episode6〜価値〜
たくさんの作品から見ていただき、ありがとうございます。
ボーカロイド系の音楽を取り入れた作品になりますが、あまり詳しくないのが現状です。
暖かい心で呼んで頂けると嬉しいです。
翌日、言われた通りに、翌晩もその部屋の前に来たナナ。
ここに来るとやはり緊張し、足が震える。
部屋の前には、昨日と変わらず護衛の兵が両サイドに立っていた。
片方は昨日、ナナに怒号を飛ばした者だった。
視線が痛い。
部屋にその足を踏み入れる。
本を片手にしたままのリリックは、こちらに反応することなく、読み続けていた。
目線すら向けない。
「あ、えと… 失礼します」
(勝手に弾いても良いのかな?)
そう思いながら、側近らしき者に目を向けたナナ。
彼はコクンと頷くと、目線をピアノの方に向けて合図を送ってきた。
そして、ナナは昨日とは違う曲を弾き始めた。
いつ殺されるかもわからないので、とりあえず好きな曲から行こうと鍵盤に手を置き、指を走らせた。
その間のリリックの様子はわからなかった。
しかし、側近は見ていた。
その手に持つ本の位置は変わらない。
そして、そのページが進んでいないことや、視覚と聴覚の神経が、ピアノへと意識を向けていたこと。
側近は勘繰る。
しかし、主人の思考は長年仕えている彼でも分からなかった。
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ナナの陰湿な生活は、最も簡単に脱出の機を迎えていた。
心が削れるあの時とは、打って変わっての生活だ。
もちろん、穏やか限定とは言えなかった。
昼間は、庭師であるセダリアの助手として。
夜は、リリック殿下専属のピアノ演奏者として。
そんな日常に慣れてきたある日、また部屋からコインが無くなった。
(はぁ… 懲りないなぁ… )
ナナは、少しの心の余裕が出来たおかげか、これを機にある事を仕掛けようと試みた。
ある日、臨時収入が入ったと吹聴し、今度は部屋ではなく、庭師の温室に置いておく事にした。
いつもとは違う行動に、不信感を得ないだろうか。
ナナは少し懸念したが、その心配は無さそうだった。
彼女らは、飢えていた。
何にと言うと、一概にとは言えない。
様々な種の欲である。
そして、最も簡単に罠に引っかかってくれたのだ。
暗がりの中、顰める声と人影。
3人程だろうか。
灯りを片手にナナは、その姿を彼女達の背後から現した。
「そんな物に… 何の価値があるの?」
突然の声に、驚きを隠せないでいるようだ。
上擦った言葉が、それを証明していた。
「… っ!? え? な、何を言っているの? そんな物って何の事かしら? 私達はただ… 」
(フードなんて被って… 見るからに怪しいじゃない)
「ただ… その手に持っているモノを探しにきた? そのお金を盗みに来ただけ?」
「な、何言って…! 私達は昼間、ここに来た時に落とし物をして、それを探しに来ただけよ!」
「白々しい… どうぞ? 私にとってそんな物、何の価値にもならないから、どうぞ持っていって?」
「いやっ… だから私達はっ… 」
「だって私、使い方わからないもの」
「え?」
「それを使えって手に入るような物に、今は望みがないし。それに… そんなものよりこの生活を奪われたくないの」
「… っく」
「私は平穏にただ暮らしたいだけ… せっかく本物で存分に弾けるようになって、あなた達から解放されたと思ったのに。まだこんな事続けているの? 暇なの?」
「な、何を… 」
「あと、もう一度聞いておくけど、それ… あなた達は何に使うの?」
「え?」
そう言われ、袋の中を見る。
中身は全くの偽物。
それに何かと交換できるような価値は、全く無かった。
ただの石ころが入っているだけだった。
それを目にした瞬間、激情する女達。
その重い袋をナナに向かって投げ付けたのだ。
しかし、痛みが何処にも走らなかった。
側で様子を伺っていたセダリアがその身を呈して、阻止したのだ。
その手の甲からは血が滴っていた。
滅多に見せないその表情は、彼女を黙らせるのに効果は絶大であった。
「いけないなぁ… 」
深く帽子を被るセダリア。
「君達、そんなにナナの事が好きなの? そんなに執着して… 異常じゃない?」
「な、何よ! そんなわけないじゃない!」
睨み続けるナナとセダリア。
その視線は更に鋭くなる。
「べ、別に言いふらしたいなら言いふらせば? あんた達がどうこう言いふらした所で、誰が信じ… え… ?」
すると、帽子をゆっくりと外すセダリア。
「そお? それなら、遠慮はいらないね? 僕… ここの人達には、結構信頼してもらってる方なんだけど?」
その姿を見た彼女達は、その表情を強張らせた。
「あ、あなた様は!」
「え?」
状況を理解できずにいるナナ。
「でも… ちゃんと謝るなら… 今後一切ナナには嫌な事をしないって断言するなら、目を瞑るよ? どうする?」
その言葉に、ゆっくりとナナの方へと身体を向けた。
「ごめん… なさい。もう… しないわ」
「えぇ。もうしない。謝るわ… 」
「私も… 今まで悪いことしたわ。もう嫌な事はしない… 」
セダリアは、表情を少し和らげ、ナナに尋ねた。
「ナナ? どお?」
「え… あ、う、うん… わかった」
彼女達はその言葉を聞くと、一礼し足早にその場を後にした。
(どういうこと? セダさんって一体… )
緊張が少しだけ緩んだナナはやっと、視界を広げた。
その手に血が流れ落ちている事に、気が付いたのだ。
「セダさん! 血が!」
「あぁこのくらい大した事ないよ。それに、ナナに怪我がなくて良かった」
そう言って、無心に手当をするナナを見て反対の手でその頭を撫でた。
「わ、私なんか庇って… 後悔しても知りませんからね!」
「後悔? そんなものするつもりはないし、むしろこの怪我が嬉しいかな? 守れて良かったから」
「え… 嬉しい? Mですか?」
「ん? M?」
「あ、いえ、何でもありません。とにかく私の事は大丈夫ですから」
その言葉に、セダリアは少し切なそうな顔を浮かべた。
その表情をナナは知る由もなかった。
最後まで読んで頂き、ありがとうございます。
冒頭にて、翌日、命じられた通りにナナが弾いた曲は、MIMIさんの【ルルージュ】という曲です。
(基本歌は歌っていません)
今後、作者が聞きながら執筆した楽曲をその都度、参考までに載せておきます。
もちろんお好きな曲を聴きながら、楽しんで読んで頂けるといいと思います。
あまり、ボーカロイド音楽を聴いた事がないので、何かオススメなのがあれば、メッセージ等下さると嬉しいです。
(ピアノの旋律がある物だと尚、嬉しいです)
文章に乱れや疑問がある場合もメッセージ等頂けると嬉しいです。
また、心ばかりの評価なども頂ければ大いに喜びますので、宜しくお願いします。