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オプション仕様


お城から帰ってきたお姉様は、少し疲れているように見えた。

馬車からはまずダニエル様が降り、次にハロルド殿下、そしてハロルド殿下にエスコートされてお姉様が降りてきた。

ハロルド殿下はいつもにこにこしていて、お優しいと評判だ。ハロルド殿下に見初められることを夢見る令嬢がたくさんいる。友人も皆、無理かもと言いながらも憧れていた。偶然出会うことを目指してお城に通う子だっている。

その後ろに立つダニエル様は、無愛想でいつも怖い顔をしている。ハロルド殿下の側近兼護衛で、かなり優秀らしい。こちらもそれなりに人気がある…らしい。友人が噂していた。

ふいにダニエル様と目があって、お母様の陰に引っ込んだ。

私、あの人は嫌いだわ。

ハロルド殿下はお父様とお母様とお話したあと、私にも挨拶してくれた。さすがにお母様のドレスから手を離して挨拶を返した。


お姉様はハロルド殿下達を見送った後、夕食までにドレスを着替えて休憩すると言って自室にこもった。夕食の時には今日はどうだったかと両親に質問攻めにされていて少し可哀想だった。



「お姉様…宜しいですか?」


「どうぞ」


エマと一緒に部屋を訪ねると、お姉様は身支度を終えた姿で迎え入れてくれた。

私も既に身支度は終わらせていたので、ベッドにお姉様と二人で座った。


「どうしたの?シャル」


私が自分から訪ねたのに何にも話さないものだから、優しく微笑みながら聞いてくれる。そんな優しいお姉様が好きだ。だけど、同時に変だとも思う。

何故ならお姉様は本当は悪役令嬢なんですもの。大人しくしてるはずがない。悪戯のひとつでもやってきたに違いない。


「お城はどうでした?」



あらすじしか覚えていないけど、この世界は間違いなく乙女ゲーム『薔薇の王子様~ローズ学園物語~』を模している。いや、今の私はここで生きているから模しているというと変かな。乙女ゲームの世界に入っている?またはこのようなパラレルワールドがあると知ってる人があのゲームを作った?時間軸が乙女ゲーム本編の前だからイマイチわからないが、まあとにかく似ていた。

お姉様が今日行ってきたお城の絵を背景に、タイプの違うイケメンが並び微笑んでいるパッケージを見たことがある。その中心にいたのが今より幼さが抜けかっこよくなったハロルド殿下だ。

お姉様は確か裏面に小さく紹介されてた気がする。


「シャルね、お母様のところに来る前はニホンってところにいたんだよ。ゲームでね、お姉様を見たことあるの!」


喋り始めた頃そんなことを言っていたらしい。幼児の戯言だと受け取った両親は幼少期の思い出として、大きくなった私にそれを教えてくれたが、その時の衝撃は凄かった。

雷が落ちたんじゃないかと思った。

そんなこと言ったかしら、なんて平静を装ったまま話を流し、自室に一人になってから叫んだ。


「どうして忘れてたのかしら!」


枕に顔を埋めて叫び、そしてベッドの上でバタバタと暴れた。

こうでもしなきゃ、やってられませんよ。今ね、私は心のなかでは【ガッデム!くそやろう!なんで忘れてたんだ!】と思い出した言葉で口汚く罵った訳です。するとどうでしょう。口から出た言葉はお綺麗に変換されているではありませんか。

記憶が少し戻ったところで、私がシャーロットであることには変わりはないからかな。じゃあこの性格も何も変わらないのか。確かに以前も子供っぽい性格ではあったが、この精神年齢で暫く過ごさなくてはならないのか。

そのことを悔しく思うと、途端に涙が出てきた。涙腺まで壊れている。


「シャル、もっと賢い筈なのに…!」

【私もっと大人な筈なのに】


なんで、私、がシャル、になるんだ!

一人称が名前で許されるのは5歳までだろう。翻訳機能壊れてるのかよ!

ちらりと顔をあげて姿見鏡を見ると、天使のような幼女がベッドの上で泣いている。

うーん、可愛いから、許す!

