episode4〜庭師〜
たくさんの作品から見ていただき、ありがとうございます。
ボーカロイド系の音楽を取り入れた作品になりますが、あまり詳しくないのが現状です。
暖かい心で呼んで頂けると嬉しいです。
そして、翌日ソレはきた。
ナナは言われた通りに、芸を披露しただけだ。
なのに、目立ってしまったことで、ソレが妬みとして返ってきたのだ。
「なんなの? 随分調子に乗ったようね?」
そして、その瞬間、光る何かが横切ると共に、視界が開かれた。
目の下まで伸びていた前髪を、突然切られたのだ。
恐怖が、一気に湧き上がってきた。
更には悔しさと恥ずかしさも込み上がり、ナナはその場から逃げるように走った。
(酷いっ… もう… もうっ嫌だ!!)
ナナは今まで我慢していた感情が、一気に迫り上がって来た。
とめどなく流れる涙。
視界は開けたのに、涙のせいで前がよく見えない。
(嫌だ嫌だ嫌だ! 何でっ… 何でいつもこんな… っばかり… お母さん… おばあちゃん! 会いたいよ! 帰りたい… )
しかし次の瞬間、何処に向かっているのかもわからないナナの腕を、誰かが一瞬にして捕らえた。
身体に衝動が走る。
「ねぇ、君っ! 君は、昨日のピアノの子だよね!?」
「え?」
「な、な、… っぐ… ち、違いますっ! 人違いです!」
「えっ!? てかその髪っ… 一体何が… それに、そんなに泣いて… 」
ナナはその言葉に、もう片方の腕で咄嗟に顔を覆った。
「人違いなんかじゃないよね? だってその首元の傷… 」
その言葉に、首共も一緒に隠そうとするナナ。
この傷は、生まれた時からあるものだと聞かされていた。
この傷のせいで、嫌なあだ名がついたこともあった。
「昨日の伴奏の時、あの時に弓を落とした時に見えたんだ」
「へ? ゆ、弓?」
「そう… 邪魔するつもりはなかったんだけど、あまりにも君の演奏が凄くて… 」
(あ… あの時の何かが落ちる音って… )
「僕は昨日あの場に演奏者としていたから。ヴァイオリンのね」
「そう… でしたか」
「やっぱり! 君だよね? 凄かったよ! あの演奏! 久しぶりに心躍っ… 」
「あっ、あのっ! … わ、私だということは、内緒にしていただけませんか!?」
「え? 何で?」
「これ以上… 」
「ん?」
「私はただ、穏和に過ごしたいだけなんです… だから、お願いしますっ」
ナナの必死なその言葉を聞いた演奏者は、少し考えるように俯いた。
「うーん… ごめん、それは出来ないかな」
「えっ… な、何で!?」
「君は知らないの?」
その言葉に首を傾げるナナの表情を見て、大きなため息を放つ演奏者。
「… はぁぁ、っもう、あれから大変だったんだよぅ? 横暴な命令が下されてね。すぐに追いかけたのに、君、足速いし」
「横暴な命令… ?」
「うん! 高貴なお方がね、今すぐ連れて来いって。あの後、晩餐会もお開きになっちゃうし。演奏もまだ残ってたのに。あぁ、折角練習もしたのになぁ」
「ちゅ、中断したんですか!? あの晩餐会をっ!?」
「うん! ほんっと困っちゃうよ! でもあいつが人に興味を持つなんて、かなり珍しいからさ… 皆びっくりしてるんだよね。あとっ! それだけじゃないよ?」
(よく喋るな… )
「君の姿が無いから、使用人達は血眼になって、君の事を一晩中探してたんだからね。寝てない子も多いんじゃ無いかなぁ」
「え… そ、そんなに?」
(ヤバい… これはもう… )
「うん! だから… 」
「わ、私… 殺されちゃうんですか!?」
「え?」
「あぁぁあ! やっぱり、やめとけばよかったんだ! 晩餐会に乱入して、あろう事か中断にまで陥れてしまうなんて… とんでもない事を… しでかし… 」
「あ… いや、ええと… 」
(陥れたのか?)
