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episode55〜目的〜

たくさんの作品から見ていただき、ありがとうございます。

ボーカロイド系の音楽を取り入れた作品になりますが、あまり詳しくないのが現状です。

暖かい心で呼んで頂けると嬉しいです。


ナナが軟禁されていたあの場所は、このサズリナ国からそう離れていないという。

使われていない酒場の地下だった。


その場には現在、終日見張りをつけていると言う。


ナナ達も本来なら、本日帰国する予定であった。


しかし、事が事だけに、そうもいかなくなったのだ。


滞在期間を延ばす事を選択したリリック。

もちろん国王は快く承諾してくれた。

むしろ、客であるリリック達に、この国の者が迷惑をかけてしまった事に詫びていた。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


ナナとリリックの部屋には、セダリアとこの国の殿下であるレクアが訪ねていた。


事の詳細を共有する為だ。

そしてもちろんこの国で起こった出来事を国王陛下に報告ためにも、レクアは真剣に耳を傾けていた。


複数の考察がその場に飛び交う。


「あの男の言う、情報提供者であるモグラがこの城に入り込んでいた。それが誰なのか一刻も早く知りたいところだが… 流石にここにはもういないだろうな」


リリックがそう漏らすと、今度はレクアがその口を開いた。


「そいつはおそらく、晩餐会でのナナのあの演奏を聴いて知ったのだろう? てことはやはり、モグラはあの場所にいたのか? 一体いつからだ… 」


「招待客に紛れ込んでいた、もしくは使用人として潜り込んでいたのか… 今となってはあの人数では、探し出すことは困難だろう」


「男の目的はおそらく、あのピアノに何かを起こさせる事だ。それが乱雑になった鍵盤を完璧に弾きこなす事である… と奴は考えていたようだが、ナナにとってそれは見当違いだったと気が付いたんだろう?」


ナナはコクンと頷いた。


「振り出しに戻ったと言うことか… 」


「あぁ、おそらくな」


そう言いながら、リリックはセダリアの方に視線を飛ばした。


「それで… セダ。お前は何故あのピアノを探していたんだ?」


そう、心当たりがないかのように聞く。


「何故って… それは… ねぇ、リリィ? 僕らが幼かった頃の事を覚えてる?」


「何だ急に?」


「僕がほら… 没頭していたあの… 」


「花か? いや、あの時お前は確か…… りんごの… 」


(りんごか… 確かに掠ってはいるが… 記憶にないか)


「… ううん、ならいいんだ」


「ん? そうか?」


(え? 何だ? 何っ!? めぇっっちゃ気になるんですけど!?)


ナナは、2人を交互に見た。


しかし両者はその付き合いからか、深く追及もせず、話を元に戻した。


「僕があのピアノを探し始めたのはほんの数年前。ある噂からだった。

しかし、それを破棄しようと業者に依頼された者は、一度は直そうと試みた。うまくいけば、転売出来るからな。それが調律どころではなく、完全に使い物にならないと判断した業者は、それを上手い具合に分解しようとした。壊れていない部品を売ろうと思ったんだろうな。

ピアノはそう安くはない。部品1つでもいい価値になるだろう。… そこからだった」


「解体すらできなかったのね?」


ナナの言葉に、深く頷くセダリア。


「どんなに細い部品を引っこ抜こうとも、びくともしないピアノに違和感を感じたそうだ。

遂には、その手に伐採用の大きな斧を持ち出し、そのピアノへと振り上げた。そして、力いっぱい命中させたのだが… 」


「… それでも、壊れなかった?」


「あぁ。恐ろしくなった業者は、その場から逃げ出した。その手に滲んだ血は最終的には、大量に出血していたらしい。その進んだ方向を指し示すように、溢れた血液だけを残し、その業者は… 姿を消した」


(きゃーー! ホラー! 怖すぎる! なにそのグリム童話みたいな話!)


そう思いながら、ナナは寒気が止まらなかった。


「しかし、その噂を聞いたのはこの国ではなく、我が国パルティシオン国だった」


(そんな噂あったか? いや、待てよ… 確かに)


「… 少しだけ耳にしたことがある。ある者が古いピアノを破壊しようとし、失敗に終わるとそのまま何処かへといなくなったと… まぁ気にも留めなかったがな」


(確かにあの時のリリックは思春期で、荒れに荒れている時期だったからな… )


(でも記憶にはあるんだ?)


