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episode39〜約束〜


たくさんの作品から見ていただき、ありがとうございます。

ボーカロイド系の音楽を取り入れた作品になりますが、あまり詳しくないのが現状です。

暖かい心で呼んで頂けると嬉しいです。


こうして、無事に国対抗の武術大会が幕を閉じた。


その結果は、リリックの大変満足のいくものとなった。


他国が次々へと帰国する中、ナナは普段の庭師見習いとしての日常を取り戻していた。


その間にも、全ての国から ’ウサギ’ こと、ナナへの招待の話が持ち上がっていた。

言わずもがな、パルティシオン国としては、そのほとんどの返事がノーであった。


そう、ただ一国のサズリナ国を除いては。


サズリナ国。

ここから南東に位置するその国は、パルティシオン国から馬車を使って約1週間程で到着すると言う。


そして何よりその国は、現王妃の祖国でもある。

彼はこれを知っていたからこその、確信ある言葉だったのだ。


そう、あの時交わしたナナへの約束。


リリックがイエスと言うのであれば、ナナにピアノ奏者として来てもらう約束だ。


それを言葉にしたのは、サズリナ国の殿下であるレクア自身であった。


しかし、ナナは未だその事実を知らない。


その約束を耳にした時のリリックは、苦い顔を露わにしていた。


隠そうとも思わなかった。


彼らは昔ながらの縁である。

そして、リリックはその本心を剥き出しにしながらも、渋々承諾したのだ。



他国がパルティシオン国を出発したその夜。


優勝したにも関わらず、その表情には浮かない不満さが溢れ出ていた。

明らかに機嫌が悪い。


そして、ナナは何故その場に呼ばれていたのかがわからないでいた。

居た堪れない気持ちが、身体全体に込み上げる。


その場にはセダリアと、そして正妃候補のモルバード卿令嬢であるカレンの姿もあった。


ナナの方を優越感を隠すこともなく、余裕の笑みを出していた。


(さすが、次期正妃… 肝が違うわね… はぁ… それにしても本当何なの? 一体何を言われるのかしら? この部屋にはピアノが無いし… あ、庭師? 庭師として何か言われるのかしら?)


そう思いながら、その耐えられない空気を紛らわそうと奮闘していた。


その空気を割るようにしたのは、庭師長であるセダリアだった。


「えぇと… リリック殿下? これで全員… ですか?」


「ん? あぁそうだ」


セダリアは、王宮庭師長でもあり、リリックの従兄弟にあたる。


つまり彼も王族だ。

その慣れしんだ話し方に変えるセダリア。


「そう。… で、話があって僕らをここに呼んだんでしょ?」


「… セダ? 今回の大会で、お前が優勝した場合、ナナから褒美を貰う約束をしたらしいな?」


「あぁ… そうだよ。まぁ結果はうまくいかないものだね」


「何を貰うつもりだった?」


「そうだなぁ… ふふ、それは秘密だよ」


「チッ」


(うわっ! 舌打ちした! 舌打ちしましたよ!? セダさんっ!!)


そう思いながら、最初から重い空気に、更に重力が加わるのを息を殺しながら堪えるナナ。


しかし、そんな空気をもろともしないのは彼の性格なのか、はたまた慣れなのか。


「そうだ! 僕は1番にはなれなかったけど、ナナは演奏頑張ったもんね! だからご褒美あげないとだよね」


そう言いながら、隣に居たナナの方を向いたセダリア。


そのまま、その柔らかな頬にキスをした。

突然の事で、褒美を受けた本人も訳がわからなかった。


これが褒美として成り立つのか?

人によっては、あらゆるものへと変換し、そう捉える者もいるであろう。

しかし、ナナはただただ身体が硬直するばかりだった。


それを見せつけられたリリックは、たまったもんじゃなかった。


不機嫌だった表情が、更に不機嫌さを増す。

そのはずなのに、何故か冷たい笑みが彼の表情に浮かんでいる。


そして放つ。


「そうだな。では俺からも褒美をやろう」


「え… 」


そう言いながら、ゆっくりとナナの方にその足を向ける。


一歩、そして一歩と。


まるでその冷え切った重みで、床が割れるかのようにも感じた。


(いや、だから私の褒美は命っ… ん? 褒美なら命乞いとかじゃなくて、普通に貰えばい… )


「… いっ!?」


その空気にはそぐわない、温かなものが伝わってきた。


リリックは褒美として、その唇をナナのものへと重ねたのだ。


それを見せつけるかのように、深い口付けを絡ませるリリック。


「… んっ… んん… 」


(い、息が… )


言わずもがな、周りの空気は固まる。


これに対しても、本人にとっては褒美とは到底受け取れるようなものではなかった。


やっと、その唇が離れた時には、さすがのナナも何をされているのかの理解ができていた。


「んな… 何なんですかっ!? 皆の前でっ… し、しかも婚約者の前で、キ、キスするなんて… 」


「何を言っている? ’婚約者に’ の間違いだ」


「は、はい?」


ナナは、困惑の表情をおもむろに出す。


「リリック殿下? お言葉ですが、仰っている意味が分かりかねます」


こちらも不機嫌に言葉を投げるセダリア。

珍しくその顔には、笑みがない。


「ナナ、今からお前はこの俺の婚約者だ」


「え… ? えぇぇえ!?」






最後まで読んで頂き、ありがとうございます。


(基本歌は歌っていません)


もちろんお好きな曲を聴きながら、楽しんで読んで頂けるといいと思います。

あまり、ボーカロイド音楽を聴いた事がないので、何かオススメなのがあれば、メッセージ等下さると嬉しいです。(ピアノの旋律がある物だと尚、嬉しいです)

文章に乱れや疑問がある場合もメッセージ等頂けると嬉しいです。

また、心ばかりの評価なども頂ければ大いに喜びますので、宜しくお願いします。

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