プロローグ・ぶち切れ聖女の強襲①~ケモック二世side
「あいつらよ、ケモック二世」
我の名は、ザケルバード。決してケモック二世ではない。
我は今、立派な角が生えた黒山羊へと獣化しておる。
そんな我にそう告げたのは、赤紫色の髪をポニーテールにした12歳の少女。全体的にチマッとした、可愛らしい見た目だ。
我と少女――フィデリカとは、訳あって共におる。
フィデリカは城の大木から伸びた枝に腰掛け、とある窓を指差した。フィデリカの、角度によって宝石のような煌めきを放つ薄緑色の瞳は、心なしか……いや、完全に目が据わっておるな……。
「……本気か、フィデリカ……」
我はフィデリカの下に生えた、同じく太めの枝に行儀良く座り、諦め半分、ドン引き半分な気分で問う。
獣化しても、我は人の言葉や魔法を扱う事ができる。
「ふぐっ!?」
ところが次の瞬間、我は驚い身を竦め、呻く。
フィデリカが我の上に、馬に跨がるかのように、勢いよく乗ったからだ。
「黙って飛び乗るな! いや、それよりやるのか? 本当にやるのか? また今度にしないか?」
我は、フィデリカが何をしようとしておるのか、既に聞かされておる。
本当に、止めてもらいたい。しかしフィデリカの機嫌を損ねる事も、したくない。
なのにこの小娘の、何と無情な事よ……。
フィデリカは額から後ろに向かって生える我の角を、むんずと掴んだ。
「今度? 馬鹿なのかしら、ケモック二世。いつやるの? 今でしょう! 【激マズ青汁苦甘辛特製栄養ゲロドリンク】の餌食にしてやるわ!」
フィデリカが激マズ~なドリンクを作っておる場を、我は見ておる。
激マズそうな、体を痺れさせそうな、鼻をひん曲げそうな、生命の危機に陥れそうな液体を、寸胴鍋いっぱいに作っておった。
つまり在庫はまだまだ、たくさんある。
あの激臭を思い出し、げんなりして項垂れそうになった我の腹を、フィデリカが跨がった両足で蹴る。
「ぐっふ、我は馬ではな……」
「【激マズ青汁苦甘辛特製栄養ゲロドリンク】の餌食にされたくなくば、行きなさい!」
「ヒッ! あのドリンクは勘弁してくれ!」
いずれ我も激マズ~なドリンクを飲まねばならぬ身。
なれど味は改良できると聞いておる!
ついつい、うっかりと怯えた悲鳴を上げてしまった我は、言うが早いか木々の枝を軽やかに跳ぶ。
「ガゥアアア!」
山羊ではあるが獣らしい咆哮を上げ、閉まった窓を蹴り割り、人の気配がする方を見やる。
大きな寝台の前に置かれた椅子。そこに座っていたのは、淡いピンク色の髪をした、間違いなく高貴だろう身分の令嬢だ。
我はまず、寝台の向こう側に座っていた令嬢の首元を飾る、自己主張の激しい首飾りに目がいく。
首飾りにはまる、豪奢なマゼンダピンクの宝石。その宝石に宿る【決して赦してはならぬ力】に気づいたのだ。
次いで、豪奢な首飾りが似合わぬ童顔な令嬢の顔を見て、我は一瞬、戸惑う。
この令嬢に会った事など、一度もない。
なのに何故かこの令嬢、いや、この女への激しい嫌悪感と憎悪が、我の心の奥底から湧いてきた。
「グルルル……」
「ま、魔獣!? 誰か……」
思わず憎悪に任せて唸れば、我の蹄が割れ伸び、鋭い爪へと変化した。そんな我に驚いたのであろう。
女は後ろにあった、離れたドアに向かって駆けようとした。
我は鋭い爪で女を裂いてやるつもりで、跳びかかろうと脚に力をこめた。いや、こめようとした。
その時だ。
「こんの、むかつくピンク女ぁ!」
「ふぐっ!?」
「相っ変わらず、似合わない飾りを首からぶら下げてんじゃないわよ! アンタは後から相手してやるから、首を洗いながら、大人しく待ってろぉ!」
言いながら、我の背を蹴ったフィデリカが、寝台を飛び越え、女の腹に蹴りを食らわせた。
なお、途中の呻き声は、フィデリカに背中を蹴られた我が発したものだ。
フィデリカよ、脚力が強すぎる。ついでに口も悪すぎる。一応、お前は伯爵令嬢……。
「んぎゅっ!?」
我と同じくフィデリカの脚力を食らった女は、悶絶して白目を剥き――。
「何事でっがはぁっ!?」
タイミングよくドアを開け、駆け込んできた何者かにぶつかった。
くぐもった声を上げ、吹っ飛んできた女を受け止め――る事なく、二人して大理石の床に転がった。
「「「し、神官長!?」」」
え、神官長だったのか!? と我はびっくりしたが、無言でポーカーフェイスを保つ。
あ、爪が蹄に戻ったな。
しかし神官長の後ろに控えていた、三人いるお付きの神官達は、突然の大事故に度肝を抜かれたのだろう。オロオロと神官長の周りを取り囲んだ。
お久しぶりです!
本日、投稿タイミングの研究がてら、4話連続投稿していってますヾ(≧∇≦)
しばらくは毎日投稿です(*´∀`*)
ジャンルは最後まで悩みましたが、ファンタジーにしました!
詳しくは活動報告でくわしく書いてるので、良ければご覧下さいm(_ _)m
◆お知らせ◆
3月5日にベリーズファンタジーより、新刊が発売されます!
【稀代の悪女】と作風が似て、シリアスが逃亡する書き下ろし作品です( ´艸`)
規約違反になるので、小説投稿サイトのベリーズカフェでのみ一章まで公開しています。
https://www.berrys-cafe.jp/book/n1773402
noteとはてなブログで販売サイトを勝手にまとめているので、試し読みしてお好みでしたら、ご購入下さい!
◎note◎
https://note.com/arashihanako1/n/n69e8ad362b89
◎はてなブログ◎
https://arahana-ashika.com/entry/2026/02/15/124149
◆ヒロイン小話◆
何故か稀代の悪女の編集様の時同様、ベリーズファンタジー編集様とも
「ヒロインは元々、純粋じゃないので、純粋からの悪女的な過程はありませんよ?中身年食った人間なんで、転生しても最初から悪女寄り、てか人生経験ある普通の人間ですよ?」的なやり取りをしたので、どちらのヒロインも根本性格が似てます(・∀・)




