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ぶち切れ聖女は激マズポーションを置き土産に逃亡する  作者: 嵐華子@【傾国悪女】3/5発売予定
1章〜ブチギレるまで

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10.もう少し、処世術を~ザケルバードside

「儂と同じ色の毛と瞳の魔獣?」

「そうなの! 艶っとしてなめらか手触りな毛をした、かわい子ちゃんなのよ!」


 フィデリカと名乗った娘は、目の前でキラキラと薄緑色の瞳を輝かせ……いや、本当にこの娘の瞳、煌めいておる。


 我の知る聖女の……いや、今は良い。


 結界の外に住むフィデリカからすれば、我の見た目はさぞ(おぞ)ましかろう。


 そう思うも、魔獣に思いを馳せているらしきフィデリカは、恐怖どころか、気後れすらせず我の前でデレる。

 

「か、かわい子ちゃん……」


 余程その魔獣に惚れ込んでおるのだろうが、しかし我は内心、動揺を走らせた。


 もしや我の変化した姿を見られたか? それとも知らぬ間に同族でも生まれたのであろうか? いや、どちらにせよ、我と同じ色の瞳をした同族なぞおらぬ。


 我の実年齢は、500歳を軽く超えたくらい。正確な年など、もう覚えておらぬが、見た目だけは青年を保っておる。


 500年以上も結界内に籠もった我らは今、内部分裂しつつある。皆、限界を迎えてしまったのだ。


 元は皆、結界の外に住む者達と同じような外見であった。フィデリカのように、つるんとした肌質だったのだ。


 しかし我らは、呪いを受けた。


 正確には、マルトレ王国内に蔓延った呪いに侵された者、そして引き受けた者がおる。


 その呪いのせいで角や鱗や毛、その他の何かが生えた異形の姿へと変容した。


 そんな我らは、このマルトレ王国最果ての地に結界を張り、中で住まう事で外界との関係を絶った。


 それもこれもマルトレ王国内に生じつつあった、偏見や迫害と争う事を避ける為。何より、内に抱えた呪いを撒き散らさぬ為。


 それでも500年も経てば、我らとて結界の中で、ひっそりと子孫を作って生活する者も出てくる。


 当時を知らず、今の閉鎖された森の中での生活に満足できぬ者が現れたのも、致し方ない。


 何より元は大人しく、奉仕の精神を多分に持つ者ですら、呪いのせいで不意の破壊衝動に駆られる時もあるのだ。


 結界の外におる者が自分達を受け入れぬならば、いや、そんな事など関係なく、侵略して支配下に置けば良い。


 そんな暴力的思考に捕らわれた者が、今は我らの半数近くに増えてきた。


 問題なのは、そんな考えに支配されてしまえるくらい、我らの力も魔法も、結界の外の者より強い事。そして自己治癒力が高く、寿命が延びてしまった事。


 これらは無論、異形の姿と引き換えに手に入れた力だ。


 更に厄介なのは、そのような暴力的思考に捕らわれる気持ちを、我も理解できてしまう事にある。


 だからこそ先ほど襲撃を受けた際、隙ができてしまった。


 深手を負い、血を失い、しかし同胞と本気で争うわけにもいかず、魔法で気配を消したところで、暫し気絶。


 もし見つかっておれば、角の1本も折られていたやもしれぬ。


 そんな我の傷を、カミュリッチの姓を名乗ったフィデリカが、さっと魔法で癒した。


 鼻血を垂らしながら。


 何故か結界に引っかかり、顔から転んで鼻を強打したらしい。


 背も低く、チマッとした外見をしておるくせに、お転婆な性格をしておるようだ。


 しかも異形な姿の我を前に、恐れる素振りも見せずに治癒した。これには驚いた。


 フィデリカは結界の外にいる人間。それも年端もいかぬ娘。


 なのに躊躇いもなく……。


 我は結界の外へ、定期的に偵察しに出ておる。もちろん出る方法は、誰にも教えておらぬ。


 知れば出たくなり、結界内外の者達を危険に曝してしまう。


 そもそも中和魔法を纏うには、外部からの助けも必要だ。初回だけ、誰かがその者の魔力を使って中和魔法を発動させた上で、その者に纏わせねばならない。


 魔法を纏うという事を、他人から体感させられて、初めて習得できる特殊な応用魔法だ。


 それにしてもフィデリカが名乗ったカミュリッチといえば、結界を張った我らを見送った者が、そんな姓の者であった。まさかあの者の子孫であろうか?


 フィデリカの話では、結界内は魔国と呼ばれ、カミュリッチ家は結界に隣接するケルバート領の領主一族となっている。


 マルトレ王国の人間が、我らが住む場を魔国と呼び、そこで住まう我らを魔族と呼んでいる事には、薄々気づいていた。


 だが外の人間に、まともに我らの現状を尋ねたのは初めての事。正直、現状を知って驚いた。


 まさか結界内が、マルトレ王国でなくなっていたとは。


「一つ尋ねるが、何故そなたは結界への入り方を知っておった?」

「ああ、それはケモック、んんっ、えーっと……私、戦闘能力は低いの。あっ、でも身体強化魔法は使えるのよ。けれど、ほらっ、そうそう、誰かを攻撃するような魔法は使えないわ」


 我の問いに、途端、目を泳がせながら、しどろもどろに早口で答えるフィデリカ。


「だから、えーっと……ほらっ、万が一、魔法で攻撃されても大丈夫なように、中和魔法を体に纏わせる練習をしてたわ」

「……それで結界を通過したと?」

「そう! それ!」


 フィデリカよ、嘘が吐けない子供か?


 いや、まだ12歳だし、嘘を吐く子供でない方が良いのだが……左右の目がザッパザッパと泳いでおるぞ。


 貴族の娘であう? もう少し、処世術を身につけておいた方が良いのでは……。

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