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episode34〜うさぎ〜


たくさんの作品から見ていただき、ありがとうございます。

ボーカロイド系の音楽を取り入れた作品になりますが、あまり詳しくないのが現状です。

暖かい心で呼んで頂けると嬉しいです。



こうして、翌日から続々と他国の者達が、パルティシオン国へと到着した。


ナナはそんな事は露知らず、黙々と練習の日々を繰り返した。


更には、誰かしらのある計らいで、前座の仲間が急遽増えていたのだ。

大きな太鼓を補助的に、演者の仲間として取り入れてくれると言う。


その者達の加入によって、更に練習に明け暮れていた。



更に忙しい日々を過ごしていき、開催日の数日前となった。


再度その場へと現れたリリックは、いつもと変わらない表情を浮かべていた。


ナナは、何故か死の宣告を覚悟した。


しかし、ここで予想外の事が起こった。


その手に持つ奇怪な物は、何の為に使うのか。

ナナは最初、理解が出来ないでいた。

目の前に差し出されると、ナナはそれを手に取って言った。


「こ、これは?」


それは面のような物だった。


「本番ではこれを付けろ。登場前からだぞ? いいか? 必ずだ」


そう言い残すと、足早に部屋から去って行った。


「え? こ、これを付けながら弾くの!? 何故!?」


ナナは混乱した。


精神の錯乱状態、一歩手前だ。


これを装着することによって、視界が悪くなる事も懸念されるのだから。


しかし、それよりも何故これを付けなければならないという理由が分からなかった。


(はっ! もしかして… お前は失敗する可能性大だから、その恥面を晒すなってことなんじゃ… )


ナナは、再び身震いが止まらなかった。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


そして今、この大舞台でナナはその面を被っていたのだ。


くすくすと笑い声が湧き上がる。


もちろんそれは、ナナの緊張による行動だけが原因ではなかった。


ナナの顔を覆っている ’面の表情’ であった。

そう、面が持っている ’独特の表情’ だ。


そうなるとは思っていた。


本人だって、そんな姿の者が現れたら、同じような反応をしてしまうであろう。


しかしそれを渡した本人は、大真面目であった。


その奇怪なうさぎの面は、歪な細長い耳を左右非対称に揺らしていた。


奇妙な面を被った者が、身体を固まらせてぎこちなく歩いている姿が、滑稽極まりなかったのだ。


更には、普段は履き慣れていない底の高い靴が相まって、非常に歩きにくい。


これも理由を聞かされずに、履かされていたのだ。


リリック殿下の意図によるものなのは、言うまでもない。


その為、バランスも上手く取れなく、歩き方が変だ。


(生き地獄… )


ナナは面のおかげと言って良いのか、周りの様子がよく見えなかった。


しかし、嫌でもわかる事もある。


その馬鹿にするような囁く声と笑い声、その場の空気に耐えられずにはいられなかった。


そのどよめきの1つ1つの言葉が、ナナの耳にはっきりと入っていなかったのだけは、幸いであった。


(やらないと首が飛ぶ… 失敗しても首が飛ぶ… あぁ)


しかし、高見の見物であるリリックは違った。


(ここからが開幕だ… さぁ華麗に咲かせてみろ)


そう思いながらも、何かを懸念する表情は拭えない。


滑稽なうさぎが、大舞台の椅子へと腰を下ろした。


その轟きは、会場中の声を奪うのに十分であった。




大きな打楽器と共に、ピアノがその音を響かせる。



その演奏に、声も出ない。

目も離せない。

耳を他へと傾ける余地すらない。

脳が、入れ替わったのかさえ思えた。



会場中の神経を全て奪うその演奏は、誰をもを圧倒させた。


(なん… なんだ? この音は… 聞いた事もない)


(音だけじゃない… なんて速さなんだ)


(あの者は一体)


(信じられない… このような音を奏でられる者が… ?)


この世界にはない、その音を全身全霊を込めて、命をかけて奏でるナナ。


最初、リリックは薦めなかった。

見せたくなかったから。

この状況を見越しての事だ。


その為の面でもあった。


しかし、国王の勅命であれば、仕方がなかった。


(こうなる事はわかっていた… だから嫌だったんだ… )


そう思いながらも、ナナの演奏を一音も漏らさずに聴き入る。


演奏が終わり、辺りの状況が静まり返っているのに気が付いたナナ。


一瞬、誰もいなくなってしまったのかさえ思った。


しかし、その一瞬の空気こそがその場を理解させたのか、一斉に歓声が湧き上がった。


そして、会場中が1つになるように、士気が強まった。


ある者は言う。

その髪をくるくると巻き遊びながら。


「ふふ… 確かにな… その意味がわかった」


ある者も言葉を漏らす。

その手にコインを弾き遊びしながら。


「なるほど… これが秘密兵器か」


それぞれの王族が思う事は同じだった。


(秘密兵器を最初に持ってきたのは、そういう事だったのか)


(これでは、集中できぬな)


リリックの思惑通りにいったように見えた。


しかしそれは、苦肉の策でもあったのだ。


本来であれば、ナナの存在を明かしたくなかったのだから。


国王陛下の命令ならば、さすがのリリックもそれを弾き出す事ができなかった。





最後まで読んで頂き、ありがとうございます。


今回ナナが前座で弾いた曲は

黒うさPさんの【千本桜(feat.初音ミク)】です。

最高に士気が上がる曲だと思いながら、イメージして書きました。

合わせて聴いてみてくださると嬉しいです。



(基本歌は歌っていません)

今後、作者が聞きながら執筆した楽曲をその都度、参考までに載せておきます。もちろんお好きな曲を聴きながら、楽しんで読んで頂けるといいと思います。

あまり、ボーカロイド音楽を聴いた事がないので、何かオススメなのがあれば、メッセージ等下さると嬉しいです。(ピアノの旋律がある物だと尚、嬉しいです)

文章に乱れや疑問がある場合もメッセージ等頂けると嬉しいです。

また、心ばかりの評価なども頂ければ大いに喜びますので、宜しくお願いします。

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