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ぶち切れ聖女は激マズポーションを置き土産に逃亡する  作者: 嵐華子@【傾国悪女】3/5発売予定
1章〜ブチギレるまで

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5.私は堪えたのよ

「今の、この頃だったわ。実は魔国の結界の一部が時折揺らいで、森に異形の魔族達が姿を見せ始めたの。最初は森の中だけで、時折見かける程度の報告だった。なのに、いつしか森の外で生活をしている領民まで、姿を目撃したと報告が上がり始めるのよね」


 そうしたら魔国とうちの領民とで、小競り合いが始まった。時間をかけて、徐々に小競り合いが激化してしまう。


 領民達が疲弊していく中、回帰前のあの年は、作物も年間通して不作となってしまった。


 更にこの年の冬は、大寒波に見舞われる。領から餓死者が出そうな状況だった。


 隣の領からの援助だけでは、どうにもならず、王家にも助けを求めた。


 うちの領を助ける代わりにと、王家が提示した条件が、私とカリエルの婚姻。カリエルを、内婿という体で引き取る。それが条件だった。


 もちろん私は、納得していた。第二王子という立場が持ってくる持参金で、翌年までは領民達を飢えさせなくて済んだのだから。


 私の婚姻なんて、安いものよ。


 王家も第二王子を臣民に下す事で、無用な争いを防ぎ、その上、万が一に備えた血統も確保できるのだから。


「それでも……政略結婚でも……確かに私達はお互いに信頼し、愛し合えた……そう、思えたのに……」


 目からポロリと雫が溢れてしまう。


「嫌ね、花粉症よ、これは。ふふっ……もう私とカリエルは関係ない。そうでしょう、ケモック……」


 誰も聞く人がいない。だから私の涙を見る人もいない。


 なのに乾いた笑いで、涙を引っこめようと誤魔化してしまうのは、まだ裏切られた心が痛むから。


 カリエルとは最初、兄妹のような関係から始まった。


 そして時間と共に、今にして思えば、私だけがカリエルを男として意識して……深く愛したのね。


 私は徐々に衰弱するカリエルの病を治そうと、国内を駆けずり回ったわ。


 カリエルの病を治癒できる人間を、探し求めて。


 この世には魔法が存在する。その中でも、怪我だけでなく、病気までも癒せる人間は、聖女だけだと言われていた。


 けれど当時、聖女は存在していなかった。


 少なくとも神殿は、聖女の存在を確認していなかった。


 確認すれば、神殿の権威が一気にアップする。見つけたのに、黙秘するとは思えない。


 だから悪化するカリエルの状態に為す術がなく、妻である私は、絶望する日々を過ごした。


「そんな中、師匠と会えたのは、ケモックのお陰ね」


 そう、回帰する前。私は師匠と呼ぶべき人物と会った。


 ある日、ケモックは私を誘うように森へ、そして森の最奥にある、魔国の結界の中へと入っていった。


 もちろん私もケモックを追いかけて、魔国に入った。


 そしてケモックは魔国にある、とある寂れた村へと向かう。


 その村で、私は魔国の住民である師匠と出会い、カリエルが呪われていたのだと知った。


「彼の呪いを肩代わりしてもいい。自分が死の床に伏しても、堪えてみせる。あの時は、本気でそう思ったし、実際、堪えたわ。回復したカリエルがうちの領から出て行き、浮気しても……私は耐えたのよ……」


 カリエルと婚姻を結んでから3年後。


 私は誰にも知らせないまま、師匠から教わった力で、カリエルの呪いを自分に移した。


 この世界には魔法があるけれど、呪いという現象は、迷信とされている。


 もしカリエルが呪われていたと周囲に知られ、カリエルを排除しようとする第一王子に伝わってしまえば、第一王子は名分を得たとばかりに、表立ってカリエルを殺そうとするかもしれない。


 だから呪いが存在すると、カリエルが呪われたと知る者は、少なければ少ない程いい。


 当時の私はそう考えて、呪いについて黙っていた。


 カリエルが20歳、私が17歳の時だ。


 そしてカリエルが22歳になる春。気力と体力を回復させた頃。


 第一王子が落馬で、あっけなく命を落とした。


 病と気落ちからか、ベッドから起き上がれなくなったらしい国王の王命により、カリエルは王子として返り咲く。


 同時に私は、非公式という形で王子妃となった。


 けれど私は、カリエルから引き受けた呪いのせいで、ベッドから起き上がるのがやっとな程、衰弱していた。


 それでも王命が下り、家族は反対したけれど、王都へ移る。


 けど私は、非公式の王子妃だ。お城に入れてもらえなくて、城下の邸で貴族令嬢の静養という体にして、生活を送るようになった。


 カリエルは、必ず私を公式的な妃として認めさせると言ってたけれど、嘘だった。


 だって私が死ぬまで、そんな事は叶わなかった。初めこそカリエルは邸を頻繁に訪れていたけれど、すぐに足が遠のいたわ。


 ケモックを黙って連れて行ってて、本当に良かったと思っている。


 カリエルがいない寂しさを、ケモックが癒してくれたのだから。


 ベッドに臥す私の世話をしてくれない使用人も、ただ家を綺麗にしてくれるだけで良しと思えた。


 全てが私の側で寄り添い、励ましてくれたケモックのお陰だ。


 ケモックと過ごす内、いつからか私は、少しずつだけれど、自分の体を蝕む呪いと対峙するようになった。


 解呪するコツを掴み、薬草を煮詰めて魔力をこめたポーションを独自開発し、慎ましく日々を送りながら、ベッドから離れられるくらいには、体力を回復させていった。

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