絆が紡ぐ終わりなき物語
この物語は、太幽が提唱する「太幽宇宙論」から派生した、もう一つの宇宙の記録である。
すべてを内包する親ブラックホール、そして超新星爆発によって生まれた生命の種。その壮大なサイクルの中で、一つの惑星が誕生し、生命は進化を遂げていった。
太古のブラックホールが持つ根源的な「捕食」という摂理は、やがて生命の「飢え」、そして「闘争」となり、ついには人類の「争い」へと形を変える。
しかし、その果てに人々が手に入れたのは、より深く、より普遍的な「絆」という名の希望だった。
この物語は、そんな宇宙の歴史を辿る【太幽の5曲に渡る組曲】で構成された2部構成の物語
第一巡目の記録との後、その歴史の中で偶然出会った二人の男女が、互いの存在を通して「絆」の真の意味を見出す第二巡目の記録で構成されている。
これは、ただの空想物語ではない。誰もが自己投影ができる主人公であり、君と僕の、そしてこの宇宙の、終わりなき物語である。
絆が紡ぐ、終わりなき物語
第一部:アカシックレコードの歴史
プロローグ:天元の星
遥か遠い昔、太古の宇宙に、一つの超巨大なブラックホールが静かに、しかし確実にその存在を広げていた。
それは、すべての始まりを内包する「親」であった。
親ブラックホールの周りには、いつか飲み込まれる運命にある小さな「子」が漂っていた。
そして、その子ブラックホールが別の小さなブラックホールを捕食した時、内部に凝縮されていた光と熱が臨界点を超え、超新星爆発規模の轟音と共に、一つの宇宙が産声を上げた。
この瞬間、生命の設計図が刻まれた「進化の種」が、宇宙の隅々にまで散りばめられた。
それはまるで、書道家が墨を含んだ筆を紙に走らせるように、無数の星々が生まれていく光景だった。
宇宙のあらゆる場所で超新星爆発が起こり、更に無数の衝突や核融合が始まり星々や恒星が誕生、その中の一つが天の川銀河と呼ばれる一つの集合団が作られた
この爆発によって、新たな「進化の種」が撒き散らされ、この物語の舞台となる星の誕生へと繋がっていった。
遠心力によって恒星から弾き出された物質が、再び重力に引き寄せられ、塵やガスが集まる。
それはまるで一つの生命体のように、数十億年という時間をかけて、一つの惑星へと形を変えていった。
この惑星は、他の星々とは一線を画す、奇跡の星だった。
その表面は水に覆われ、恒星の光の恩恵を十分に受けていた。
そして、その深い海の中で、超新星爆発によってもたらされた「進化の種」が、静かに、しかし確実に目覚めの時を待っていたのだ。
第一章:喰らう連鎖と陸への挑戦
原始の海に生まれた最初の生命は、ただ光を求めるだけの単純な存在ではなかった。
その細胞には、太古のブラックホールが別のブラックホールを「捕食」し、自らの質量を増やしていった営みと全く同じ、根源的な「飢え」が刻み込まれていた。
微生物たちは、互いにぶつかり合い、より大きな個体を「喰らう」ことで成長していった。
小さな単細胞生物が、より複雑な多細胞生物を捕食し、そのエネルギーを取り込む…それは、激しい命のやり取りだった。
ーなんでもできると思ってたー
彼らは、まだ自分が何者かを知らない。
しかし、その小さな命の中には、未来へと向かう無限の可能性が秘められていた。
この過酷な食物連鎖という名の競争を生き抜くことこそが、彼らが持つ唯一の道であり、この惑星の生命を根源から駆動する原理となった。
この闘争本能は、やがて生命の多様性を生み出していった。
海の中で、光を求めて空へと伸びる藻類、深海で独自の進化を遂げた魚介類、そして、やがて陸地へと進出した両生類や爬虫類。
それぞれが独自の進化を遂げながらも、その遺伝子の深い部分には、他の命を喰らい、自らを成長させるという、宇宙の根源的な摂理が深く刻み込まれていた。
第二章:闇を抜け出す小さな光
恐竜たちがこの星の覇者として君臨した時代、哺乳類の祖先たちは、その巨大な影に怯えながら、ひっそりと生きることを余儀なくされていた。
彼らは、正面から力で立ち向かうのではなく、別の生き残り方を模索した。
それは、身を隠す知恵であり、群れで助け合うという原始的な協力関係だった。
ーなにもかもが飲み込まれてゆく未知の世界ー
巨大な恐竜たちがすべてを支配する世界は、彼らにとって圧倒的な「闇」だった。
彼らは闇夜に紛れて活動し、わずかな光の恩恵を分け合いながら、生き延びる道を必死で探した。
そして、巨大な災厄がこの星を襲った時、彼らはその本能を最大限に発揮した。
空が塵に覆われ、巨大な恐竜たちが次々と倒れていく中、彼らは地面に掘った穴や洞窟に身を潜め、互いの体温で暖を取りながら、絶望の時代を耐え抜いた。
ー深い闇を抜け出すためにー
闇が晴れ、再び太陽の光がこの星に降り注いだ時、彼らの遺伝子に刻まれた「闘争本能」は、別の意味を持つようになっていた。
