episode33〜恐怖再び〜
たくさんの作品から見ていただき、ありがとうございます。
ボーカロイド系の音楽を取り入れた作品になりますが、あまり詳しくないのが現状です。
暖かい心で呼んで頂けると嬉しいです。
ナナの足は、そのまま温室へと向かっていた。
「ナナ! おはよう。朝からリリィに呼び出されたんだって? 話って何だっ… 」
青ざめた表情から、ナナの様子を察したセダリア。
「もしかして、武術大会の事?」
コクンと頷くナナ。
「やっぱり… 」
「え? や、やっぱりってなんですか!? もしかしてセダさんはこの事知ってたんですか!?」
「え? あ、いや、そうかなぁくらいにしか… 」
「なんっで! 止めてくれなかったんですか!? 私がダメでも、セダさんならっ… 」
「それは… うーん、僕でも無理かなぁ」
そう言いながら、セダリアは申し訳なさそうに頬を掻いた。
「ほら… 立場がね… 」
「そう… ですよね… 当たってしまいすいません… 」
(それに、本当は僕も聴きたかったし… ナナの演奏)
「…… それにしても、ソロで演奏するなんて… しかも多数の国の御偉いさんの前で… 私… 死ぬの?」
「え? あ、いや… うまくいけば、きっと大丈夫だよ… 」
「うまく… いけば… ん? え!? うまくいけばって!? 一体どういうことですか!?」
ナナの形相は再び立ち上がった。
「え、えと… そうだね… うーん、これは言わない方がいいと思ってたんだけど… 」
「言って下さい! じゃないと逃亡します!」
「えぇ… はぁ… 今までの演者なんだけどね、断った者は、翌日から姿が忽然といなくなったんだ」
「え?」
「… ナナのその考えみたいに、逃亡した者もいたよ?」
「そ、その人は逃げ切れたんですか?」
首を横に振るセダリア。
青ざめるナナ。
「逃亡して数日で変死体で見つかった… 」
「死… じゃあ逃げられない… やるしか… やるしか… 」
(まぁその変死体が、実際にリリィが関わってるとは… )
「うん… そう… なんだけどね… 」
「なっ、なんです!? まだ他にも!?」
「それが… 毎回種は違うんだけど、必ずその中で足を引っ張ってしまう… というか、失敗してしまう者がいるんだよね。まぁ大舞台だから、それは仕方がないんだけど… 」
「そうですよね、緊張なんて絶対でしょうし… え? まさかですけど… 」
セダリアはその言葉に、気まずそうに頷く。
「その者は翌日に必ず姿をくらます… 」
(それは ’くらます’ ではなくて… もはや)
「そ、それじゃあ前座を務めた者の中で、必ず誰かしらが犠牲… に?」
「う… ん、あ、でも、僕の記憶上はの話だから… ね? ナナなら大丈夫っ… ナナ?」
既にナナは魂を天に返す寸前であった。
「僕がねぇ… 一緒に演奏出来れば良かったんだけど… 」
「えっ!? そんなことできるんすか!? 是非!」
「それがぁ今回ばかりは、難しそうなんだよね… 実は僕も、その大会に出場するからさ… 出たくないって言いたかったんだけど… 王族だし… 断った時の方が怖い… よね?」
(確かに… )
「なんてこったい… 」
「ナナ?」
「はぁ… わかりました。もう腹を括ります… 怖いけど… それにしても、セダさんは出場者なんですね! 各国の精鋭された者達って聞きましたけど?」
「あ、うん。まぁ一応、優勝経験はあるくらいは、精鋭されてはいるのかな? もう何年も前の事だけど」
「え!? やだ! すごいじゃないですか!! はぁ… これが格の違い… 」
「え? … あっ! ねぇねぇ! 終わったら2人で打ち上げしない?」
「打ち上げですか? 最後の晩餐的な?」
(完全に失敗する程で話しているな… )
「そうでもそうじゃなくてもだよ! それに、僕はナナが失敗するなんて思ってないから」
「… お気持ちだけ受け取っておきます」
「それよりさ、もし僕が優勝したら、何かご褒美ちょうだいよ? もちろんナナにも… 」
「いいですよ? でも高価な物とかは無理なので、私が与えられる物の範囲であればですけど」
(王族の価値観は計り知れないからな… )
「えっ! いいの!? やっ… 」
「その代わり… 先に言っておきます。私へのご褒美は ’確実な命’ … ただそれだけです」
「そんなのつまらない… けど、じゃあ僕から考えとくね! あぁ、楽しみだなぁ」
(憂鬱しかない)
一気に高揚するセダリアとは反対に、ナナの空気は淀んでいた。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
こうして、大会まであと2週間を切っていた頃。
最近は、いつもの庭師助手としての仕事は半日になっていた。
これはナナを思っての、セダリアの計らいであった。
かくゆうセダリア自身も、大会の出場者の1人であるので、その為の鍛錬を午後に当てていたのだ。
いつも以上に練習に熱心になっているナナ。
1日の終わりには指の震えが溢れ出ていた。
ある日の午後の事だった。
既にナナの部屋と化しているその部屋で、ナナは前座の為の練習に集中していた。
そう、集中し過ぎてその存在に気が付かなかったのだ。
そのソファーには、高貴なお方がいつの間にか腰を下ろしていた。
こちらには目を向けずに、耳だけを傾けている。
何かを考えるように、一音も逃すまいと聞き入る。
その演奏が終わった時には、瞳をこちらに向けていた。
そして、不安な声を隠しきれずに尋ねた。
「その曲をやるのか?」
リリックの存在に驚き過ぎたナナは、椅子から落ちそうになった。
「… っ!? リ、リリック様!? な、え? いつの間に!」
(心臓突き破るかと思った)
「あ、えと、はい。士気を上げるのが目的とお聞きしたので… 私が知っている曲ではこれが合うかなと… 」
「そうか… 」
(えっ!? え! 何!? ダメだった!? 曲決める前に聞いた方が良かった!?)
「… っはぁぁぁあ」
リリックの大きなため息に、身体の硬直が止まらないナナ。
「わかった」
(え!? な、何が!? 何がわかったの!? 何!? 選択ミス!? もう死亡フラグが立ったって事!?)
ナナの不安だけを増大させるだけさせて、その場を後にした。
’初心忘るべからず’
この言葉が合っているのかはわからないが、今のナナにはそれが1番しっくり来たのである。
(最近少し丸くなったって王宮内では、言われているけど、所詮は冷徹無比なリリック殿下… コワイ)
最後まで読んで頂き、ありがとうございます。
(基本歌は歌っていません)
今後、作者が聞きながら執筆した楽曲をその都度、参考までに載せておきます。もちろんお好きな曲を聴きながら、楽しんで読んで頂けるといいと思います。
あまり、ボーカロイド音楽を聴いた事がないので、何かオススメなのがあれば、メッセージ等下さると嬉しいです。(ピアノの旋律がある物だと尚、嬉しいです)
文章に乱れや疑問がある場合もメッセージ等頂けると嬉しいです。
また、心ばかりの評価なども頂ければ大いに喜びますので、宜しくお願いします。




