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ぶち切れ聖女は激マズポーションを置き土産に逃亡する  作者: 嵐華子@【傾国悪女】3/5発売予定
1章〜ブチギレるまで

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28.妹の所業~ガルヴァウside

「フィデリカぁ……」

「あー……まあ、なあ」


 妹が去ってから、四日目の昼間。俺から事の顛末を聞き終えたカミュリッチ家当主である父上は目を潤ませ、顔を真っ青にしている。


 俺は何か言おうとしたものの、掛ける言葉が見つからず、黙る。


 俺達のいる場所は、王城にある応接室。


 父上は知らせを聞きつけると、領で一番足の速い馬を走らせ、王城へ駆けつけた。


 俺が父上よりも早く状況を知ったあの日。妹が去った日だ。


 俺はカリエルと学園を出て城に着き、共に城の中に足を踏み入れた。直後、即座かつ問答無用で連行された。


 俺達を連行したのは、近衛騎士団長。向かった先には国王がいて、場所は国王の私室だった。


 結論から言うと、俺とカリエルが危惧していた通りだったが、城の外観は変わってなかった。外から見える部分は。


 国王の私室の天井――ちょうど真上だから、パッと見はわからなかった――が、崩れてた。城の屋根から幾つかの部屋を貫通して、国王の私室に何者かが辿り着いた形だ。


 連れて来られた時点ではまだ、妹が何をやったかわからなかった。が、限りなく妹が関わった可能性しか考えられず、背筋に嫌な汗が流れ出す。


 天井を貫通したのはガーゴイルで、ガーゴイルを呼んだのはケモック二世。ケモック二世と連れだってガーゴイルに乗り、天井から外に出たのは妹だったと後で知る。


『フィー……父上の居室……よりによって……』


 入室した直後に呟いたカリエルの言う父上とは、もちろんこの国の国王だ。


 この時、俺も思った。


 終わった……カミュリッチ家、終わった……とりあえず騎士達に拘束される前に、領に逃げるか?


 なんてことを。だが拘束されるなら、とっくにされてんじゃねえかと思い、留まった。


 そもそもカリエルはともかく、俺も捕縛されていない。


 普通、国王を急襲――急襲されたとは言われていないまでも、妹は絶対カリエルの時みたく、国王を急襲してると確信してる――した人間の兄だったら、先に捕縛されてる。


 何で縛られてないんだ? しかも、国のトップの居室に連行? 普通は問答無用で牢屋か、取調室だろう。


 困惑している俺とカリエルに、疲れた顔を隠そうともしない国王が視線を向ける。


 国王の隣には神官長もいて、国王と同じような顔をしていた。


『二人共、座れ。お前達に話さねばならん事がある』


 国王がそう口火を切り、既に少数しかいなかったにもかかわらず、更に人払いをした。


 そうして国王が直々に、妹が城で何をやったか説明してくれた。


 もちろん普通は国のトップが直々に説明なんてしねえ。絶対、妹への配慮だ。


 場所が国王の私室だったのは、単なる成り行きだろう。


 国王の説明が終わり、次いで神官長が妹について、神殿のトップの立場から説明し始めた。


 で、四日後の今。国王と神官長から聞かされた事も含めて、父上に話したところだ。


「フィデリカが……フィデリカが、愛の逃避行しちゃったよぉ〜。しかも、魔国。いつの間にお婿さんを見つけてたんだよぉ〜。知ってたら、王子なんかと婚約させようと思わなかったよぉ〜」

「いや、そっちかよ」


 父上の言葉に、思わずつっこむ。


 王子となんかって……。


 こんな父上だが、剣を握らせれば魔獣の集団を単騎で蹴散らす実力者だ。


 なのに普段の父上は、ちょっとなよっとしてて頼りない。ある意味、物腰が柔らか? 母上と妹にはめっぽう甘いし、心配症だ。


「もっとあるんじゃねえ? カリエルとか第一王子とか、テレヌ公爵令嬢だけならともかく、フィデリカが殴った中に、国王と神官長が入ってるとかさ」


 そう。妹はこの国の上層部とも言える奴らばかりを急襲してた。俺の妹、破天荒な輩がすぎる。


「でも呪いを解く為だったんでしょ? 国王も神官長も、怒ってないんでしょ? 城にちょっと穴空けただけで、修繕費も請求されないんでしょ? テレヌ公爵令嬢が、婚約者の第一王子だけじゃなく、国王も呪ってたんでしょ? あ、テレヌ公爵令嬢が、呪い返しで異形姿になったって、言ってたね。令嬢の父親から慰謝料の請求とか……ないかな? ないよね? もしもあったら、そっちも国か神殿の方で、何とかして欲しいんだけど……」

「いや、それは聞いてねえよ。けど、そもそもテレヌ公爵家は慰謝料どころじゃねえんじゃね? 今は謀反の罪に問われてんだし」


 テレヌ公爵が、娘の強行を知ってたかどうかは現在、取り調べ中だ。


 でもテレヌ公爵令嬢は、神官長にも呪いを掛けてたらしい。


 まだ中年の神官長はここ数年、体調を崩しがちだったようだが、それは全て呪いのせいだったとか。


 国と神殿のトップ。そんな二人の人間に呪いを掛けたのが娘である以上、いくら由緒正しい公爵家であっても、お咎めなしとはいかねえはずだ。

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