涙を拭いながら起き上がって鏡に近付くとまじまじと自分を見つめた。ピンクがかったふわふわのブロンズヘアに、左右で色の違う瞳、まんまるで大きな二重の目に、透き通った肌、スッと通った鼻筋に、ピンク色の唇。


「シャル、お姫様みたーい」

【まるで天使だ】


感情がすぐに顔と言葉に出るらしい。天使のようだと喜ぶと、鏡の中の幼女はにこにことそれはそれは可愛らしく微笑んだ。

色々と機能が壊れているようだが、容姿だけは抜群に良かった。

記憶が鮮明に戻った訳ではないし、暫くはこの容姿と公爵家の娘であることを楽しもうと思う。


そうして、考えたことがうまく伝達されない体にイライラしながらも、楽勝お姫様ライフを楽しんでいた。可愛い洋服、まあまあ美味しいお菓子、はじめて見る物語や小説、なんでも与えてくれる両親。メイドもいて、いくらだらけても太らないし、化粧しなくても透き通った肌と可愛い顔。すべてを手に入れた気分だった。

でもそんな私にもどうにもできない目の上の瘤があった。──イザベラお姉様だ。


何故か、真似したくなる。姿を追いかけてしまう。小学生くらいの姉妹ってこんな感じだよなあ、と内心諦めながら本能に付き従った。変に抗っても精神的に疲れるので、童心に返り楽しむことにした。

お姉様は私が後ろをチョロチョロついて回ると嫌がった。着ているドレスを真似していると、私のクローゼットの中身を全部めちゃめちゃに汚された。それでも懲りずに真似するものだから、お姉様は「シャーロットはピンク色のドレスが髪の色とよく似合うわね」と別の角度から攻めてきた。

それでここ最近ずっとピンク色を着ている。確かにストロベリーブロンズの髪とよく似合っていて、可愛いから満足している。ちょろすぎて自分自身がちょっと心配だ。


そんなこんなで、追いかけ、真似をしては突き放され、悪戯の罪を被せられ、時に優しく騙されて、我儘放題をして、まあなんと立派な悪役令嬢その2が出来上がりました。

男嫌いはお姉様より酷く、お茶会は好きだったが男の子がいるお茶会には出席しなかった。お姉様同様に察知能力が高く、どこかへ連れていかれる気配を感じては逃げ出していた。

だって怖いんだよなあ、絶対モテるでしょ。そういうの馴れてないから、すぐ騙されちゃいそうだ。小学生くらいの男の子って乱暴なイメージがあるし嫌い。可愛い女の子達とわいわいしてるのが楽しい。



ところがお姉様は、ある日寝込んでからそれ以降、人が変わったように大人しくなられた。

単純にお姉様が優しくなったことに喜んだが、いつもの演技ではないようで、一向に元に戻る様子がなく不思議だった。

お城でも普通にダンスの練習をして帰ってきただけらしい。お城は広くて一人だと迷いそうだったわ、なんて、普通の感想過ぎて逆に目玉が飛び出る。

悪戯してないのかよ。迷いそうで悪戯やめる?いや行動力1000%みたいなお姉様がそんなわけない。私に自慢気にこんなことをしてきたと話すまでが1セットだと思う。ハロルド殿下のことだって避けてたのに、普通にダンスしてきたって、あり得ない。私にも話せないだけなのかな。


「でもお姉様はハロルド殿下と結婚したらお城に住むんでしょ?そしたら大変ですね」


「シャル…あのね、お父様もお母様もルージュ達も勘違いしているわ。ハロルド殿下はセントフォード公爵家に義理を通して下さっているのよ」


「義理…ですか」


ハロルド殿下は確かにお優しいけど、義理だけなら私に乗り換えてもおかしくない。私の方が断然可愛い。それを無視しているんだ。年齢だけの話ではなく、完全にお姉様にロックオンしているとしか思えない。お父様とお母様の反応を見るに、既に周囲は着々と固められている。お姉様ったら、勘は鋭かったのに。本当にどうしちゃったのかしら。この感じだと本当に何にもしないで普通にダンスしてきただけ? 義理と言いながらもハロルド殿下と良い感じなのかな。

