episode36〜変装〜
たくさんの作品から見ていただき、ありがとうございます。
ボーカロイド系の音楽を取り入れた作品になりますが、あまり詳しくないのが現状です。
暖かい心で呼んで頂けると嬉しいです。
そして、その翌日。
大会後は各国の交流も含めて、晩餐会が開催されるのだ。
ナナは少しだけ嬉しかった。
緊張はあれど、やっと触れられると。
弾く事が出来るのだと知らされた時、表情筋が緩むのを抑えることは難しかった。
当初、その予定はなかった。
しかし、各国の王族による強い要望で、それは現実となってしまったのだ。
しかも仮面は外すという条件付きである。
断れば、国際問題にもなりかねない。
国同士とは、そういった些細なことでも、危険を伴うこともあるのだ。
仕方なくそれを受け入れたリリックだったが、彼にも一応の対応策は考えていた。
突如決まった晩餐会での演奏。
練習も許されなかった。
ナナにとっては、今回に限ってはそれでも良かった。
ただ鍵盤を叩きたい、その一心であったのだから。
うずうずして堪らなかった。
しかし、国同士の条件以外に、リリックからの条件も飲み込まなければならないのが、ナナという身分である。
煌びやかに光る会場。
流れる音楽は、この国自慢の音色であった。
各国の屈強な男達と共に、この国屈指の踊り子達。
そして、何処ぞやの令嬢やらが、自身の婚期を逃すまいと存在をアピールしていた。
ナナがいつ登場したのかは、わからなかった。
いや、気が付かなかったのだ。
それ程、周りに溶け込むように装備をさせられていたのだから。
(それにしても、本当歩きずらいな… )
そう思いながらも、その足は真っ直ぐに目的の所へと向かっていた。
しかし、何人かはその奇妙な歩き方に見覚えがあった。
面は被ってはいなかったものの、その時に履いていた靴は健在であったのだから。
身長を高く見せ、その服装は男性が着るような正装をしている。
頭にはお洒落な帽子なんてのが被させられていた。
そう、これは言わば男装である。
その髪を隠すように帽子を深く被り、身長を高く装う。
(何でこんな格好… 一体何の為に… )
ナナも理解出来ずに、命じられたままの姿でその場にいた。
会場の端にある、サンルームのようなガラス張りの部屋。
そこに反射するような作りの中心にあったのが、真っ白いピアノだった。
(素敵… あれ? でもこのピアノって確か… )
ナナは、その真っ白なピアノに見覚えがあった。
それは、王妃の部屋にて一度弾いたことがあるものだった。
そのピアノに惹きつけられるように、ナナは腰を下ろした。
そして、流れている会場の音が止まる。
誰かの合図が、ナナへの開始のものだとすぐにわかった。
ニヤリと笑ったかと思えば、その手はすぐ様、心地良い音へとなる。
一瞬で、会場の空気が変わる。
その空間がナナの音色で、染まっていくのがわかる。
もちろん、その視線はピアノの方へと集中する。
それを特に望んでいた者達が、音のする方へとゆっくりと近づく。
数名だ。
その者達が最短距離で進めるようにと、道が開き始めた。
そんなことも露知らずに、ナナは喜んでいるその指を動かし続ける。
(あぁ… やっぱり楽しいっ!)
あの時とは違う。
その顔には、奇怪な面はないのだから。
ナナはその笑みを、既に隠そうとも思っていなかった。
解放されたその気持ちも音も、会場中に響き渡らせる。
望まれた1曲は弾き終えた。
リリックは、胸を撫で下ろそうとした。
しかし次の瞬間、安堵の表情をし損なった。
彼女の身体は、そのままピアノから離れるのかと思っていた。
そう願っていた。
しかし、ナナのその指は再度鍵盤へと置かれた。
そう… ナナはここで欲を出してしまったのだ。
調子に乗ってもう1曲弾き始めてしまった。
(あんのっバカッ)
リリックは、その椅子から思わず立ち上がってしまった。
そんな気も知れずに、ナナは自身の欲望に真っ直ぐに鍵盤を走らせた。
(あぁ… 最高… )
最後まで読んで頂き、ありがとうございます。
今回、ナナが晩餐会で弾いた曲です。
一曲目は、MIMIさんの【心を刺す言葉だけ(feat.初音ミク&可不)】です。
そして、ナナが欲望のままもう一曲弾いた曲は、
ロクデナシさんの【ただ声一つ】です。
(基本歌は歌っていません)
今後、作者が聞きながら執筆した楽曲をその都度、参考までに載せておきます。もちろんお好きな曲を聴きながら、楽しんで読んで頂けるといいと思います。
あまり、ボーカロイド音楽を聴いた事がないので、何かオススメなのがあれば、メッセージ等下さると嬉しいです。(ピアノの旋律がある物だと尚、嬉しいです)
文章に乱れや疑問がある場合もメッセージ等頂けると嬉しいです。
また、心ばかりの評価なども頂ければ大いに喜びますので、宜しくお願いします。