それは、ただ他の命を喰らうための力ではなく、過酷な環境を生き抜くための「知恵」と、仲間を守るための「勇気」へと変化していたのだ。
第三章:絆という名の夜明け
恐竜が姿を消し、この時代に人類の祖先となる哺乳類が繁栄する時代が訪れた。
彼らは、厳しい自然環境の中で、互いに支え合うことこそが生き残るための最善の策だと知っていた。
これが、人類最初の「絆」の始まりだった。
彼らは役割を分担し、協力して食料を狩り、外敵から身を守る知恵を身につけていった。
この頃、彼らにとって最大の天敵は、巨大な肉食獣や、同じ種族であっても異なる群れに属する者たちだった。
彼らは、単純な力だけでなく、石器という道具を作り、火を操ることで、天敵に立ち向かう術を獲得した。
火を囲み、互いの身を守りながら夜を過ごす時間、そこで交わされる言葉や、心を通わせる行為が彼らを単なる種の集まりから一つの「家族」へと変えていった。
彼らの心に宿る「核のオーラ」は、この時、個々の生命の輝きから、互いを照らし合う温かな光へと変化していったのだ。
第四章:争いと復興の歴史、その爪痕
人類が「絆」という概念を獲得した時代、それは同時に、排他的な「群れ」という意識を強くした時代でもあった。
彼らが作り上げた絆は、同じ血を分かち、同じ言葉を話す者たちの間でしか通用しない、狭く閉鎖的なものだった。
彼らは、より多くの食料や資源、そして「力」を求め、異なる群れとの間に激しい争いを繰り広げるようになった。
太古のブラックホールが別のブラックホールを「捕食」した営みは、遥か長い時を経て、人類の心に根源的な「支配欲」として刻み込まれていた。
それは、自らの存在を広げ、優位に立とうとする、生命の根源的な衝動だった。
彼らは、石器を鉄に変え、火を火薬に変え、より強大な武器を創造していった。
大規模な戦争が繰り返し起こり、人類は自らが築き上げてきた文明を、自らの手で破壊していくという愚かな行為を繰り返した。
巨大な都市は一瞬にして灰燼に帰し、かつて豊かな緑で覆われていた大地は、放射能と死の塵にまみれ、何世紀にもわたって不毛の地となった。
そこには、数えきれない命の叫びと、決して癒えることのない憎しみの爪痕が深く刻み込まれていた。
争いの果てに、ただ虚無と破壊しか残らないという、あまりにも単純で、あまりにも残酷な真実に、その深い絶望の淵で人類はついに気づいた。
焼け焦げた故郷を前に、彼らの心に宿ったのは、再び「絆」を求める切実な願いだった。
戦争の記憶を胸に、彼らは再び互いに手を取り合い、力を合わせ、破壊された街を復興させていった。
争いから生まれた深い溝を埋めるように、異なる群れとの間に新たな「絆」を築き始めたのだ。
それは、もはや血縁や地縁に囚われることなく、異なる文化や思想を持つ者たちが互いを尊重し受け入れ合う、より普遍的なものへと進化していった。
この復興の歴史の中で、人々は単に街を再建するだけでなく、二度と過ちを繰り返さないために、歌や物語、芸術を通して平和の尊さを伝えていった。
争いの爪痕が残る大地に、再び花が咲き、新たな生命が芽生えるように、人類の心にも、平和という名の光が灯されたのだ。
第五章:めぐり逢いの奇跡
復興の時代を経て、この惑星は再び、かつての輝きを取り戻した。
文明は高度に発展し、人々は平和と豊かさを享受するようになった。
しかし、その一方で、情報と物質に溢れた社会は、人々の心を再び孤立させていった。
互いの顔を見ることなく、ただ情報だけを交換する日々。
人類が遠い昔に手に入れた「絆」は、形骸化し、薄れていくように感じられた。
ー何気ない日々こそが奇跡ー
そんな時代に、様々なめぐり逢いがあった…数えきれない人々が行き交う街角で、偶然にも目が合ったという小さな出会いかもしれない。
それは、太古の超新星爆発によって宇宙に散りばめられた進化の種が、何百億年という途方もない時間を経て「核のオーラ」が引き寄せる奇跡
君やみんなが居る…挫けそうになった時には必ずそう考えるようにしている。
君との出会いは、忘れかけていた温かな感情を思い出させてくれた。
表現を追い求める中で、挫けそうになった時、いつも君の存在が支えてくれた。
それは、言葉を交わさずとも、心で通じ合う、深い「絆」だった。
生きてきた今日と言う日が
君に伝える為にあるのならば
なんて伝えよう 恥ずかしいけれど…
この宇宙の壮大な歴史の中で、何のために生まれ、何のために生きてきたのか問い続けてきた。
そして、その答えは君に出会うためにあったのだと気づいた。
君に出会えた事にね
後悔なんて一度もないんだと
この手を握って 心をこめてありがとう
君と出会えたことは、決して偶然ではない、この奇跡の星で、この時代に君という存在と出会い互いの存在を確かめ合ったこと。
それは、遠い昔、人類の祖先が火を囲んで絆を育んだ、あの感動と同じくらい、尊いものだった。