確かゲームでは学園にいるとき二人は既に婚約していたから、順当ではあるけど。


「そうだわ、そのうちチャールズ殿下がシャルをお誘いにくるかもね」


「シャルは夜会には行きません!」

【やめろ!冗談でもそんなこと言わないで!】


「私と違ってシャルは可愛いから、チャールズ殿下に見初められるかもしれないわよ。それこそ物語の主人公みたいに」


「お姉様も可愛いですよ!それにシャルは男の人は嫌いです。あれは空想だから良いんです」

【私が可愛いのは分かってるけど、チャールズ殿下はダメだ】


私は甘やかされて生きていたいんだ。王族なんて面倒くさすぎる。それにチャールズ殿下と婚約なんかしたら、まさしくゲームと一緒じゃないか!


はっとした。そうだ、ゲームと一緒だ!


確か主人公がローズ学園に入学したとき、1つ上の学年にハロルド殿下とその婚約者の悪役イザベラがいて、同じ学年にはチャールズ殿下とその婚約者としてシャーロットがいた。どのルートを選んでも何故かイザベラが邪魔してくるが、重婚はできないから、イザベラがハロルド殿下の婚約者というポジションは変わらない。チャールズ殿下ルートのライバルとしてシャーロットが宛がわれているのだろう。

今年で、ハロルド殿下とお姉様が13歳、チャールズ殿下は12歳、主人公も12歳なので同じ学年なのは理解できるが、私は11歳になった年だ。今のところお勉強ができる訳ではないし幼く見えるこんな成だし、ゲーム通りにはいかないこともあるのかもしれない。その方が助かる。


「そうかしら」


「そうですよ」


うんうんと頷く。

乙女ゲームなんて空想だ。顔も良くて地位もあって性格も良い男がその辺にごろごろいて都合良く自分のことを好きになってくれるかよ。そもそも主人公みたいな可愛くて性格も良い人なら現実世界でもモテモテだわ。悪役だって容姿はいいんだから、性格悪くてもモテる。問題なのは容姿も性格もだめなやつ。前の私みたいな。

そんな人がモテモテ気分を味わうための空想が乙女ゲームなの。現実にそんな人達はいません!


「お姉様がハロルド殿下とうまくいってくれたら、シャルは安心してセントフォード公爵家に残れますから、頑張ってください!応援しています」

【何にせよ、お姉様がいなければ私がセントフォードを継ぐしかなくて、我儘放題!やったー!】


「シャルまでそんな意地悪言うのね…」


「お姉様だってさっきシャルに意地悪言いました」


「あら、ごめんなさい。じゃあこの話は終わりましょう」


最近読んだ本の話をして、暫くしてから部屋に戻って寝た。

お姉様の話を聞いていたら、うとうとしてしまって、もう寝なさいと言われたからだ。このままここで寝かせてくれたらいいのに。仕方ないから、エマに運んでもらった。完全に脱力している私を運ぶのは重そうだった。

ごめんね。いくら小柄だからって、そろそろ抱っこは限界かしら。でも抱っこされるの好きなんだもん。だから、ぎゅっと掴んで手伝ってあげるね。




数日前の謝罪の気持ちなんて、寝たら忘れた。

今日もメイドに抱えてもらい、お庭に連れてきてもらう。最近お庭で黒猫を見かけるからだ。


「エマっ」


「はい、お嬢様」


そこ、と指差せば下ろしてくれる。エマは本当に良い子だ。子爵の娘で今年で14歳になった。本当は学園に通う年だから去年でお仕事は終える筈だったのを駄々をこねて残ってもらった。私と一緒の年に入学したらいいのに。

辺りをそーっと探して回ると、暫くして茂みの奥に尻尾を見つけた。


「ネコチャン!」


ひゃわわ~やっと捕まえた!どこから来てるんだ、こいつめ可愛いなあ。

少し暴れられたががっちりと抱え込む。私はネコ派だ。本当はちゃんとゆっくり新密度を上げたかったけれど、仕方ない。逃げ足がとにかく早くって、ようやく掴まえられたのだ。

