episode38〜誘い〜
たくさんの作品から見ていただき、ありがとうございます。
ボーカロイド系の音楽を取り入れた作品になりますが、あまり詳しくないのが現状です。
暖かい心で呼んで頂けると嬉しいです。
そして、翌日の朝。
空と辺りがまだ暗い中、庭の方からチカチカと何かが光る気配がした。
怪しい光は庭園からの物だった。
ここの庭園は少し入り組んでおり、軽い迷路のような部分があった。
その位置からは、ナナの部屋からしか見えない事をナナは知っていた。
(誰だ?)
ナナは自身に発しているのだと勘付いた。
(セダさんかしら?)
そう思いながら、ブランケットを羽織ると、庭へと降りた。
「あれ? 誰もいない?」
しかし、低い声が耳にすぐさま届いた。
「ナナ」
その声に驚き、勢いよく振り返るとそこには以前ここで出会った青年がいた。
そして、ナナは再度確認した。
(やっぱり… この人昨日の… )
青年は昨夜のナナの演奏を聴き、名を聞いたその人だった。
「ご、ご機嫌よう… えぇと、あなたは昨日の… 」
「あぁ。レクアだ。昨日はすまなかった。恐怖を与えるつもりはなかったんだ。まさか、あんなに怯えるとは… 気を失ったみたいだったが、大丈夫だったか?」
「あ、はいっ! 何とか… 」
「そうか… 」
「えと、レクアさんが私をここに?」
「早朝からすまなかったな。君の事をあの日からずっと探していたんだ。開会の儀での演奏からずっと」
(… あの時からずっと? ん? 3週間も? そんなに時間があれば、すぐにでも見つかったはずだけど… )
「ナナと話がしたかったのだが… 何故かこの国の者がそうさせてくれない。昨日やっと、見つけたと思ったのに… あれだからな… 」
「そう… だったんですね。あの、お話とは何でしょうか?」
「ナナ。君に俺の国へ来て欲しい。サズリナ国へ」
「サズリナ国? レクアさんの祖国ですか… お近くなんですか?」
「え? あ、まぁ遠くもないが近くもない。馬を走らせれば4、5日程で着く。馬車で行くともなると、7日と言ったところか… 」
「え!? そんなに!? それって遠くないですか!?」
「あ、いや、まぁ途中休みながら行くが… 考えてくれないか? 俺の国で演奏して欲しいんだ」
「え、えっと… とてもありがたい話ですし、私の演奏をそう言って下さるのは、とても嬉しいです。でも、お断りします。私は… この国から出れません… 私の命は、リリック様に握られているんです。それはそれはもう恐ろしく残虐……… 」
「ん? … まぁ確かにそうかもしれ… 」
「かと思ってました。つい最近までは」
「へ? 最近までは?」
「はい。でも意外と優しくて不器用だから、あぁいう形になってしまうのかなって… うーん… まぁ私にもわかりません。なんせ、この国に来てからまだ半年程しか経ってないですから… 」
「えっ!? 半年!? ではそれまで一体何処に?」
「… ふふ」
「ん?」
「ふふふふふふふ… なので、リリック様が行けと仰れば行きますし、ダメだと仰れば行けません」
「そう… ナナは… ナナは彼の何なの?」
「え? リリック様の? うーん… 下僕?」
「下僕… ?」
(そういう風には見えなかったが… )
「私、行く所もなくて、頼る人もいないので、ここに居るしかないんです。でもリリック様は私の事を意外と… 本当に意外と、面倒見て下さりますし… 一応… あ、いや、たくさん感謝してるんです」
「あのリリックが?」
「… っ!? ちょ! レクアさん! しぃーっ! ダメですよ! 殿下の事を、そんな風に呼び捨てにしちゃっ!」
ナナは、焦るようにその口を抑えた。
「聞こえたら、どうするんですか! いや、本人に聞こえてなくとも、その刺客が至る所にい… っ!?」
その時、抑えるナナの手元が、小刻みに震えるのが伝わってきた。
ナナの手首をゆっくりと口元から外し、笑みを溢す。
「ふっ… 大丈夫だ。俺達はそういう仲だから」
(えっ!? どういう仲!?)
ナナはそう思いながら、艶かしい想像を働かせていた。
「じゃあ、リリックがイエスっていえば問題ないんだな?」
「え? いや、まぁそれはそう… ですね」
「わかった。じゃあ聞いてみるよ。必ず首を縦に振らせてみせるから」
レクアはそう言い残すと、ナナの手の甲に軽く口付けをした。
(ギィィィイ!? 何!?)
何に対して、背筋が凍ったのかはわからなかった。
その慣れない行為を、肌で感じてしまったせいなのか。
これから起こる事を予想してしまったせいなのか。
身体だけはいち早くその状態に、防衛反応を示したに過ぎなかった。
最後まで読んで頂き、ありがとうございます。
(基本歌は歌っていません)
今後、作者が聞きながら執筆した楽曲をその都度、参考までに載せておきます。もちろんお好きな曲を聴きながら、楽しんで読んで頂けるといいと思います。
あまり、ボーカロイド音楽を聴いた事がないので、何かオススメなのがあれば、メッセージ等下さると嬉しいです。(ピアノの旋律がある物だと尚、嬉しいです)
文章に乱れや疑問がある場合もメッセージ等頂けると嬉しいです。
また、心ばかりの評価なども頂ければ大いに喜びますので、宜しくお願いします。
 




