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ぶち切れ聖女は激マズポーションを置き土産に逃亡する  作者: 嵐華子@【傾国悪女】3/5発売予定
1章〜ブチギレるまで

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3.呪われた王子

「ここで待ってて、コロロン」

「ブルルヒヒン」


 愛馬のコロロンを撫でながらお願いすれば、コロロンは快く返事をしてくれた。


 部屋を出たものの、自室に戻る気になれなかった。コロロンに会いに行き、そのまま逞しい背に跨って辿り着いたのは、魔国との境にある森の手前。


 ――魔国。

いつの頃からか異形の姿をした者達が集まり、国家となった魔物の国。このマルトレ王国では、そう語られている。


 魔国は、巨大な結界で覆われている。この結界が、我がカミュリッチ家が代々守ってきた、ケルバード領と隣り合わせ。


 うちの領の端にある森を抜けた途端、魔国の結界に出くわすのだ。結界の手前までが、マルトレ王国の国境となっている。


 けれど、正直怪しいと密かに思っている。


 魔国は結界によって鎖国状態だから、国境の主張をしているのは、この国だけ。


 中に入って魔国の国民に直接聞かないと、魔国側の認識がわからない。


「ブルブルッ」


 不意に、コロロンが少し心配そうな目で、私を見ながら鳴いた。


 コロロンは竜馬と呼ばれる、黒いお馬さん。私が三歳になった頃、ちょうどこの辺りで怪我をして動けなくなっていた。


 見た目は馬だけれど、一般的な馬より二回りは大きくて、絶滅危惧種とされている。膝下には鱗が生えていて、一説によるとドラゴンの系統や亜種から派生した馬だとか。


 怒った時の気性は荒い。一度荒ぶれば、領内一と称される、やたらと戦闘能力だけは高いお父様が相手をしないと、怪我をしてしまう。


 ただし心を許した相手には、絶対服従する。忠犬みたいな性格だ。


 足が速い子だから、タミョルが他の馬で追いかけようとしても、追いつけない。


 ちなみにタミョルは侍女をやっているけれど、身体能力と乗馬能力が高い。何で侍女をやっているのか、正直わからない。


 領内には侍女より給金の良い職が、他に幾つかあると思うのだけれど……。


 もっともタミョルなら、私がこの森に向かった事くらい既に察して、私の捕獲に乗り出している気がしてならない。


 侍女がやる事じゃないはずだけれど、タミョルならやる。


 そして追いつかれた私は、必ず捕獲される。既に実証済みだ。


 なぜなら私の純粋な戦闘能力は、カミュリッチ家に仕える全ての使用人達を合わせても、低い方だから。


 ただし逃げに特化した能力だけは、領内一だと自負しているし、領民すらも認めている、逃げ上手なご令嬢なのだ。


「心配しないで」


 コロロンにそう言いながら手を振って、私だけで森の奥へと歩く。


 私は回帰者だ。どうして回帰したのかわからないけれど、回帰前、ケモックと名付けた魔獣を飼っていた。


 そのケモックと出会ったのが、この森だ。


 回帰したと気づいたのは、母親の胎内から出てきた直後。


 もしかすると狭い産道を通る時の刺激で、回帰前の記憶を思い出したのかもしれない。


 赤ん坊だった私は、動けるようになるくらい成長してからというもの、ケモックを探して何度もこの森を訪れた。


「回帰前、ここで散歩していたら、ケモックがいたわ。また……会えるわよね?」


 そう、予定では、そろそろ出会うはず……。


「ケモックー! 金色お目々の、フワフワ黒毛玉ちゃ〜ん! 角が二本生えた! プリッティーな! 私のケモーック!」


 一度目の人生でケモックを拾った時、あの子は傷だらけの血まみれだった。二本あった角は一本折れていて、ケモックは当然のように私を威嚇しまくった。


「……ふふふ」


 あの時を思い出して、懐かしさについ、笑みが零れる。


 いっそお父様とお兄様に、言ってしまおうか? 今の人生は、私にとって二度目。やり直しの人生だって。


 けれど想像して、頭を振る。


「駄目ね。精神を病んだふりかと言って、笑われそう。その上、回帰前の人生で、私はカリエルと結婚していた、なんて言おうものなら……うん、やっぱり爆笑されそう」


 そう、あの二人ならお腹を抱えて大爆笑するに違いない。


 カリエルは今、お兄様と同じく十五歳。()()を受け始める頃かしら。


 回帰前のカリエルは、十五歳の時に学園で授業を受ける最中、突然倒れた。


 それが始まりだったと、カリエル本人だけでなく、お兄様からも聞かされた。


 これに関しては、きっと嘘は吐かれていないはず。


 カリエルは倒れてから数日間、生死の境を彷徨い、幸か不幸か神殿の祈祷とやらで、一命を取り留めたそう。


 けれどその日を境に、衰弱が激しくなり、倒れて2年後、私と出会う頃には、ベッド生活を余儀なくされていた。


 そんな状態を引き起こしたのが、呪い。


 けれど呪いだと気づいたのは、私だけ。


 私が気づいた時期も遅かったし、呪いだとカリエルに話す機会も訪れなかった。


 そもそも、この世に魔法は存在すれど、呪いは信じられていない。


 カリエルが原因不明の病と診断されるに至ったのも、そんな背景がある。


 ちなみに怪我を癒やす治癒魔法も、あるにはある。


 けれどその類の魔法が使えるのは、ごく少数。神殿に集められており、神殿に献金を払う事で、人は治癒の恩恵を得られる。


 更に一説では、治癒魔法を扱える者の中で、病すら癒やせる者もいるらしい。


 神殿では、病を癒せる魔法が扱える人を聖女と呼ぶ。


 聖女は他に特殊な力を持つとされている。


 けれど神殿が秘匿していて、これ以上の事はわからない。


 そしてカリエルが衰弱していた当時、聖女と認められた者は、存在していなかった。


 私が14歳。カリエルが17歳の頃。カリエルは、起き上がるのもやっとな状況になっていた。


 なのに回帰前のカリエルは、王城から追い出されるようにしてお兄様を頼り、うちの領で静養を始める。


 つまり今から2年後の話であり、本来なら、私とカリエルはそこで初めて出会う事になっていた。

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