それにこの世界では動物を飼う習慣がないようで、もふもふに飢えていた。馬がいるから試しに触らせてもらったけど、やっぱり違うんだよね。これだよこれ。やっぱり猫はたまりませんなあ。

顎や頭を優しく撫でてやると、抵抗しなくなる。気持ち良さそうなとろんとした目が大好きだ。

膝に乗せても嫌がらない。お腹に顔を埋めると猫の匂いがした。ひとしきり堪能してから顔をあげる。


「この匂い、好き」


黒猫ちゃんは驚いたのかビンッと固まって目を開いていたので、再び撫でてやるとまた目がとろーんとなった。

そろそろ鳴くかな?と思って撫で続けたが喉をゴロゴロもしないし一声も鳴かなかった。どこか怪我してるのかな?

エマに見てもらおうかと抱き上げると、するんと抜け出て飛び降りた。


「あ!逃げちゃった」


もっと仲良くなりたかったのに!

駆けていって暫くして、私が追いかけてこないのを振り返って確認していた。ばいばい、と手を振ると、ふいっとまた駆けていった。

つれないところも可愛いなあ。また会えるといいんだけど。

それ以降、黒猫ちゃんを見かけることはあっても、つかまえることは出来なかった。猫じゃらしやお魚も完全に無視だ。警戒されているみたいだった。もうちょっと慎重に行くんだった…!



今日こそはと、お父様に無理を言って取り寄せたマタタビの実を持ってきたのに、黒猫ちゃんには会えなかった。くまなくお庭を探してもどこにもいなかった。

マタタビの実は匂いを嗅いでみると変な匂いがした。ペット用に売ってた私の知ってるものとは少し違うと思った。梅みたいに漬けてお酒に出来るらしい。何に使うんだとお父様に不思議に思われた。

試しに舐めてみたら、ピリッとした。


「お嬢様、イザベラお嬢様がお戻りになられました」


「はーい」


エマに呼ばれたので、そのまま玄関に向かう。土曜日のお昼はお姉様を家族みんなで見送り出迎える日だ。ハロルド殿下とダニエル様がやってくる。お勉強がお休みになるから嬉しい。

…あれ、そういえば。いつも黒猫ちゃんを見かけるのは昼過ぎだけど、土曜日は見たことないなあ。

玄関には既にお父様とお母様、それからダニエル様もいた。丁度お姉様がハロルド様にエスコートされて馬車から降りているところだった。少し駆けていく。


「遅れて申し訳ありません。お姉様、お帰りなさい」


「ただいま」


お姉様は顔を赤らめたまま返事をした。何かあったのかしら? と首を傾げると、なるほど、殿下がお姉様の手をまだ握っていた。


「イザベラ様はダンスは完璧です!あとはもう少しエスコートに馴れた方が良いですね」


「…はい」


お母様もそうね、と同意して、鍛えてあげてくださいと殿下にお願いしていた。お父様も渋々といった感じでお願いして、殿下は了承していた。その間もずっとお姉様の手を握っていて、最後に名残惜しそうに離した。


「今日も楽しかったです。また次回も宜しくお願いしますね」


「こちらこそ、ありがとうごさいました」


「では、失礼します」


お辞儀をして踵を返すと、その後ろでダニエル様が口元を抑えて苦しそうにしていた。それまで誰も気付かなかった。視線が地面から離れない。何もないところをじっと見ていた。

