人間が紛れ込んでいる」といっていた筈だ。そうか、おとうさん達は人造人間だったのか。と、僕はその時何故かすんなりと納得してしまった。平凡な大学を出て、平凡な生活を送っている筈なのに、無駄に多い知識量だったり異常に高い身体能力だったり、偶に「お母さん達本当に人間?」「人間に決まってるじゃないの〜」なんて会話をした事もある。きっと其の時は誤魔化したんだろう。バレたら拙いからな。そんな事を考えながら、ロボットならば死なないだろう、と考え僕は取り敢えず病院と警察に通報をした。救急車が逸早く駆け付け、お父さんとお母さんを乗せていった。其の後警察が来て事情聴取の為に僕を警察署に連れて行った。僕に其の後からの記憶が無い。多分そこで警察署ではなくここに連れて来たのだろう。僕の記憶を消し去る為に。この世界に人造人間が居る事くらい、警察ならとっくに知ってるだろう。でもそれを知られては拙い。まあ多分そういう事だと思う。
それにしても何時まで僕は此処にいればいいんだろ。本当に此処には誰も居ないのかな…。そうだ、思い切って声を掛けてみるのはどうかな。いや、でも近くには誰もいなくて外で監視でもして居たら如何しよう。変な奴だなって思われるかな。いや、それ以前に誰にというわけでもなく喋り続けているんだ。僕はもう十分な変人だ。よし、思い切って声を掛けてみよう。
「あの──」