天皇誕生日の翌日
「なんなんだろうね。この連休のなさは。昨日が祝日で今日は振替休日のはずでしょ。なんで学校来なきゃならないの!そのうえ土曜日は補講だったという…」
「まぁまぁ。明後日から冬休みだよ。どうする予定?」
「あぁぁぁ!」
叫ぶ。叫ぶ。このやるせない気持ちを叫ぶ。
「成人式の連休のために二回帰るの面倒だから、帰んない!なんで、成人式の休みもつながってないの。古典の日は祝日なのに休みにならないの。そりゃ、認知度も低いわなっ」
「私立大学の宿命です」
「無情だ。冷血漢、非人間。」
「じゃあ、一緒に年を越そう。これから年末までお泊りしていい?」
「論理だっていません。どういう流れで、未婚の男女が、それも恋人でもない男女が一つ屋根の下で過ごすのでしょうか」
「それは俺がお前を好きだったということです」
「なんですか、それ。今さらすぎでしょう」
「残念なあなたに付き合えるのは俺だけです。どうせ、友達、ほとんど実家に帰ってるんだろ。数少ないこっちに残ってる友達もバイトで構ってもらいない。で、おまえはバイトもしない。寂しいだろ。正直に言いなさい」
「えぇ、えぇ。寂しいですよ。だからって、身近な男で手は打ちませんよ。身近な女で手を済ませようとしないでください」
「告白を言いますよ。後悔すんなよ。君の優しいところが好きです。俺が馬鹿して、追い詰められているときに何だかんだで甘いところに優しさを感じます。でもって、仕方がないなって笑う顔が好きです。目尻がたれてる感じの砕けた感じがたまりません。身長が小っちゃいのに触れられるのを嫌がるところが可愛いです。思わず、頭を撫でたくなります。ついでに、抱きしめたくなります。そして、」
「もういい!聞いてるこっちが恥ずかしくなる」
「で、お泊りしていい?」
「いいよ。どうせ、今日も友達いなさすぎて、一緒にいてもらうぐらいのぼっちですからね。虚しく過ごすよりかは、手近なやつで妥協するよ」
(それから二人は付き合いだしました)
男の友人たちの証言
「あいつちょっと気持ち悪いよなー」
「そんなこと言ってやるなよ」
「いやいや。かなりのもんだよ。好きな子が正月に家に帰らないと知ると、自分も帰らないし。今日だって、お一人様の会によんでやってんのに、来ないし」
「お前、あいつが来なくて、ただ寂しいんだろ」
「いやいや。あいつは気持ち悪いよ。好きなら好きって言えばいいのに、言わないし」
「今頃言ってんじゃないの。愛しています、とか」
「愛しています、か。あいつなら言いそう。愛してます、じゃなくて、愛しています。そういうところが周りから引かれるんだよな」
「基本スペック高いのにへたれなんだよな」
女たちの証言
「ねぇ。今頃告白されてるのかな」
「されてるんじゃない。これだけお膳立てしてるのに、されてないなら、むしろ潰す」
「笑顔が怖いですよ。お姉さん」
「だって、そうじゃん。あれだけ好意を見せつけられて、付き合ってもないなんて」
「そうだねー。あの子は初心だから仕方ないとしても、あっちはなー。意図的にやってるもんね。絶対」
「そうそう。あいつあの子にかまいすぎ。正直、あれで頭悪くて、見た目も気を遣っていないようなやつだったら、通報ものだよ。イケメンは得だよね」
「惜しむらくは、我らがアイドルがあいつに奪われることだよね」