ハロルド殿下が肩に手をおく。


「ダニエル? 具合が悪いのか?」


「どうされました?」


皆が心配そうに見守るなか、ハロルド殿下とお父様に支えられて馬車に乗せられていた。


「ウィリアム様、ありがとうございます。申し訳ありません」


心配そうに馬車を見送る三人とは違い、私ははやく馬車が見えなくなったらいいのにと思っていた。言いたくてうずうずしていた言葉を口にする。


「お姉様ダンスは完璧だって!よかったですね」


「…ええ、最近は本当に真面目にお勉強もダンスも課題をこなして、立派だわ」


お母様も続いて褒めた。そして上げて落とす。


「でも殿下がおっしゃったように、エスコートにも馴れていないとレディとは言えなくってよ」


「善処します」


「シャーロットはどちらもまだまだ頑張らなくてはなりませんね」


ああ、絶対にこっちに振られると思った。でもな、思ったことが口から出ちゃうんだよなあ。


「シャルはまだ11歳ですもん」


「年齢は重要ではありません!賢い子なら学園は飛び級入学して、夜会デビューも早めますのよ」


この流れはまずい。もしかして、自分でフラグを立ててしまったかも。

お母様はお父様を振り返った。


「ねえ、ウィリアム様」


「そうだな、シャーロットも今から頑張ればイザベラと一緒に入学出来るかもしれないな。そうすれば、夜会デビューもはやめられる」


どうしてもいつもそこに話を持っていくのか!お父様は私のことが嫌いなんだわ。はやくおうちから出ていって欲しいんだきっと。

ああ、くそ、涙が出てきた。

でも私はこののんびりお姫様ライフを手放したくない。


「シャルはセントフォード公爵家を継ぐのです!」


「まあ、良い志ね」


「ではセントフォード公爵家に相応しいように励まねばならないな」


そっちに行っちゃうのか。確かに一理ある。うん正論ですよ。期待されてて嬉しい!なんて思っちゃう。豚もおだてりゃ木に登るんです。


「では、シャルもお姉様のように頑張ります!」




お姉様は最近、天才だ!って家庭教師達に褒められている。対して私はまあ年齢相応な11歳のレベルだ。もしかしたら5歳レベルかもしれない。シャーロット様ももう少し頑張りましょう!なんて言われるとイラッとして思わず泣いてしまう。

私だって一生懸命やってるの!

それを慰めるのはお姉様だった。なんだよ聖母かよ。頭を優しく撫でながら微笑むのをやめろ。もっと好きになっちゃうだろ。

心がむずむずするから、お姉様に抱き着いて、ドレスに顔を埋めて涙を拭いた。メイドがはしたないです、なんて言ってもお姉様は怒らない。

お姉様は本当にステータスゲージ壊れたのかな? ってくらいチートだった。何でも出来るようになっている。魔法も使えるようになった。性格も変わってる。──実は私みたいに他の世界の記憶があるとか?

はは、あり得るかも。ぱたりと涙が止まった。


「お姉様、」

【まさか…!本当に?】


「シャルも頑張ってるって知ってるわ。少し休憩にしましょうか」


この包容力と優しさ。メイドもお姉様を褒めるし、あの口の悪い庭師とも仲良くお話してるし、この短期間で皆に愛されてる。演技じゃなくて、人が変わってる。だって年齢は2歳しか変わらないのよ。私が5歳児レベルなことを差し引いてもおかしいよ。こんなに急に精神年齢があがって、最強能力をてにするなんて。

え、待って。その場合、私との差は何?


「どうしてシャルはお姉様のように出来ないのでしょう」

【オプション仕様ですか?いくら払えば私もそうなれますか!】


課金制なのか? 石が足りないのか? どうしたらオプション追加できるんですか!何がお姉様と私とで違うんだ…!

頭のなかを色々な言葉がぐるぐる回って、混乱する。お姉様もそうだって決まった訳じゃないけど、最早そうとしか思えなかった。

お姉様は何て言おうかと悩んだ様子で、やっと言葉を絞り出した。


「シャルはきっと…大器晩成なのよ!」


「たいき…?」


黙って聞いていた先生が疑問を口にした。

メイドもきょとんとしている。


「そんな風に言わないかしら?」


えーっと、ゆっくり育つけど、最後は凄く立派になるってこと? なんてお姉様が言い直している。私はもうそんなことどうでもよかった。

確定ですわ。真っ黒黒ですよ。


「シャルは今出来るようになりたいんです!…お姉様のバカ!」


励ますふりして傷口に塩を塗るな!ばか!

四字熟語なんてこの世界では使わないんだよ!故事とか漢字圏の文化はないんだから。

…難しいことがわかるなんて、私賢い!


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