桜雨
はッ、はッ、はッ、はッ、はッ、……
私一人分の呼吸が木霊する。緊張からか、疲労からか。分からぬ。確かなのは、一刻も早く此処から立ち去らねば、と云う事。
其れはあっと云う間の出来事だった。
何の前触れも無しに私は私の体へ戻った。丁度顔面に土が掛けられるか……。そんな瞬間の事だった。片晴は既に被せられた土で塞がっていて、半分の視力を失った暗い土の中から、迫りくる円匙を確認した。
慌てて地中から手を伸ばし、柄を掴み動きを封じる。道具の先から相手が動揺したのが手に取るように判った。
勢いよく身を起こし、口に入る黒い土も気にせず道具を引っ張る。相手が小さく短い悲鳴を上げゆっくりと倒れ込むのとは反対に、私は立ち上がった。
其れから間髪入れずに立ち位置が入れ替わった相手の隙を突き、円匙を強引に奪い取り、怯えた晴を無視して頭上に振りかざす。日常生活に潜む此れだって、立派な兇器に成り下がるのだ
頭をかち割って、それで御仕舞い。
証拠隠滅の舞台はこの男のお陰で整っているので、後は土を丁寧且つ迅速に被せるだけだった。皮肉なものだ。これじゃまるで、彼が自分の死体を隠蔽する為ここまで丹念に用意してきたものではなか。
死体がすっかり隠れてから、胸を撫で下ろし桜の樹に背を向けた。シャベル片手に、全速力で脱兎の如くその場から離れる。
雨の様に降り頻る桜が私の悪事を更に隠すかのように舞い散り、地面に積もっていった。
初ホラーのシリーズもついに終わりました。文芸部員Xさん、リクエストありがとうございました!
この小説は私の夢がネタになっています。
ちなみに私が死体役でした。乙。
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今後の文芸部活動の参考にさせていただきます。
ここまでのお付き合いありがとうございましたm(__)m




