表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ぶち切れ聖女は激マズポーションを置き土産に逃亡する  作者: 嵐華子@【傾国悪女】3/5発売予定
1章〜ブチギレるまで

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

13/25

11.500年ぶりに~ザケルバードside

「……そうか」


 フィデリカが性根の歪んだ子供でないのは、僅かな時間ながらもわかった。


 結界の外から、中で怪我を負って気絶していた我を見つけ、助けようとしたのも信じよう。状況的にも、間違いないはず。


 何より、どうせフィデリカとは、これきりの縁にするつもりだ。


 結界への入り方を秘匿させ、フィデリカ自身も今後、足を踏み入れぬよう、誓約魔法で誓わせる。


 誓約を破れば、何かしらの苦痛を伴わせるものとなるが……可哀想でも、これがフィデリカと我らを守る方法だ。


 しかし……。


「ねえ、本当に、本当よ? 自分で考えて試したら、中に入れたの」


 相変わらず目が泳いでおる。


 我はフィデリカの魔力を観察しておるのだが、疑われておると勘違いしたのであろう。


 疑うべくもなく、嘘を吐いておる事はわかるが、誓約魔法で黙らせる故、どうでも良い。


 我はフィデリカの治癒魔法が気になっておるのだ。


 我らは元々、数ある魔法の中でも、治癒魔法に長けておった。しかし呪いで異形な姿となって以来、治癒魔法を使えなくなった。


 更に同胞間で結びつき、生まれた子は皆、異形の姿で生まれ、治癒魔法が使えぬ者ばかりであった。


 代わりとばかりに体の強度が人の何倍も強く、自己治癒能力も高い。故に治癒魔法など必要なしと、この体は判断したのかもしれぬ。


 我が負っていた傷も、結界の外の者ならば受けた途端、即死しておったはず。


 結界の外の人間ならば、500年経った今も、治癒魔法を扱う者はおるだろう。


 だが、あの傷をほぼ一瞬で治癒させる者が果たしてどれ程おるものか……。


 その上、この体は呪いが浸透しておる。ただの治癒魔法ならば、むしろ我の体には効果がない。


 異形の体となった直後、我は今のような怪我を負った。


 呪われておらぬ身内が、我に治癒魔法をかけてくれたが、効果はなかった。


 それ故、我の体には並の治癒魔法は効かぬと知っておる。それこそ、聖女と呼ばれる者が持つ、呪いを打ち消す清廉とした魔力を糧に魔法を使わねば……。


 500年前に別れた、ある1人の聖女を思い出し、ズキリと胸が痛む。


 昔を思い出したばかりか、未だに痛める感傷を持ち合わせておったか。


「……ふ」

「ねえ、今笑った? 思い出し笑い? それよりも、本当にケモックの事知らない? あっ、もしかして思い出して笑ったとか!? 可愛いものね! ケモックの居場所を教えて!」

「すまぬが、ケモックなる獣は知らぬ」

「……そう」


 嬉々として顔を輝かせた娘は、我の言葉ですぐにシュンとなる。


「……愛らしい」

「え? 何て?」

「あ、いや、何でもない」

「そう?」


 つい素直な言葉を口にして、反応したフィデリカに誤魔化す。


 どうやらフィデリカは聞き取れていなかったらしく、胸をなで下ろす。


 ずっと気づかぬふりをしておった。


 初めてフィデリカの顔を見た時から、心中、穏やかではなかったのだ。


 とにかく可愛らしくて仕方ない。()()()手放してはならぬと、我の内側で誰かがしきりに警鐘を鳴らしておる。


 確かに初めは、子供の姿を魔法で装いでもした刺客かと、警戒してしまったが。


 挙げ句、魔法で攻撃しようとして、怯えさせてしまった。


 どうにかして挽回したくなってしまう。


「それよりも早くここから去れ。ここはお前のような非力な娘がいて良い場所では……」


 それでも我の側にいれば、そもそもが危ない。そう考えて、突き放す。


「嫌よ! せっかく結界内に入ってしまったんだもの! もしかしたら中にいるかもしれない可愛いケモックを探し出して、大怪我を防ぐミッションがあるの!」

「しかし我の頭のような毛に、我と同じ金目の獣など、見た事がないぞ?」


 鏡の中ではある。もちろん我が変化した姿だ。


 だが可愛らしくはないぞ。どちらかと言えばシュッとした獣で、この娘ならむしろ格好良いと目を輝かせてくれそうな見た目……。


 いや、何を見た事もないケモックとやらに、張り合おうとしておるのだ。


 それとも一度変化してみるか? さすればこの娘の言うケモックとやらなぞ、おらぬと納得して去るのでは……去る、か。


 名残惜しいな。


 そう感じるのは、きっと異形ではない人間とまともに話したのが、実に500年ぶりだからであろうか。


「それでも……もう、私が自由にできる時間がなくなっちゃうかもしれないから……今しか……」

「何を思い詰めた事を……」

「もしかしたら私……結婚させられて……」


 思い詰めた顔をしたフィデリカが放った一言に、胸の内がゾワリと黒い反応を示す。結婚という言葉が、不快で仕方ない。


 だが……。


「そうしたら……また……ケモックを残して……」


 言い終わらぬ内に、フィデリカが涙を浮かべ、雫が頬を伝い始める。


「お、おい、泣くのか!? いや、もう泣いておるな!? どうした!?」


 この500年、儂の民達の嘆きをどれだけ目にしても狼狽えた事はなかった。


 なのに何故だ? この娘の涙を見た途端、パニックになる。


「……っ、グスッ……私、もうあんな風に死にたくない! 今度こそって思ってたのに……っう、うぅ……うわーん!」

「おおおお、おい! なななな、泣くな! 泣くでない!」

「無理いいいい!」

「嘘だろう!? 頼むから泣き止んでくれぇぇぇ!」


 間一髪、我らの周りに消音の魔法を施して気配を消す。


 そうして我は実に500年ぶりに慌てふためき、フィデリカ(子供)を抱き上げ、あやしたのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