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episode60〜弾き手〜

たくさんの作品から見ていただき、ありがとうございます。

ボーカロイド系の音楽を取り入れた作品になりますが、あまり詳しくないのが現状です。

暖かい心で呼んで頂けると嬉しいです。


「ナナ、大事ないか?」


リリックはナナを労るように、背中を摩った。


「はい… 身体は何ともありませんが… ちょっと… いや、大分諸劇的でしたね… 私には刺激が強すぎて… 」


ナナは、抜けた腰が戻らなかった。


「… はぁ… このような形になるとはな… 」


(あれ?)


ナナはリリックのその表情っを見て、何か勘付いたように、その横顔を見つめた。


すると、側にいたネイルがリリックの側に近寄り、気まずいように言葉を発した。


「恐れながら、リリック様。ピアノを弾ける者があの楽団員の男しかいないようで… 」


「何? それはおかしいな。フィラン王女によると、ピアノが弾ける者は、この国には何人かはいると聞いたが?」


「それが… 何年か前に既にこの国からはいなくなっていたようで」


「ん? それをフィランが知らなかったということか?」


(ん? フィラン?)


「左様にございます。何故かフィラン王女の耳には、上手く入らないようにされていたようで… 弾き手となると、おそらくあの男… もしくは」


「そうか。やはり奴に… あ… 」


「… そう… ですね、あの手ではもう弾くことは不可能かと」


リリックはその腕を切り離した事を、ちょっぴり後悔した。


「ならば、口で鍵盤の位置を言わせるか? または、その音源を口ずさめさせるか? 脅せば性格に言葉にするだろう?」


「それが… 」


「何だ? どうとでもできるだろう?」


「… 更に状況は悪く… 奴は、もう話すこともできません」


「ん? どういうことだ?」


「先程、自害致しました」


「… っはぁ… なるほど… さっきの ’アレ’ はそういうことだったのか… 」


「ん? どういう事ですか?」


ナナはその言葉が気になって、思わず口を挟んだ。


「奴が去り際に言ったあれだ。


『未だ味わった事のない最大の楽しみ』


それは、 ’自死’ の事を言っていたんだな。最大の楽しみか… 誠に気色の悪い男だ」


そう言うと、少しだけ表情を歪めたリリック。

ナナはそれを目にした瞬間、彼の事が少し心配になった。


「最悪だ… ではこの国から弾ける者が他にいないか、早急に探し出し… 」


すると、まさかの立候補の腕がその場に伸びた。


「… 僕が… 弾くよ」


その腕は、セダリアから伸びていた。


「え!? セダさん!? 確かに楽団員ですし、楽器は堪能ですが… ピアノだけは、弾いてるのを見た事が… 」


「いや… 確かに、セダリアならそれができるな」


リリックも了承したかのように頷いた。


「え? え?」


「僕は元々はピアノから始めたんだ… ある事がきっかけで、ずっと避けてたんだけど… 今はそんな事も言ってられない。まさかここで弾くとはね… 」


(訳あり? どう言うことなの? めっちゃ嫌そうだけど… そうだ!)


「あ、あのセダさん! もしピアノを弾くのに抵抗があるようでしたら、口ずさんでもらってもかまいませんよ?」


ナナが提案した言葉に対し、ニコリと笑うセダリア。


「ふふ、ありがとう。気を遣ってくれているんだね? でも、これは僕も弾くべきだから… 」


ナナは、その言葉の真意がわからずにいた。


「そうですか… では、譜読みの程、よろしくお願いします」


その間、ナナは少し気になっていた事を、近くにいたネイルへと尋ねた。


「あの… 先程、リリック様は王女様の事を敬称なしで口にしていた気がしたのですが… 」


「あぁ… はい。レクア様もそうでございますが、リリック様とセダリア様、そしてこの国の王族である御二方は皆、幼き頃からの知り合いでございますゆえ… その名残りが出てしまったのでしょう」


「なるほど」


(幼馴染って事か… それにしても、王族の幼き遊びってどんな事するんだろう? … 気になる)


ナナはそう思いながら、リリックの方に視線を飛ばした。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


そして、それはすぐに終わった。

読める範囲での譜面を覚えたセダリアは、ニコリと笑うとその場から出ようと促した。


一度、王宮のピアノがある場所まで戻るもんだと思っていた。


しかし、忘れてはいけない。

彼らは王族であり、最高峰の権力者だ。

いつの間にか、建物の外には立派なピアノが運ばれてきていたのだ。


「… さすがです」


今度は、ナナの言葉の意図が分からずにいた王族達。

そして、すぐにセダリアはその手を走らせた。



最初だけだった。

繋がるその音は、本当に最初の数音のみ。

それからは、そのページに刻まれた音が飛び飛びに跳ねるのみだった。


一度でもわかるはずのその耳は、何度も何度もねだるようにその音を求めた。


それに応えるように、セダリアも何度も繰り返す。


しかし、そこにいる誰もが分かっていた。


(この部分のみを弾けたとしても、あの楽譜に記されている曲は成立しない… 他に何か意味があるのか… ?)


そう思いながらも、様子を見守るリリック。


ふとナナの表情に、ある変化があった事に気が付いた。


「……… 」


ナナは、その音以上の旋律を動かしていた。


その手は、空を舞うかのように止めどなく繋がれる。


「… リリック様… 」


「ん?」


「私… この曲、知っているかもしれません… 」





最後まで読んで頂き、ありがとうございます。


(基本歌は歌っていません)

あくまでも、作者が聞きながら想像し、執筆した楽曲を参考までに載せております。もちろんお好きな曲を聴きながら、楽しんで読んで頂けるといいと思います。


文章に乱れや疑問がある場合もメッセージ等頂けると嬉しいです。

また、心ばかりの評価なども頂ければ大いに喜びますので、宜しくお願いします。

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