ナナはそう思いながら、そのピアノの行方を聞いた。


「その置き去りにされたピアノは、その後どうなったの?」


「その場をくまなく探したそうだが、何処にもなかった。何一つ残っていなかったそうだ」


「ピアノごと全て?」


ナナのその言葉に、セダリアは首を横に振った。


「いいや… そこにあった全ての物だ。業者の仕事場である近くにあった古屋含め、その半径10メートル程の距離全てだ」


「っな! 本当に!? えっ!? ちょっと! リリック様!? これも頭に残っておりませんか?」


ナナが驚く一方で、リリックはその表情ひとつ変えずにいた。


「あぁ、ん? うーん、確かに聞いたような」


その曖昧な記憶の中、優秀な側近ネイルが言葉を出した。


「リリック様、確かにそのような報告がございました。そして、それは何かの爆発による業者の事故により、処理されたかと… 」


「あぁ… 記憶には… ある」


(えっ!? 本当にっ!?)


ナナは再度、その首をリリックの方へと回した。


「それからだ。僕はそのピアノが気になり探し出すことにした」


「探し出すって言っても、爆発によって処理された事なら、既にないと考えた方が自然じゃないですか?」


ナナはセダリアが、何故その呪われたようなピアノを探し出そうとしていたのか不思議でならなかった。


「そうだな。しかし、すぐに目撃情報が浮上したんだ。え? その翌日の事だ」


その言葉に、リリックは表情を少し戻した。


「思い出した。あの最北端にある雪国でじゃないか?」


「うん、そうだよ。ここから早馬を出しても3ヶ月はかかるあの雪国で… それを耳にしたのはそれから半年後の事だったが」


「えっ!? 3ヶ月!? どんだけ遠いんですか!?」


「そうなんだ。遠い。とても遠いその国にこの国からピアノが忽然と消えた」


ナナは更に顔が青ざめた。


「それだけではない。俺が驚いたのは、その半年間の間に、様々な所でそのピアノの目撃証言があったからだ」


ナナはそれを、本当にあった恐怖のピアノと頭の中で認定した。


次々との話に、段々とその手の震えが止まらずにいた。

何故なら、あのピアノをつい昨日何度も弾いてしまったのだから。


「あ、あ、あの… ちなみにそのピアノを弾いた者は何人ほど?」


「確かに興味本位や確認する為に、その鍵盤に触れた者は何人かいたと聞いた。しかし… 」


「しかし!?」


「誰1人音を奏でられる者はいなかった。まぁ、あの鍵盤だ。少し走らせただけで、使い物にならないと思ったからじゃないかな?」


ナナはその言葉の後が聞きたかった。


「その後、ピアノを弾いた者はどうなったんでしょうか?」


「え? どうなったって? 特には… その後に関しての報告はないけど?」


「転々と移動するピアノか… まるで生きているかのようだな… 」


リリックのその言葉に、ネイルはボソリと口を出した。


「… リリック様… その時も同じようなこと申しておりましたよ?」


「ん?」


「あ、いえ、失礼致しました」


「しかし、あまり詳しく議題に上がるような重要事項ではないように思えたが? 転々としていた所で、特に危害があったと言う報告はない。例の業者以外はな」


「あぁ確かにそうだね。だから、そのうち議題に上がることも無くなった。その噂だけがたまに飛び交うくらいで。だから、元々興味のなかったリリックには全く耳に残ってないんじゃないかな?」


「それで、やっと見つけ出したと言うことか?」


「あぁ、サズリナにあると聞いた時には、既にナナ達が向かっていたからね。… それで、何か嫌な予感がしたんだ。ナナの演奏会と重なるこの時に何か起こるんじゃないかって… それが事実起こってしまった。最悪な結果でね」


ナナはその罪悪感のある言葉に、顔を上げて言った。


「セダさん!? 最悪なんかじゃないですよ!?」


「え? だってこの通り、あのピアノに出会えました! しかもまだ私達の手中にあるじゃないですか! あ… まだありますよね?」


ネイルはコクンと頷いた。


「それに、あのピアノはボロボロだけど、弾ける事も証明できました! も、もしかしたらこの後呪いの出来事が起こるかもしれませんが… 」


「ナナ… 」


ナナは必死に恐怖を堪えながらも、セダリアにとって少しでも励ましになるような言葉を必死に探した。


それが本当に彼にとっていい事なのか、この時のナナにはまだわからなかった。





最後まで読んで頂き、ありがとうございます。


(基本歌は歌っていません)

あくまでも、作者が聞きながら想像し、執筆した楽曲を参考までに載せております。もちろんお好きな曲を聴きながら、楽しんで読んで頂けるといいと思います。


文章に乱れや疑問がある場合もメッセージ等頂けると嬉しいです。

また、心ばかりの評価なども頂ければ大いに喜びますので、宜しくお願いします。

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