孤独な少女の心は、何を想う①
昼休み。
あちこちで椅子をガタガタと机や椅子が動く音が聞こえ、授業中の静けさが嘘のように室内に活気が戻る。
チラリ、と結氷の方へ視線を向ける。
刹那――隣にあった深い、漆黒の輝く瞳と視線がぶつかった。
柔らかい光を宿すその瞳の主を話しかけようとしたがしかし、真尋は結氷に言葉をかけることはできなかった。
「真尋、弁当食べようぜ」
普段いつも昼食を共に食べている友人の一人――雅哉が、声をかけてきたからだ。
「あっ......え、と......」
急に二人の間に入ってきた友人の存在に、真尋は慌てる。返答をしようと一旦雅哉に向けた視線だが、答えに詰まり結氷へと視線を戻す。
もう、美しい黒色は真尋を向いてはいなかった。
カタリッ
小さな音を立て結氷が立ち上がる。
「っゆ……」
名前を呼ぼうとして立ち上がる真尋を、結氷の瞳が静かに制す。今は、話しかけるなと。
その瞳には逆らえず、真尋はただ結氷の後ろ姿を見送ることしか出来なかった。
■ ■ ■
「真尋、泉水には関わっちゃダメだ」
友人三人の集まる席に着いた途端、真尋を呼びに来た雅哉が声を発した。
それを革切りに、後の二人も声を上げる。
「泉水は危ない」
「関わったら、きっとただじゃ済まない」
「あいつは、俺たちとは......」
次々と頭に流れ込んでくる友人たちの言葉。
昨日知った、自ら孤独となることを選んだ少女の優しさ。真尋が受け入れられると言ったとき、少女は嬉しそうに、花のような笑みを浮かべた。
自ら選んだこととはいえ、彼女は本当に一人になりたかったわけじゃない。
それを、真尋は感じた、知ってしまった。だから、好き勝手に結氷のことを話す友人たちのことに真尋は我慢できなかった。
「僕たちとは、違う力を持ってるから?」
思わず口をついてでた言葉は思ったよりも大きかった。その言葉に、友人たちのみでなくクラス内も静寂に包まれる。
「知ってるよ。彼女のこと、氷の魔法が使えるってことも、彼女を狙ってるナニカがいるってことも。……実際に出会ったから」
「っ! それならなんで!」
「どうして、彼女が一人なのか考えたことある? 君たちが彼女を避けてることは知ってる。でも、彼女が君たちを傷つけたことがあった?」
結氷が人を傷つけることはない。それを信じているからこそ、真尋はその言葉を発した。
真尋の言葉に、雅哉は言葉を詰める。クラスにも、小さなざわめきが起こる。
「そういえば……」
「窓を凍らせるのを見せつけはしたけど」
その中に、結氷に被害を受けたという言葉は聞き取れなかった。
「それでもっ……!」
雅哉が言葉を発する。
「行方不明になってるんだ、一人。今のお前みたいに、泉水を理解したやつ、ずっと、泉水を支えてたやつが。消えたんだ、去年の十二月に」