ナナはそのボサボサになった頭を抱えながら、その場にしゃがみこんだ。
その落胆する姿を見て、演奏者はナナの目の前にしゃがみこみ、同じ視線になった。
そして、ナナの前髪をその長い指で滑らせた。
「その髪… 」
「え? あ、はい… これはその… 」
「誰にやられたの?」
「… それは… 言ったら、また告げ口したとかで… いびられるから」
「そう… ねぇ僕は庭師なんだ。ヴァイオリンの演奏は、趣味の一環で時々ああゆう場でやらせてもらってる」
「そう… なんですか」
視界が開けてしまった今、その顔の近さに両手で覆う事でしか自身を隠せずにいたナナ。
「僕はね、庭師だよ?」
「え? あ、はい、それはさっき… 」
「ふふ、ハサミの使い方なら得意なんだ」
「ん?」
「ちょっと来て?」
そう言われ、庭の奥にある温室に案内されるナナ。
その中にある、美しい造りの石段に座らせられる。
目を瞑らされると、あっという間にそれは終わった。
「はいっ出来上がり!」
「え… 視界が… め、目がぁぁ!」
先程よりも開けたその視界に、ナナはもがき出した。
庭師の男は、髪の毛を綺麗に整えてくれたのだ。
「可愛いよ? ほらっ!」
そう言いながら、手鏡をナナの目の前に差し出してきた。
ご丁寧に、その顔面がはっきりと見えるようにだ。
「ぎ、ぎぃやぁぁあ!」
「だ、大丈夫だよ? 本当可愛いから、ねっ?」
「ち、違うんです。自分の顔なんて、ここ何年も見ていなかったので… それに可愛くなんかないですっ! 決して!!」
「そう… かな… 」
そう叫ぶナナは、遂に後ろを向いてしまった。
その後ろ姿に、思っていないような言葉がかけられた。
「ねぇ君。転職する気はない?」
「え? えと… 転職ですか?」
「うん!」
「ご命令であれば… 」
「じゃあ決まり! 君は今から、僕の助手ね!」
「え? い、今からですか?」
「うん!」
(そんな勝手に許可もなく決められるものなのかしら? この人って一体… )
そう思いながら、ナナはちょっぴり怪しい者を見るような眼差しを放った。
「僕はセダリア。セダで良いよ! 君の名は?」
「… ナナです」
「そうっ! ナナ! 宜しくね!」
そう言いながら、ナナの両手を力強く握った。
「よろ… しくお願いします… ?」
(この人に従って、本当に大丈夫であろうか? でも… 悪い人には見えないし… )
ナナが不安な気持ちを拭えないでいると、更にその口が開いた。
「あとね、1つだけやらなきゃいけない事があるんだ」
「なんでしょう?」
「さっき、君の事を探してる方がいるって言ったでしょ? 見つけてしまった以上、その方のもとへ、報告しに行かなきゃならないんだ」
「え? あ、はい… 」
(そうなるよなぁ… やっぱり殺さ… ん? でも、今からセダさんの助手になるって事は、それはないって事かしら?)
その言葉に少しだけ、震える手を見て言うセダリア。
「大丈夫! 君を傷つけたりはしないから… 多分… 」
「た、多分?」
ニコニコとしながら、言うその表情にナナは再び怪訝な瞳を向けた。
最後まで読んで頂き、ありがとうございます。
今後、作者が聞きながら執筆した楽曲をその都度、参考までに載せておきます。もちろんお好きな曲を聴きながら、楽しんで読んで頂けるといいと思います。
あまり、ボーカロイド音楽を聴いた事がないので、何かオススメなのがあれば、メッセージ等下さると嬉しいです。(ピアノの旋律がある物だと尚、嬉しいです)
文章に乱れや疑問がある場合もメッセージ等頂けると嬉しいです。
また、心ばかりの評価なども頂ければ大いに喜びますので、宜しくお願いします。