episode35〜禁断症状〜
たくさんの作品から見ていただき、ありがとうございます。
ボーカロイド系の音楽を取り入れた作品になりますが、あまり詳しくないのが現状です。
暖かい心で呼んで頂けると嬉しいです。
翌日から、他国の者が開会での演奏者を探している事を耳にしたリリック。
それにより、大会へと集中できない者が続出した。
「やはりこうなるか… 規制線を張っておいて正解だったな」
リリックは、国中にある達しを出していた。
’ピアノに精通している者に関しては、他国の者には他言無用。もし、この件に関して危機的状況に陥る場合、こう答えるように。
その者の名は、【ウサギ】であると’
【ウサギ】
それは、ナナが昨日の演奏で付けさせられていた面の事であった。
(ウサギか… そういう事だったのかリリィ。それにしてもあれは… ウサギ? だったのか?)
セダリアはそう思いながらも、その演奏の余韻に浸っていた。
(まぁそれも、どのくらい持続するかはわからんがな… この大会が終わるまではせめて… )
そうして、大会は着々と決着が付き、遂には最終決戦当日となった。
ナナはその間、息を殺すかのように、それはそれは静かに過ごした。
その期間、約3週間程であった。
庭師としての仕事もしなくて良い。
命じられていた夜間の演奏も弾きに来なくて良い。
ナナにとって何よりも苦痛だったのが、この3週間は、ピアノに触れていない事だった。
いや、触れさせてもらえなかったのだ。
リリックがそう命じたからである。
(明後日? いや、明日? あと少し… あと少し待てばピアノが弾ける)
ナナはその震える手を必死に抑えるように、我慢した。
禁断症状に陥っていたのだ。
(何か… 何か気を紛らわせないと… )
そう思いながら、ふらふらとした足取りで庭の方へと足を運んでいた。
そこに1人の青年がいた。
彼は、物音で後ろを振り返る。
「ん? 君は?」
(まずい… 先客がいたか)
「あ… えぇと、ここの庭師見習いです」
「そうか」
(綺麗な顔だな… 雰囲気が少しリリック殿下に似てるか?)
青年の手には、一輪の真っ白な花が触れられていた。
それをじっと見つめていたかと思えば、ゆっくりと口づけをした。
(うっわぁ… 凄いものを見た気がした)
ナナはその様子に、少しだけ心臓が跳ねた。
「美しいな。これも君が?」
「え? あ、いえ… 私はまだ見習いな者ですので… それは庭師長が、特に手をかけて育てていました。綺麗ですよね」
そう言いながら少し微笑むと、ナナはある事を思い出した。
『開催の間は、息を殺せ。特にだ。他国の者とは接触するなよ?』
(はっ! まずい! ここ方は他国の者なんじゃ… )
そう思いながら、ナナは急用を思い出したと言って、その場からすぐに身を引いた。
ナナの後ろ姿を怪訝な顔をしながら見る青年。
先程まで、ナナがいた場所に何かが落ちているのに気が付いた青年は、それを拾って再度、その方を見た。
「ウサギ… 」
大会の成果は、例年通りリリックが勝利を果たした。
セダリアはというと、3位という結果に陥った。
これでも大健闘ではあった。
しかし、彼が望んでいたものは、ナナとの約束であったのだ。
願い叶わず残念な表情を浮かべながら、リリックに言葉をかける。
「さすがリリィだね。全く腕が落ちていない。いや、それよりも今回は、かなり力が入っていたんじゃないか?」
「別に… いつも通りだ。これが実力だからな」
「あぁあ… 本当叶わないなぁ」
「ふっ… 残念だったな」
「… 3位って事が? それとも… 」
「さぁ?」
(こいつ、わかって言ってるな)
最後まで読んで頂き、ありがとうございます。
(基本歌は歌っていません)
また、作者が聞きながら執筆した楽曲をその都度、参考までに載せておきます。もちろんお好きな曲を聴きながら、楽しんで読んで頂けるといいと思います。
あまり、ボーカロイド音楽を聴いた事がないので、何かオススメなのがあれば、メッセージ等下さると嬉しいです。(ピアノの旋律がある物だと尚、嬉しいです)
文章に乱れや疑問がある場合もメッセージ等頂けると嬉しいです。
また、心ばかりの評価なども頂ければ大いに喜びますので、宜しくお願いします。




