双生の星
母馬がいななきと共にぶるりと首を震わせると、ワラの上に仔馬が生み落とされた。
仔馬は震える脚に力を入れて、懸命に立ちあがろうとしている。母馬が仔馬の毛づくろいをしはじめた。
一部始終を眺めていた少女は、仔馬が立ち上がったのを見届けてから、馬小屋の外に出た。
「生まれた?」
「生まれた」
少女は双子の兄にならって、夜空を見上げる。
星の光が瞬いていた。
***
地平線に太陽が上る。朱金の輝きが荒野を照らし出す。
馬の群れが駆け出して、砂塵を巻き起こしていく。
「生まれた仔馬も、いずれああなるのかな」
吹き渡る乾いた風に少女がそっとまばたきをする横で、双子の兄は足元を眺めている。
砂に埋もれていた古代の剣がわずかにその姿を見せる。
大地に広がる砂は、ときに山となり、谷となり、なだらかに風の模様を映している。
吹き抜ける風が、剣を再び砂の中に埋没させた。
「おやすみ」
***
川のせせらぎの中で、小魚が跳ねた。
遠くに見える山はうっすらと雪化粧をしている。
シロツメクサやタンポポの生えた高原で、少女はブランコに揺られている。
双子の兄は、すぐそばの森から切り出したばかりの木材に座って、妹の様子を眺めている。
「楽しい?」
「わからない」
そう言うと、少女はブランコから飛び降りた。
少女の足元に生えていたタンポポの綿毛が、一斉に空へと飛んでいく。
白い綿毛が飛んでいった後には、誰もいない。
ブランコだけが、揺れていた。
***
遠くからウミネコの鳴き声と、船の汽笛が聞こえる。
少女は波打ち際に立っている。
砂浜と白波が少女の素足に絡みついては、戯れるように逃げていく。
少し離れた場所で、双子の兄はその様子を静かに見守っている。
潮騒と共に波の動きがくり返され、潮の匂いを漂わせる。
「心臓みたい」
「海は生命の根源だからね」
寄せては返す波が、脈動のように砂浜を覆い、戻っていく。
***
しんしんと降り積もる雪の気配がある。
大きなステンドグラスの奥から、雪灯りが差し込んでいる。
ガラスの色をまとった光が教会のオルガンに当たっていた。
双子の兄はそっと妹の手をとり、ポケットから指輪を取り出すと、妹の手のひらに乗せた。
吹き込んだすきま風に、ろうそくの炎が揺れる。
「結婚式みたい」
「違うよ。これは、君が誰のものでもなく、君自身のものであるための指輪」
少女はくすぐったそうに笑うと、手のひらの指輪を自分の指にそっとつけた。
教会の中央に敷かれたやわらかなじゅうたんを踏みしめて、少女は扉を開けた。
雪が降り積もっている。
全てのものを覆いつくすように積もった雪は、白く輝いていた。
少女が歩くと足元からざくざくと音がする。
雪の結晶のような指輪の清廉な輝きが、その指にはあった。
雪に残った足跡は、一つきりだ。
少女の吐き出した白い息が、雪原に流れて溶けていった。
<おわり>




