2話 どちら様
Hey guys!俺は尺八!今日はイカれたメンバーを紹介するぜ!まずはこいつだ!!
「……どちら様?」
「え?」
妖精が不思議な顔をして聞き返してくる
「えって、え?」
もちろんこちらも混乱中だ
「…はぁ、しょうがないわね!自己紹介してあげるから耳と鼻をかっぽじってよく聞きなさい!」
何様かと言われそうな彼女はそう言うと、サイズの合わない椅子から降り、ふんぞり返って語り始めた
「私は偉大なる超大妖精フェル・ウィドウ!世界で1番優しいお母様と一番強いお父様を持つ世界で一番凄い妖精よ!!」
自信に溢れた声が小屋の中に響き渡る。
「は、はぁ……そ、そっか」
しかし、なんと反応すればいいのやら
「ん!何その反応!?」
「ご、ごめん!」
反射的にあやまってしまう
しかし精霊フィル・ウィドウは反応が気に入らなかったらしく顔を真っ赤にして飛びながら俺の元へ近寄る
(飛んでる……!!)
「本当に妖精…か……」
「そうよ!信じてなかったの?信じらんない!!」
フェルは部屋中を飛び回りはしゃぎながら話してくる
「げ、元気だねハハハ」
この子分かりやすいくらい子供だ…
「そう!それがいい所って言われてるわ!!」
(知らんわ)
「一つ聞きたいんだけどいいかな?」
混乱する頭の中俺はこの子に聞けばこの状況が分かるのではないかと願って質問してみる
「いいわよ!なんでも聞いてみなさい!」
フェルちゃんも乗り気な様子
「フェルちゃんはなんで俺の名前を知ってるのかな?」
そう、彼女は俺の事を最初『ヒトシ』と呼んできた
「それはね、私がみらっーー……いや、そのうち分かるわ!お楽しみよ!」
「えっえええーー!!」
(答えてくれるんじゃなかったのか!!)
「そんな事より!貴方この世界について全く知らないでしょ!」
「!?」
(な、なぜその事を!てかこの世界についてってことは……)
「ここは…やっぱり、異世界なんだよな……」
薄々気付いていた。
前の世界ではよくその手の小説を読んだ、もしかしたらアフリカなんかの魔境かも…と希望を持っていたが……
「あら、その反応やっぱりね!私ってば天才!!褒めてもいいのよ!」
ぜひ遠慮したい
「それより…なんで俺が違う世界から来たって知ってるのかな?」
「あら、それも内緒よ!」
「このガキィ……」ボソッ
「ヒトシ?何か言ったかしら??」ブワッッ
瞬間、彼女から圧倒的な圧力、いわゆるオーラのようなものが発せられる。
「む、むぉっ!?」
前に坂を下っている時に吹いた強風の比べ物にならない圧力が全身に襲いかかる
「…………はぁ、ヒトシ教えてあげる、この世界について」
「あっあっありがとぉおぉ!!!」
圧力に文字通り吹き飛ばされ、返事をするので精一杯だった。
窓を突き破り吹き飛ばされたが、なんとか小屋に戻ってきて、椅子に座り話を聞くことになった。
ちなみなフェルちゃんは仁王立ちで待っていてくれた
「まずこの世界は魔法があるわ!貴方の世界には無かったらしいわね!」
「……まじか」
(妖精がいるからもしかしてって思ったけど……オラワクワクすっぞ!)
「そして広いわ!世界は広いわよ!」
「お、おう」
「んーーあと……私は凄いわ!そして私以上にお父様とお母様は凄いわ!」
「お、おう?」
「なんで凄いかって言ったらすっごい魔法が使えてすっごい頭がいいからよ!」
「あのーこの世界については……」
「しかもお母様は私よりすっごい魔法使えるのよ!」
「フェルさーん?おーい?」
飛び回りながら全身を使って元気に説明してくれてる、説明というより自慢になってきているけど…
「聞いてるのかしら!!!???」ブワッッ
(またさっきの!)
パリッーン!
呆気なく飛ばされてしまった
「フェルちゃん…勘弁してください…」
「私の話を聞かないのが悪いのよ!」
「え、えぇ……」
「なに!文句あるの!?」ギロッ
「な!ないです!!」
おっかない子供もいたもんだ
「全く…ヒトシが話聞かないせいで話し終わる前に限界来ちゃったじゃない!」
「え?どういうこと?」
まさか更にキレられるとか……
「……もう時間が無いわ」
なにかを悟ったような顔をし話す彼女の体は、足の先から風に舞う砂のようにサラサラと、消えて始めていた。
「ど、どうしたんだ!身体が!」
「うるさい!時間が無いから話せることだけちゃっちゃと話すわよ!」
彼女は焦りはじめ強引に話を進め始めた
「う、うん」
「ここにあるものは全部好きに使っていいわ!」
「は、はい!」
「それからヒトシは冒険に出ると思う!それは大変な事になると思う!!だけど……折れちゃだめだからね!!」
もう半分も残っていない身体で必死に叫んで伝えてきた。
「分かった!!」
彼女が何者かも、どういう事かも分からない、でも彼女が必死に伝えた言葉を無駄にしてはいけない気がした。僕は彼女の言葉を胸に刻み込んだ。
この部屋には最初から俺しかいなかったかのように、彼女は存在を消してしまった。
「フェルちゃん……」
いきなりこんなことになって初めて話したフェルちゃんもいなくなってしまった。
「折れちゃダメって言われても…まず何を……」
沈んでいたらフェルちゃんが『この部屋のものは使っていい』と言っていたのを思い出した僕は部屋を漁ることにした
「これじゃ盗賊に間違えられても仕方が無いな…ははっ」
それが冗談ではなくなってしまう事を分からされたのは、そう呟いた約一時間後の話である。
次のメンバーは……おっともう時間がきちまった!また今度会おうぜ!閲覧ありがとな!HAHAHAHA