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星空+満月=赤面

 亜子は店番で様々な来客と次第にコミニュケーションを取り対応した。その来客に閉店間近にダサイ格好の少年がやってきた。しかしいつもすぐに消えて不思議な少年だった。  店番が終わると亜子はピアノを弾いた。弾くたび心が洗われるからだ。しかしそんな時ビーリアルに宏樹が仲間に追加され、亜子の心をゆすられた。


 東京では誰もが足早で、よそ見もせず歩く。けど長野では明らかに歩く速度も遅く。おまけによそ見をしながら声までかけてくる。 

 たった数日駄菓子屋で店番しただけなのに、みんな馴れ馴れしく声をかけてきて、手まで振ってくる。わたしはただローソンの新作スイーツを買いに歩いただけだ。 

 わたしは立ち止まり一度夜空を見上げた。星が無限に広がっている。プラネタリウムで見た光景と同じだ。でもこれが本物の星空なんだ。こんな星空見たことがない。月も、こんなに大きくて明るく、しかも今日は満月だ。

 そんな夜空を見上げながら、いったいわたしは、なんでひねくれ、絶望までしているのだろうかとつぶやいた。人間関係? 学校生活? 学業? それとも不幸の種をまく未来? 頭の中が答えの出ない迷路に迷いグチャグチャで感情と一致しない。そんなことすら今は見失い整理がつかない。

 そもそも宏樹が仲間に入るからおかしくなるんだ。

 今は宏樹の責任にしよう。そんな時宏樹が聞いてたかのようにLINE電話をしてきた。

「よォーー亜子。今長野にいるんだって」

 相変わらずぶっきらぼうな態度だ。

「うん」

 わたしは宏樹が仲間に入ったことが気にいらないが、その一言を口から出そうになったが、のみこんだ。わたしはウジウジとして言えない性格だ。それを知ってて宏樹は、よくわたしをいじってくる。

 波留からは『宏樹がどうしてもと言うから、断れなかった』その波留のフレーズが頭に浮かんたけど、これものみこんでしまった。

「亜子聞いてる?」

 宏樹の声のボリュームが上がった。

「聞いてる。で、なに?」

 宏樹の声のトーンが下がった。

「もーう。終業式の時の返事聞いてないけど」

「まだ考え中」

「えっ、まだ考え中? だってディズニー行くだけだぜぇ」

「わたしが優柔不断なのは、宏樹も知ってるでしょ」

「なに逆ギレしてんだよ」

 そうだ宏樹の言う通りだ。わたしは、いったいなににキレているんだろう。

「とにかく早く決めてくれよなぁ」

 宏樹からのLINE電話は切れた。

 宏樹とは中学で同じ硬式テニス部で仲良くなった。    正義感も強くて物事もテキパキと判断して行動に移すタイプだ。全くわたしと真逆だ。まさか高校まで同じとは以外だった。しかも今も硬式テニス部に所属して中心選手だ。わたしは帰宅部だ。

 もう一度空を見上げた。この無数の星がわたしにつきささればわたしはなにも考えなくていいのだろうか? それともこの星のように明るい方向に導いてくれるのだろうか? 燦々と煌めく星に淀んだ諦めのため息を吐いた。

「ちょっときて」

 急にわたしは背後から手首をつかまれた。(急になに? しかも今度はなにが起きたんだ)そんな声も出ずに、引っ張られるように走らされた。

 月明かりのせいか見たことある横顔だ。そうだ最近閉店前に毎日同じ商品を買いにくるダサイくんだ。

「あの子知ってるでしょ」

 わたしが息を切らしながら住宅地の道路を見た。

「安井さんちの娘さん。確かリナちゃん」

 どうしてリナちゃんがこんな道路に立ってるんだろう。

「リナちゃん」

 わたしは声をかけた。

「あっ、げんきやのおねえちゃん」

 リナちゃんがわたしに手を振りながら駆け寄ってきた。すぐに大きな影がリナちゃんを襲うとした。隣のダサイくんがとっさにリナちゃんに駆け寄った。

「安井さん!」

 わたしが震えるような声を出した。

「げんきやのお孫さん」

 リナちゃんがわたしに抱きついてきた。リナちゃんは泣いていた。

「リナちゃんどうしたの?」

 泣くばかりでなにも話さない。

「リナ帰るよ」

 安井父はリナちゃんの手を握ろしているがリナちゃんは拒否した。しかも体は震えていた。

 安井父さんは、強引にリナちゃんの腕をつかもうとしたがわたしに抱きついて離れない。

「嫌だ。帰りたくない。叩かれるもん」

 わたしは、まさかと思い背中の肌を見た。月明かりでもわかる黒あざだ。これはまさしく DVだ。

「早く帰るよ」

 安井父の機嫌が悪くなり舌打ちを何度も繰り返した。何度も店にきた、あの時の穏やかな安井父ではない。

「げんきやに行きたい」

 リナちゃんはポツリとわたしの耳元でささやいた。わたしがリナちゃんを連れて帰ろうとした時だ。月明かりで鈍くひかった。

 まさしくナイフのひかりだ。わたしは、リナちゃんと逃げようとした。

「早く逃げて」

 ダサイくんが安井父に体当たりした。よろけながらナイフを振り回す。

 ダサイくんは再度体当たりをした。

「誰か助けてください」

 こんな腹の底から声を出したことはないわたしだ。

 ダサイくんが悲鳴をあげる声が聞こえた。わたしは振り向くことも歩くことすらできない。足はガクガクして身震いを起こし、腰が抜けそうな恐怖感だ。

 でもリナちゃんを守らねばの思いで、鉄の足を引きずるように誰かに助けを求めた。

「早くリナを返せ」

 安井父の狂乱した声が大きくなった。もうだめだ捕まる。 あとは神に祈るだけだ。

「うぉぉーー!」

 わたしが走る前方に、安井父が吹っ飛び大の字に倒れた。 わたしが恐る恐る後方を振り返るとダサイくんが、肩で息を切らし立っていた。

「大丈夫? ケガない」

 ダサイくんは心配した。真っ白なタンクトップは、泥と血で汚れていた。

「肩から血がで出るよ」

「あーあー、かすり傷だよ」

 「その手ねぐい?」

 以前わたしが過呼吸をおこしかけた時、近くに落ちていた桜紋柄の手ぬぐいと同じだ。今もわたしが保管している。

 もしかしてあの時、声をかけたのはダサイくんだ。

「おれの名前、ダサイじゃなくて雅矢だよ」

「えっ」

(ゴッホゴッホ) わたしは思わず咳き込んだ。ダサイって名前を知ってたんだ。わたしは月明かりに赤面した。

 今週も閲覧していただきありがとうございます。

 亜子も長野での店番を何とか、こなしながら自分探しをしてます。あまり表現することが苦手な亜子だが、ゆっくり自分の中の何かが動こうとしてます。

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